いけにえ映画狂い

外国映画の感想文。お気に入りシーン備忘録など。ネタバレしてます!

2016/11

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』感想。(PG12)

青春群像劇の大傑作!チンコで心の扉を開け!最高だ!
個人的評価:★★★★★★★★★☆ 90点
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2016年11月05日公開/117分/アメリカ/映倫:PG12
原題:EVERYBODY WANTS SOME!!
監督:リチャード・リンクレイター
出演:ブレイク・ジェナー、ゾーイ・ドゥイッチ、グレン・パウエル、タイラー・ホークリン、ライアン・グスマン、ウィル・ブリテン、J・クィントン・ジョンソン、ワイアット・ラッセル、オースティン・アメリオ、テンプル・ベイカー、ターナー・カリーナ、ジャストン・ストリート、フォレスト・ヴィッカリー

いやーもう最高。最初っから最後までもう本当に最高すぎて、自然と顔がニコニコしちゃうような映画でしたー。エンドクレジットが終わる最後の一瞬まで本当に幸せ。「こんなに幸せな映画があんのかよ!」って言いたくなっちゃうくらいに本気で楽しい青春映画。大好きです。面白すぎたので珍しく映画館で二回観ちゃいました。「最高」以外の感想が出そうにないです…。

今回は「ここが好き!ここが最高!」とかそういうことしか書いてません!(毎回そんな感じですが…)

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<あらすじ>
1980年夏、ジェイク(ブレイク・ジェナー)は、野球の推薦入学生として大学に通うことになる。本格的に授業がスタートする前の数日間、彼は新しく知り合ったチームメイトたちと共にどんちゃん騒ぎを始める。話題は野球や女子たちのこと、好みの曲や下品なジョークまでといろいろで……。
(以上シネマトゥデイより)



オープニング曲はザ・ナックの『マイ・シャローナ』

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主人公の新入生・ジェイクが野球部の寮に転居してくるところから映画は始まります。入部する野球部は全米屈指の強豪チーム。舞台はテキサス。

個性的なチームメイトと共に毎晩ディスコで踊って酒を飲み、カワイイ女の子を口説いて回る。寮に戻るとマリファナ吸ったりゲームをしたりビールを飲んだり…。描かれるのは野球エリートたちのユルい日常。ジェイクが彼らと過ごす新学期の授業が始まるまでの3日間(+15時間)の物語。事件らしい事件はほとんど何も起こりませんし、青春映画特有の「ボクって何?」みたいな葛藤なんかもほぼ描かれません。そんなことよりも、とりあえず遊べ!酒を飲め!ナンパ!セックス!ちんこトーク!みたいな…最高におバカな内容。

「女の子とヤりたい!」

そんなリアルな若者の願望を濃縮したような「これぞ青春」な青春映画。人生で最も輝いていたあの頃…。永くは続かないからこそ、今という一瞬を全力で楽しめ!ってことなんだと思います。

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所謂リア充が主役ということで、「羨ましいよ!ふざけんな!」と言いたくなるような内容なんですが(ボクにはこんな青春はなかった…)、それでもキャラクターたちにムカつかず、むしろ愛おしくなっちゃうのは、やっぱり皆揃って強烈にアホっぽいからです(笑)。

アメリカのコメディ映画によくあるような底抜けにバカバカしいものではなくて、あくまでも「こんなやついるよな~」とギリギリ思える程度のアホっぽさ。映画で度々描かれてきた鬱屈した青春の悩みなんかよりも「いや、学生時代ってもっとみんなバカやってるでしょ?」という説教臭さゼロの清々しさが素直に楽しかったです。こんなに爽快な青春映画も珍しいんじゃなんでしょうか。青春とはウジウジ悩んで屈折することだ、そう思っている人間にとっては眩しすぎる映画だと思います。

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ちゃんとオッパイも映る!(この内容で隠してたらブチ切れてる)

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もう序盤から超楽しいんですよねー。車内で繰り広げられる会話の応酬が超おバカ。「ちんこ」という言葉がここまで連呼される映画も珍しいと思います。さらに、そんなしょうもな~い下ネタを真面目に論じていたりするから余計にアホっぽくて最高。初対面の先輩たちに連れ回されるこの感じはどこか懐かしく、何かが起こりそうなワクワク感もビンビン感じました。『ラッパーズ・ディライト』→ナンパ→ちんこトークの流れを見て、「あっ、オレ絶対この映画大好きだ!」と思った人は少なくないハズ!

