君が過去を忘れても、過去は君を忘れない!絶対にな!
痛快な復讐ムービーでした、サイコー!
個人的評価:★★★★★★★★★☆ 90点
TheGift
2016年10月28日公開/108分/アメリカ/映倫:G
原題:THE GIFT
監督・脚本:ジョエル・エドガートン
出演:ジェイソン・ベイトマン、レベッカ・ホール、ジョエル・エドガートン

予告を見た時点では、正直もっと安っぽいホラーなのかと思ってたんですが、意外とよく出来た映画でビックリしました。すごく好きですよ。とくに脚本が素晴らしかったと思います。奪うよりも与えること、そして、殺すことよりも生かすことのほうがよっぽど恐ろしい、そんな映画です。視覚的に過激な描写なんかは一切出てきませんし出来事そのもののショッキング度合いはそこまで高くないかもしれません。しかし最終的には「こんな残酷なことがあるか!」という結末で、もう最低で最高!…ということで感想書いていきます。

イジメをするような奴は全員こんな目にあってほしいなー。

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ストーリーはシンプルです。新婚夫婦が新しい生活をスタートさせるため夫の故郷(シカゴ)へ帰ってきます。そこで元同級生だと名乗る男・ゴードと偶然にも再開。その日以来、彼からの一方的な贈り物(ギフト)が届くようになっていき幸せだと思っていた夫婦が徐々に破綻していく…というスリラー映画。不気味さを増していく贈り物…。最後に贈られるものはいったい何なのか…。そして、その目的は?

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ハネケの『隠された記憶』みたいな話でしたよ。それから『オールド・ボーイ』なんかも連想しました。こういうの大好きですねー。お前が忘れてても、やられたほうは一生忘れねえからな!っていう過去の因縁もの…。映倫Gだし予想範囲内でしたが、ビジュアル的な残酷さを求めてしまうと肩透かしを喰らうと思います。暴力もエロもほぼありません。それゆえに一層キモいのかも。

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ジョエル・エドガートンのオリジナル脚本&初監督作ってことにまず驚きます。本作では彼が悪役であるゴードを演じているのですが、凄かった!過去にヒドい目に合わされたんじゃないかと思えるくらいの怨念のようなものを感じました!他人を蹴落としてのし上がっていく人間達を映画で殺したかったのかな(笑)。役はハマっていたと思います。いるだけで不穏だし漂っている空気感なんかにもゾクゾクしました。とにかく薄気味悪くてブキミすぎ。劇中でも「ブキミなゴード」とディスられてました。

一見すると親切に見えるのですが、感謝や祝福を込めて届けられるはずのギフトが不気味でしかないんです。何か奪われたり暴力を受けたりするわけでもなく、一方的にプレゼントされるだけ。この行為が本当に気持ち悪い。善意であるはずのものに恐怖するってところが良かったです。「嬉しいけど、なぜ?」意味がわからないから怖ろしい。しかしゴードはただ夫のサイモンに対して”お返し”をしていただけなのです…。サイモンは自分でも気づかぬうちに、過去にゴードに対してギフトを贈っていたのです…。

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最初は、善良な夫婦の家庭をぶち壊す『ノック・ノック』みたいな理不尽なやつかと思ってたんですが、ちゃんと動機があったので面白かったです。説得力もありました。本作は過去の因縁を巡る物語です。なぜゴードがこんなことをするのか、その理由とは…?そしてサイモンとゴードの間に起こった事件とは何か?

ゴードからの贈り物行為、サイモンの職場でのいざこざ、夫に不信感を抱き出す妻、どれも丁寧に描いていたと思います。ゴードの不審な行動がエスカレートするにつれ過去の関係が炙り出されていきます。映画前半の被害者・加害者の関係が逆転し、後半にはゴードもサイモンも別の顔に見えてきます。前半と後半で登場人物のイメージがガラッと変わるのが面白いところでした。

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そして、サイモンの本性が少しずつ明らかになっていく…。

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後半になると夫に対して不信感を持った妻の行動でゴードとサイモンとの過去の因縁が明らかになっていきます。演じたレベッカ・ホールはものすごく良かったですよ。ちゃんと美しいし。なんとなくアン・ハサウェイっぽい。