「マイ・シャローナ」でこの映画のイメージが決定づけられた感じもありました。最初から最後までずーーーっと、女の子大好きッ!なボンクラ感。しかも主役がスクールカーストの頂点に君臨しているジョックス軍団。モテない底辺のオタク野郎なんかは出てきません。あえて排除して描かなかったのだと思います。なぜなら、スポーツという武器を取ってしまえばジョックス軍団も同じ人間で、考えていることは文科系とたいして変わらないのです。型にハマったような典型的な描かれ方はしていませんでした。

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野球部の寮での酒とセックスは禁止(しかしアッサリとルールを破る)。

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『6才のボクが、大人になるまで。』のボクのその後を描いた続編みたいな予告ですが、どっちかというと空気感は『バッド・チューニング』に近い気がしました。本作の時代設定は『バッド・チューニング』の4年後ですし(これの精神的続編であるという記事もいくつかありました)。リンクレイターの半自伝的内容というだけあって共通するものも多かったです。ケツを叩かれていたあの青年が成長して大学に入学したのだと思うと嬉しくて泣きそうになっちゃいます…。『ビフォア~』シリーズや『バッド・チューニング』のように今回も人生のある時間を一部分だけ切り取ったような話でした。リンクレイター節全開だと思いましたよ!

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野球部の面々は皆個性的で愛くるしいヤツばかり。頭の中は「女の子とヤりたい!」という願望と「他人に負けたくない!」という競争心。ティーンの男子にとってセックスしたいのは普通だし当り前。むしろ健全なことに思えます。そんな性的欲求をストレートに描いている感じがして、まったく厭味がなかったし、全員激しくアホっぽい(笑)。見ている間中そこに映る人間たちが心の底から愛おしくなってしまう…。大袈裟に書いているようですが、本当にそんな感じでした。自らの欲望に純粋だからなのか、愛着しか湧きませんでしたよ!

野球の技術的なものなどはあまり描かれません。野球以外のゲームをやっている時間のほうが長いくらいです。とにかく全員が死ぬほど負けず嫌いな性格で、それは野球に限りません。「くだらないゲームにこそ人間の本性が出るのさ」というセリフはまさにその通りだと思いました。トップまで登り詰めるには卓球やデコピンで負けて本気でブチ切れるくらいのハングリーさが必要なのかもしれませんね。強豪校の精神性には説得力がありました。

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みんな最高だし大好きなんだけど一番好きなキャラクターはフィンでした。

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チンコで心の扉を開いてご満悦なナンパの天才・フィン。憧れるわー。

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「若い時は時間を大切にしろ」なんて説教臭いことは言いません。惹き句にもなっていた「後悔するのは、やったことじゃない。やり残したことさ」というようなセリフも、具体的に何をするかというと下着での取っ組み合いだったりするからもう最高。欲望をぎゅうぎゅうに詰め込んだ上にすべてキッチリやってしまっている、にもかかわらず厭な感じがないという奇跡みたいな多幸感に溢れた傑作だと思います。

パーティーはトッド・フィリップスの『プロジェクトX』みたいな盛り上がりよう。下着の女の子たちがツイスターゲームをやっていたり、外では男女で泥んこレスリングが行われる幸せすぎる空間。「あれもこれも全部やりたい」を全部やれちゃう男たち。羨ましいけど憎めない!!!!

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あー、羨ましい………羨ましい羨ましい羨ましい!!

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80年代(というより70年代!?)の音楽、ファッション、ゲームなども楽しかったです。生きた経験がないのに、なんだか懐かしくなってしまうのが不思議でした。そこまで関係は深くないんだろうけど、この感覚には『ブギーナイツ』を思い出さずにはいられませんでした。
夜が来るまでの退屈な午後も全力で遊ぶチームメイトたち。ゲームはいろいろあって、バスケットボール、ビリヤード、ピンボール、卓球、拳ゲーム(これは超サイコー!)など。何もせず無為に過ごすなんて時間がもったいないだけだ!という感じ。見ていると、まさにその通りとしか思えません。

それから”名古屋撃ち”という翻訳にグッときた。

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マリファナを吸っていても対決になっちゃいます。「誰が一息でいっぱい吸えるか~」「大学記録を作ったぜ、エヘヘ」とか、もうなんか可愛らしくて愛おしくなってきます。あと、ここのシーンではリンクレイターらしく(?)宇宙哲学なども語られていて、脱力しながら気持ちよくなっちゃう感じです。

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恋愛描写は必要最小限に描いていた印象です。お互いが一瞬で恋に落ちちゃう感じがとてもイイ。よくあるラブコメみたいに無駄なかけひきもないしホントに清々しくて潔い展開でした。ヒロインであるビバリー役のゾーイ・ドゥイッチはリー・トンプソン(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)の娘!!!!(知らなかった~)

電話してる最中にビバリーがずっと落書きしているのとかカワイイですよね。

WhenHarryMet Sally

『恋人たちの予感』を思い出しました(よくある二分割だけど…)。

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それからカート・ラッセルとゴールディ・ホーンの息子であるワイアット・ラッセルも出演していました。『22ジャンプストリート』での演技を見ていたので存在は知っていましたが、観終わるまでまったく気づきませんでしたよー。これはけっこう嬉しかったです。30歳のドラッグ野郎の設定でしたが、実年齢も30歳だったみたいですね。ずっと大学生でいたかったという感覚もこの映画を見ればすごく共感できます。こんな楽しい生活を体験してしまったら年齢を偽ってでも学生になりたい!すごくわかるよその気持ち!

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予告では野球のシーンがけっこう強調されていたのですが、ほとんど野球してません(笑)。最後まで野球しないのか…と思っていたら一応は練習シーンもありました。野球の技術を魅せつけるような感じではなく、ここも描かれるのは負けず嫌いなキャラクターたちの人間性。それと新入生歓迎の儀式も残酷で面白かったです(あれ目に当たったら失明しそうで怖いよね…)。

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登場人物は皆、半端じゃなく負けず嫌いで、どうしようもないことで喧嘩してしまうのですが、わりとアッサリと仲直りしてしまう。男っていいな~と思えました。グチグチ引きずらずに素直に「ごめんね」って言える関係性がすごく素敵でした。それに対して「気にすんなよ」と普通に返してくれるのもグッときます。初日にちょっとした諍いでギクシャクした関係となっていた新入生も、部室でのイタズラ遊び(ケツを顔につける)を経て、気がついたら仲間の輪に戻っていたりする。変にドラマチックにせずに坦々と流れていく空気感は「これぞ日常!」という感じで、なんかよかったですね。実際はきっとこんなもんですよ。

自分は野球未経験なので「俳優たちの野球経験の有無」はわからないしどうでもよかったです。リンクレーター自身が野球経験者ですし、『がんばれベアーズ』の経験もあるため見せ方は巧かったんじゃないかと思ってます。ちゃんと強豪野球部に見えました。

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ジェイクの高校時代のチームメイトも好きでした。彼は野球をやめてしまった人間で、再会するとパンクロッカーになっています。「野球やめちゃったけど俺はサイコーに幸せだぜ!ひゃっほー!」って感じなんですよね。スポーツエリートから脱落してしまった存在もしっかり描いていて、しかしまったく悲観的ではなく「こっちはこっちでサイコーだぜ!」って感じなのが嬉しかったです。ジョックス軍団だけが幸せな世界なのではなく、ナードもスラッカーも皆入学初日までは平等に心をときめかせているのです。

ディスコ、カントリー、パンクと音楽のジャンルにこだわらずどんなノリでも楽しめるというところも素敵でした。何に対しても固執せず自由に楽しんでいるのがすごくよかったです。差別がなく分け隔てなく付き合える人種としてのジョックスは新鮮でした。ディスコもカントリーもパンクだって演劇だって面白そうなものはなんでもやる、こういう柔軟性と適応能力(とくにフィル)には憧れちゃいます。

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パンクのライブでサークルモッシュ!(若者に混じるオジサン感)

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「バカやってるだけで楽しかったあの頃はもう戻ってこないんだな…」とかそういうこと考えてしまうと少し寂しくなっちゃうかもしれません…。野球しか取り柄のない、まだ何者でもない存在であることに薄々気づいてしまっている不安感。もし将来プロ野球選手になれなかったら、今後どうなっていくんだろう…。そんな葛藤も描かれていましたが、この映画は「そんなこと考えてる暇があったら今を楽しめ!」ってことを言ってるんだと思うんですよねー。悲観的な描写は微塵もないし、もうずーーっと見ていたいような映画でした。描かれるのは8月の終わりの金曜日から月曜日の朝までの3日間。おそらくこんな宴が毎週末、あと4年間も繰り返されていくのでしょう。