ギフトと一緒に贈られたゴードの手紙に「過去はすべて水に流す」という一文があり、妻のロビンはサイモンとゴードの過去に何があったのかを調べ始めます。そしてある事件が原因でゴードが高校を退学していたことを知るのです。彼は車の中で男に性的虐待を受けており、それをサイモンと友人のグレッグが目撃。その噂は高校中に知れ渡ることとなり、ゴードは退学せざるを得なかったのです…。息子をゲイだと疑ったゴードの父親は激怒し、彼に暴力を振るってしまう(半殺し)。その結果、父は刑務所に入れられることとなりゴードの人生はめちゃくちゃになってしまったのです。

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しかし、昔の友人・グレッグに直接会って明らかになったことは、そんな事件は存在しなかったということでした…。つまり、すべてはウソだったのです。まったく何もなかった。目撃も、ゲイ行為も、何もなかった。サイモンは学校中にゴードを中傷するようなウソを言いふらしていただけ。なぜなら「サイモンはそういうやつ」だから。彼は卑劣なクソ野郎で、ゴードが気に入らずイジメの標的にしていたのです。

夫婦は何故ゴードがギフトをくれるのか、まるで理解できない。しかし、それは忘れているだけで夫が過去にゴードに対してギフトを贈っていたのです。「宗教とは関係なしに正しい心を持っていれば悪い出来事も自分への贈り物(ギフト)になるかも」「いいことの多くは悪いことから生まれる」。過去のイジメはゴードへの贈り物となっていたのです。それに対してゴードは"お返し"をしていだけなのです。要は「等価交換」で、サイモンの人生をめちゃくちゃにするためにゴードはギフトを贈り返していたのです。高校時代は、サイモンの言う事は絶対。つまり、それがたとえ嘘であったとしても、サイモンが言えば現実になってしまう。ゴードは【サイモン・セッズ】と呼んでいました(アメリカにそういう遊びがあるらしいです、王様ゲームみたいな)。

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ジェイソン・ベイトマンをキャスティングしたのは大正解だったと思います。ベイトマンの出演作で有名なのって『ジュノ』の在宅仕事のオタク野郎とか、『モンスター上司』のウダツの上がらないサラリーマンとか、ジョックスとは真逆の役柄が多かったと思うんです。なので、今回もイイ人なのだろうと思いこんで観ていると…実は学生時代は最低なイジメの首謀者で、しかもクソ生徒会長。ナイス配役だったと思いますよ。『ディス/コネクト』では息子をいじめて自殺に追い込んだいじめっ子を捜す父親を演じていたベイトマンが、今回は卑劣ないじめっ子。それも後半になって明らかになってくるので、やられた~という感じです。個人的には、ジェイソン・ベイトマン(そこそこ)好きなつもりなんですが、彼のイメージって”根がイイ人”で、雨に濡れた捨て犬とか拾ってきちゃう善人のイメージしかなかったんで、まんまと裏切られた感じです。こういう裏切りは嬉しかったりします。

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で、オチが強烈でした。正直、予想はできちゃうと思います。まあ、これ以外に考えられない…。むしろ、個人的には観ているうちにゴードのほうへ共感してしまったため「絶対こうしてくれ!頼む!」という気持ちでしたね。たぶんもっと残酷にしようと思えばできると思うんですが(妻を惨殺するとか)、リアリティのある物語として描こうとすると、このオチがギリギリだったんじゃないかなと思いました。胸糞悪さもあまりなく、ゴードの側に感情移入していたからか案外スッキリできました。観終ると、復讐を果たした達成感でいっぱいで気持ちよかったですねー。主人公は完全に自業自得ですし。へたに血まみれになったりしないところが良かったです。イヤな復讐の仕方でした。これだったら殺されたほうが楽なんじゃないのかな…とも思いました。辛い現実を与えられて生かされちゃうのが一番シンドイ気がします。どちらかというと恐怖よりも悲哀に満ちたエンディングでした…。