何気なく過ごす日常の一瞬一瞬が輝いて見えてしまうのは、見ている誰もがいつかは終わることを知ってしまっているからなんでしょうね…。だからこそダラダラ過ごした無駄な時間が貴重なものに思えてくる。しかし大学生活はこれから始まるのです。これを”まだ4年間もある”か、”たった4年間しかない”と感じるかで微妙に観た人の感想が分かれそうな気もしました。序盤の「時間ならタップリあるさ」というセリフ(最初のナンパの直後)とは対照的に「永くは続かない」というセリフもあって、メッセージを押しつけず、どう思うかを観客の側に委ねていた印象です。

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リチャード・リンクレイター監督の映画はけっこう好きでほぼ観てるんですが(2作だけ未見)、これが最高傑作だと思いました。個人的には一番好きです。仲間と過ごした意味のない日常が後々振り返ってみると実はとても貴重な時間だったりするんですよね。何も起こらないし、ただ下ネタを言い合って女の話ばかりしていただけなのに、なぜあんなにも楽しかったのか…。この主人公たちと自分との共通点なんてほとんどありません。むしろ正反対の所謂”リア充”。それなのに見ていて嫉妬心が湧かないのは、やっぱりみんなアホっぽかったからだと思います。変にかっこつけずありのままを曝け出しており、そこが本当に素晴らしい。もしかしたらジョン・ヒューズへのリスペクトもあったのかなー。

SNSもスマホもない時代。テクノロジーの進化によって失われてしまった”人との関わり”を描いていたようです。TVさえも排しているのが象徴的でした。

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"開拓すべき場所は自分でみつけるもの "

ラストで目を閉じる主人公はすでにこれを理解していたんじゃないかな。

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しかし、そんな良いオチを破壊する超絶アゲアゲなエンドロール!!

キャラクターが入れ代わりながら順番に自己紹介ラップをしていくというもの。ここが一番テンション上がるシーンといってもいいです。もうねー、完全にアホでしょ(笑)。マジで最高。鑑賞後に残ったのは「超絶楽しい」という感情でした。ありがとう、リンクレイターと愉快な仲間たち…。


おしまい

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今を楽しめ!!!!どうせそのうちみんな死ぬ!!!!


↑予告


ホントどうでもいいですが「ヤルかヤラナイの人生なら、俺はヤル人生を選ぶ」っていう『テレクラキャノンボール2013』のキャッチコピーを思い出しました。言ってることは同じだったと思いますよー。ウンコ食わない人生よりウンコ食った人生のほうが素晴らしいに決まってる!年齢は関係ない!!

『ソーセージ・パーティー』感想。(R15+)

強烈にブッとんでてヤバい作品でした!大好きです!
個人的評価:★★★★★★★★★☆ 90点
SausageParty
2016年11月04日公開/89分/アメリカ/映倫:R15+
原題:SAUSAGE PARTY
監督:コンラッド・ヴァーノン、グレッグ・ティアナン
出演:セス・ローゲン、クリステン・ウィグ、ジョナ・ヒル、ビル・ヘイダー、マイケル・セラ、ジェームズ・フランコ、ダニー・マクブライド、クレイグ・ロビンソン、ポール・ラッド、ニック・クロール、デヴィッド・クラムホルツ、エドワード・ノートン、サルマ・ハエック

公開初日に観てきましたー。東京では連日満席で大盛り上がりみたいですが、自分が観た回は半分以上空席でした(田舎なので)。初めて予告を見たときの衝撃がデカすぎて、もうそれだけで今年のベスト級!ってくらいに大好きで、そのぶん過度に期待して、公開日は本当に待ちに待ったという感じでした…。

で、感想なんですが、いやーまあスゴかった。マジで最高。観てる間中ずっと興奮しっぱなし。爆笑シーンの連続だし、ものすごく残酷オゲレツなシーンも多々あり、オエッてなったりホッコリなったり歓喜したりで、もう何もかもが幸せすぎました。ただ、個人的には大好きですけど、賛否両論になるのはしょうがないような内容ですよねー。半端じゃなく狂ってます。『ソーセージ・パーティ』というタイトルもスラングとして解釈すると「男(チンコ)だらけのパーティ」という意味だそうで、凄まじいド下ネタでしたよ!

声優陣は米コメディ映画俳優(アパトー・ギャングなど)が大集合って感じで、クレジットを眺めていたらラストでうるっときてしまいました…。R指定アニメだし今回もどうせビデオスルーだろ!と思っていたので、劇場公開されただけでも嬉しかったですよ、マジで…。

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<あらすじ>
物語の舞台となるのはスーパーマーケット「ショップウェル」。ソーセージのフランクは、恋人であるパンのブレンダと一緒に”ドアの向こう側”へ行き、二人でひとつに結ばれてホットドッグになることを夢見ていた。棚に並んだ食品たちは、神様(お客様)に購入してもらい”ドアの向こう側”へ行けば必ず幸せになれるはず、外の世界は【楽園】なのだと信じている。独立記念日の感謝祭前日、ついにその夢が叶う時がやってくる。神に選ばれ、二人揃ってカートに入れられるフランクとブレンダ。しかし喜んだのもつかの間、直後にアクシデントが起こってしまう。カート同士がぶつかった衝撃で中にいた食品たちが床に投げ出されてしまったのだ…。なんとか命は助かったもののフランクとブレンダはスーパー内に取り残されてしまう…。一方、カートに残っていた食品たちは無事にお買い上げされて”ドアの向こう側”へ。夢にまで見たキッチンに到着するのだが、そこには残酷な真実が待ち受けていた。なんと、神は皆大量殺戮者であり、食材を切り刻み、焼き、茹で、料理して食べていたのだ…!!

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メインのキャラクターは食品です。人間が食材を調理して食べるという当り前のことが、人格を持った食品たちの目から見ると超残酷な行為となってしまうんですね。「もしも食品が人格を持ち、まるで人間のように生きてたら…!」っていうアイデアは、誰でも一回くらいは考えたことあるんじゃないのかな。食べ物が実は生きていて、モノを考えて喋って動くという根本のイメージは、やっぱり『トイ・ストーリー』だったり、ディズニーを意識していたと思います。リスペクトは強く感じました。食品たちの黒い腕に白いグローブってのはミッキーマウスみたいですしね!

そんな彼らが世界の真実に気づいてしまって「食われてタマるか!」と、人間たちに戦いを挑んでいくお話です。

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個人的に一番注目してたのは残酷描写です。まあ予告の時点で何度も見ちゃってたんですが、これが本気で超サイコーですよねー。食品たちの死亡シーンを見てるだけでもめちゃくちゃ楽しかったです。けっこう大量に死んでました。一秒に満たない死亡シーンもいっぱいあって、容赦はまったくなかったし、もしこれが人間だったらと思うとおぞましい描写の連続でした…。まあでも人間じゃないから腹抱えて笑えましたよ!

擬人化しているので食品が破損するとそのキャラクターは当然死にます。瓶詰めのマスタードが大破して飛び散ったり、バナナの皮が剥けちゃったり、トマトが切断されたり、ポップコーンが弾け飛んだり、それぞれが素材を生かした多種多様な死に様を見せてくれました。これがすごく面白い!普段、日常的に消費している食品を擬人化すると超残酷だよねッ!ってことで基本的にはそれがギャグになっていることが多かったと思います。凄惨な死に様ばかりなんですが、キャラクターが可愛いからか、悲壮感がないし万人にウケるポップな印象を受けました。腸や血が中身の具材で表現されていたりして、食材が破壊される描写はどれも面白かったです。

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最初に死ぬのがハニーマスタードなんですが、ここも良かったです。購入されて外の世界へと旅立っていくハニーマスタード。しかし、「種類を間違えた」という理由で再び店の商品棚に戻されてしまう。”ドアの向こう側”で残酷なる真実を目撃してしまった彼は、世界に絶望し飛び降り自殺をしてしまう。

「顔面に精子をぶっかけられて真実が何も見えていなかったんだ!」

言ってることはまっとうな意見っぽいんですが、キャラクターのセリフ回しはみんな下品でアホっぽかったです。ファックという言葉の数も尋常じゃなく、90分で150回くらい連発されていたようです。サイコー。

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食品がそれぞれ性的欲求を感じているってところが面白かったです。食品同士でセックスするなんて、思いついたとしても誰もやらないですよね!スゴい!もしもピクサーがR指定のエログロ映画を製作したら、こんな感じになるのかなー。偏差値は限りなく低めです。暴力よりも性描写のほうが狂っている気がしました…。

中東問題への皮肉とか、真面目に深く語りたくなるような象徴的なものもいくつかあるんですが(もしかしてシネフィルに向けて撒いた餌じゃないの?)、そんなものをすべて破壊してしまうのが終盤に描かれるフリーセックスの宴でした! 神々(人間)を抹殺することに成功した食品たちは食種(人種?)、そしてLGBTの垣根を乗り越えて大乱交! 食材ならではのセックスが凄い! しっかり射精している奴もいた! ここのシーンはホントに最高で、言葉を失ってただただ笑うのみでした! アイデアが超ブッ飛んでます!! とにかく下品!!そして、ちゃんとエロい!!!!