サイモンを絶望させるもの贈り物とは、ベビー用品と、中に入っていた3つの包み…。贈り物は毎回ちゃんと気色悪かったです。最初のワインは出会って早々に「いきなり?」という感じだし…。2番目のカラスクリーナーは夫婦が新居を初めて訪れてガラスに息を吹きかけるシーンがあるのですが、そういう一部始終をゴードはどこかから監視していたのだと思います。3番目の鯉はフツーに不法侵入だし。犯罪的な恐怖のギフト(犬誘拐など)はすべてゴードがやったものなのか、謎でした…(ダニー・マクブライドかも)。見せない部分も「どうなんだろうなー」と考えつつ、気味悪かったですね。

夫婦を他人の家に招待するシーンは、なんだかバレバレでとても可愛い。

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ゴードからの贈り物(ギフト)一覧
  1. ワイン
  2. 鯉とそのエサ
  3. ガラスクリーナー
  4. ベビー用品
  5. 家のカギ、CD、DVD
  6. 赤ちゃん(?)

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家に無断で入られてた!

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盗聴されてた!(ワルキューレの騎行!)

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妻が眠っている間にレイプしやがったなッ!

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・・・ということで、最高でした。高校時代についた1つの嘘で同級生の人生をめちゃくちゃにしてしまったクソ野郎がその報いを受けるという話です。サイモンみたいな人は、きっとリアルにも大勢いますよねー。そういう人たちに『ザ・ギフト』を観てもらって過去を少しでも悔いてほしいです。

過去に誰かをいじめた経験があるような人はそっちに感情移入してしまうのかもしれません。登場人物の誰に感情移入するかでラストをどのように感じるか違う映画です(映画なんか全部そうですが)。感想を見ると、不快!不快!という意見が多いみたいですが、個人的には超爽快で、心が晴れ晴れするような映画でした。本当に心地良いラスト。

結末の部分は若干ぼやかしていたりして、観客の想像に委ねるような部分も多かった気がします。サイモンはラストで絶望のドン底まで堕ちていきますが、自殺なんかは絶対にせずに苦しんだまま生き続けてほしいです…。それだけのことをしたんだから。

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ジョエル・エドガートンが一気に大好きになりましたよ。風貌も表情もすごく良かったですし、左耳にピアス、変なヒゲ、変な表情、なよなよして弱そうな身のこなし(実際弱いのでボコられる)。出演作けっこう観てましたが、今まであんまり印象がなかったので見直したくなりました。最初はキモい印象しかなかったです。おそらくゴードは童貞で、レイプすることで大人になれたのだと思います(ただの妄想です)。サイモンはムカつきすぎたからかちゃんと痛い目にあってくれて嬉しかったです。性格の腐り具合が最低でしたし、ゴードに感情移入しすぎて、怖いというよりは「よくやったゴード!!」って感じ。それとは関係なくサイモンは仕事上のゲスっぷりも仲間にバレてしまい職を失い、本性を知った妻とはおそらく離婚。徹底的に突き落としてくれましたー。なので、もう何も言うことなし!ありがとうジョエル・エドガートン!

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嫌な奴がガンガン嫌な目にあって気持ちよかった!
しかも殺さずに一生苦しめるタイプの制裁!
個人的には恐ろしさより爽快感のほうが強かった!
人を蹴落として生きてきたような人間はクソ!
事実を都合よく捻じ曲げる奴もクソ!
生徒会長をやるような奴は全員クソ(偏見)!
いじめられた人間はいつまでも覚えているし絶対忘れないんだよ!


…と自分のことを棚に上げていろいろ思ったんですが、見終わってから日が経つと、自分はどうなんだろう…と考えちゃいますね。もちろんいじめた経験はないつもりですが、誰にも恨まれてないとも思えません…。たぶん誰でもそうなんでしょうけど、ちょっとだけ怖ろしくなりました。昔の同級生なんかにはますます会いたくなくなったし、ギフトなんか頂いても絶対無視ですよねー。そんなの考えただけでも気持ち悪いし、そもそも貰えないし、同級生なんかは全員死んでいてほしい、本気で。あと、エンディングの選曲サイコーだッ!(Templesの『Keep In The Dark』)


おしまい 


↑予告