個人的には、ヒトラーがウケ側に回っているのとかツボでしたよ。

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キャラクターデザインも素晴らしかった。とくにヒロインのパン・ブレンダ。ちゃんと胸の膨らみなども表現しており、衝撃的だったのが口ですね。これが縦についていてパクパク喋る。体の中心は割れ目になっていて、途中から女性器にしか見えなくなりました。ド直球でバカっぽいですけど、こういう鬼畜な発想をそのまま絵にしちゃうのはスゴいなーと思います。心底から感動しましたよッ(アホです)。

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悪役はビデでした。ビデってのは膣洗浄器だそうです。ノズルを女性器に突っ込んで使用するみたいです。フランクたちと一緒にカートの外に放り出されてしまい、店内に取り残されたのはフランクの行動が原因だと言って因縁をつけてきます。自己中心的なヤツでした。

コイツ最高でしたよ。まず存在自体がちょっと卑猥だし(入れられてる箱のパッケージもすごい)、行動も容赦なくて面白かったです。落下した衝撃でビデの容器が割れてしまって中の液が漏れ出してしまい、このままだと死んでしまう…ということで液体の食品(ジュースとか)を殺害して、相手の液体を飲むことで命を保っていくんです。最初にジュースを殺すシーンは、完全にレイプみたいに撮ってました。紙パックのジュースの股間にちょうどよく穴が開き、それをゴクゴク飲み干すビデ。ほとんど犯しているようでした(完全に狙ってやってます)。しかも相手の食品は男性だったと思います。その後も何体もの食品を殺害して、生き血を啜るように生き延びていくキャラクターでした。目的はソーセージへの復讐を果たすこと。そのためにしつこく追いかけてきます。ラストでは店員の男性のアナルにノズルを挿入して、両手で金玉袋を引っ張って人間ををロボットのように操縦し…。いやーもう考えた人(セス・ローゲン)頭おかしいですね(笑)。そんな感じで、面白かったですよ!

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キャラのほとんどが食品ですが、トイレットペーパー、コンドーム、ビデといった股間回りに関わる(?)消耗品などだけは登場します。徹底的に下ネタなんですよね。上の画像は、使い捨てられたコンドームが神の残酷さを悲痛に訴えるシーン。見た目ちょっと可愛らしいんですが、何に使用されたのか考えるとものすごくエグい。

「やつらはドピュッと出したんだ!!」

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監督の前作『モンスターVSエイリアン』でもそうだったように、今回の『ソーセージ・パーティ』も映画のパロディ満載でした。たとえば、食品たちがカートから床に放り出されるシーンは『プライベート・ライアン』でした(音が一瞬途切れて、目覚めると周りは血まみれの戦場に!仲間たちは内臓が飛び出ていたり顔の皮膚が剥がれていたりと凄惨な状態)。ほかにも、敵を取り囲んで指をパチパチ鳴らすシーンは『ウエスト・サイド物語』だし、銃弾を喰らったガムが自己再生するシーンは『ターミネーター2』のT-1000(わかりやすく音楽まで流れる!)、それから銃弾の弾道は『マトリックス』みたいだったし、楽園に行けると思っていたが実は違う…!と気づくシーン(ポテトは皮をひん剥かれるところ)は『アイランド』だッ(違うかも)! 学者の机に何十年もへばりついていたために天才になってしまったガムはホーキング博士にしか見えないし、冒頭のミュージカルシーンは『美女と野獣』の「ビー・アワー・ゲスト」へのオマージュだと思います(スーパーが開店してお客様が入ってくるシーンだし)。そんな感じで、いろいろ元ネタがありそうだと思いました。ラストではなんと『スターゲイト』が登場するSF要素まで!

とくに食品たちの死に様は「コレってアレだろ!」と言いたくなるものが何個もあったので、元ネタ大辞典ができそうな感じしましたよ。単純に似ちゃっただけとか、ただの思い込みもあると思いますが、面白かったです。

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車のナンバープレートが「DIXAR」になっているのは、やはり「PIXAR」へのリスペクト?

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いつもドラッグをキメてラリっているセス・ローゲン脚本なので(『スモーキング・ハイ』など)、今回もガッツリ薬に溺れている中毒男が登場。”バスソルト”という名称のダウナー系の合成麻薬(?)を、ちゃんとスプーンに盛って煮沸して注射器で注入。カメラのアングルとカット割りはほぼ『パルプ・フィクション』完コピという感じで、音楽は『レザボア・ドッグス』の「Little Green Bag」が流れていたのでタランティーノリスペクトってことなんでしょうか。食品たちも何故かマリファナをプカプカ吸いまくっていて、みんな気持ちよさそうでしたねー。

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独立記念日の感謝祭前夜にお客様にお買い上げされた食品たち。人間たちへの復讐を決行したのは感謝祭当日。7月4日ですね。この日には毎年アメリカ全土でソーセージがバカ売れするんだとか。感謝祭にはBBQと花火がつきものだそうです(よく知りませんが)。大ボスである悪役を最後には爆死させるんですが、どう見ても花火だし、アメリカが植民地支配から独立したように、食品たちが人間の支配から解放されたことを表していたんだと思います(たぶん)。

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最終的にスーパーにいる人間たちは皆殺し!

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食べ物だからいつかは腐っちゃうし(賞味期限のない永久保存食品も出てきますが)、この話ってハッピーな終わり方難しいよなあ…と思いながら後半のほうは観ていたんですが、さすが『ディス・イズ・ジ・エンド』の脚本家集団、ラストはちょっとブッ飛んでます。残酷な真実を知り、人間との戦争に勝利した食品たち。しかし、さらなる真実を知ることとなるのです……。それは、「お前ら、アニメのキャラクターなんだよ!」ということでした。

「フランクの声優は、セス・ローゲンというユダヤ人のコメディ俳優だ!」

えええ!!!!と呆気にとられているうちに、気分がアガるカッコいいオチでエンドクレジットへ…。

「食べ物は大切に食べましょう」みたいな説教臭い方向へ行かず最後の最後までアホっぽくて良かったです…。描写がクソ面白かったし、ボイスキャストも豪華だし、絵も大好きな感じで、もう観る前から絶対好きになれるだろうなと期待値はものすごく高めで観たのですが、最高でしたね!本編に対しての不満はとくにありません。強いて言うなら、もっと観ていたかった!ってことぐらいです。体感的には、あっという間で「もっと見せてくれ!」という気持ちも若干ありました。でも、ホントに面白かったんで、「下ネタなんか絶対ヤダ!!」という人じゃなければ強めにオススメしたい作品です。できることならこのチームでまたR指定アニメを作ってほしいなー。

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もちろん人間の生首も登場してましたよ!(斧での事故死)

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ボトルの生首もあった!(生き血を啜るシーン)

SausageParty9

ダダッダッダダ!ダダッダッダダ!

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最後に、日本語字幕について…。

本編中ずーっとFUCKやらSHITやら連発してんのに、字幕は妙に”お上品”だな~!ってのは感じてしまいました。時間の都合とか文字数の都合とかいろいろあるのはわかりますし、普段こんなところ気にして観てませんけど、唯一引っかかってしまった点です。作品に非はないし、残念ってほどでもないんだけど、もっと汚い言葉のほうが良かったかなーとは思いました。英語喋る人間じゃないのでエラそうなことは言えませんが、もっと「チンポ吸い」とか「腐れオマンコ」とか馬鹿で下品な偏差値低いやつでもよかったんじゃないの!?

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うんこ!!!!!!!!!!

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目ん玉!!!!!!!!!!

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オナニー!!!!!!!!!!

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アナル!!!!!!!!!!

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・・・ということで、”好み”の描写満載。大好きでしたよ!

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カットされた別エンディング(?)では、スターゲイトに吸い込まれていったキャラクターたちが店でホットドッグを食べている声優陣(セス・ローゲン、マイケル・セラ、エドワード・ノートン)を呆然と眺めている、というものでした(笑)。このエンディング超絶アホっぽくて大好きですよ!もしかしたらこっちのバージョンのほうが面白かったかも!!



おしまい

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