青春群像劇の大傑作!チンコで心の扉を開け!最高だ!
いやーもう最高。最初っから最後までもう本当に最高すぎて、自然と顔がニコニコしちゃうような映画でしたー。エンドクレジットが終わる最後の一瞬まで本当に幸せ。「こんなに幸せな映画があんのかよ!」って言いたくなっちゃうくらいに本気で楽しい青春映画。大好きです。面白すぎたので珍しく映画館で二回観ちゃいました。「最高」以外の感想が出そうにないです…。
今回は「ここが好き!ここが最高!」とかそういうことしか書いてません!(毎回そんな感じですが…)
<あらすじ>
1980年夏、ジェイク(ブレイク・ジェナー)は、野球の推薦入学生として大学に通うことになる。本格的に授業がスタートする前の数日間、彼は新しく知り合ったチームメイトたちと共にどんちゃん騒ぎを始める。話題は野球や女子たちのこと、好みの曲や下品なジョークまでといろいろで……。
(以上シネマトゥデイより)
主人公の新入生・ジェイクが野球部の寮に転居してくるところから映画は始まります。入部する野球部は全米屈指の強豪チーム。舞台はテキサス。
個性的なチームメイトと共に毎晩ディスコで踊って酒を飲み、カワイイ女の子を口説いて回る。寮に戻るとマリファナ吸ったりゲームをしたりビールを飲んだり…。描かれるのは野球エリートたちのユルい日常。ジェイクが彼らと過ごす新学期の授業が始まるまでの3日間(+15時間)の物語。事件らしい事件はほとんど何も起こりませんし、青春映画特有の「ボクって何?」みたいな葛藤なんかもほぼ描かれません。そんなことよりも、とりあえず遊べ!酒を飲め!ナンパ!セックス!ちんこトーク!みたいな…最高におバカな内容。
「女の子とヤりたい!」
そんなリアルな若者の願望を濃縮したような「これぞ青春」な青春映画。人生で最も輝いていたあの頃…。永くは続かないからこそ、今という一瞬を全力で楽しめ!ってことなんだと思います。
所謂リア充が主役ということで、「羨ましいよ!ふざけんな!」と言いたくなるような内容なんですが(ボクにはこんな青春はなかった…)、それでもキャラクターたちにムカつかず、むしろ愛おしくなっちゃうのは、やっぱり皆揃って強烈にアホっぽいからです(笑)。
アメリカのコメディ映画によくあるような底抜けにバカバカしいものではなくて、あくまでも「こんなやついるよな~」とギリギリ思える程度のアホっぽさ。映画で度々描かれてきた鬱屈した青春の悩みなんかよりも「いや、学生時代ってもっとみんなバカやってるでしょ?」という説教臭さゼロの清々しさが素直に楽しかったです。こんなに爽快な青春映画も珍しいんじゃなんでしょうか。青春とはウジウジ悩んで屈折することだ、そう思っている人間にとっては眩しすぎる映画だと思います。
もう序盤から超楽しいんですよねー。車内で繰り広げられる会話の応酬が超おバカ。「ちんこ」という言葉がここまで連呼される映画も珍しいと思います。さらに、そんなしょうもな~い下ネタを真面目に論じていたりするから余計にアホっぽくて最高。初対面の先輩たちに連れ回されるこの感じはどこか懐かしく、何かが起こりそうなワクワク感もビンビン感じました。『ラッパーズ・ディライト』→ナンパ→ちんこトークの流れを見て、「あっ、オレ絶対この映画大好きだ!」と思った人は少なくないハズ!
「マイ・シャローナ」でこの映画のイメージが決定づけられた感じもありました。最初から最後までずーーーっと、女の子大好きッ!なボンクラ感。しかも主役がスクールカーストの頂点に君臨しているジョックス軍団。モテない底辺のオタク野郎なんかは出てきません。あえて排除して描かなかったのだと思います。なぜなら、スポーツという武器を取ってしまえばジョックス軍団も同じ人間で、考えていることは文科系とたいして変わらないのです。型にハマったような典型的な描かれ方はしていませんでした。
『6才のボクが、大人になるまで。』のボクのその後を描いた続編みたいな予告ですが、どっちかというと空気感は『バッド・チューニング』に近い気がしました。本作の時代設定は『バッド・チューニング』の4年後ですし(これの精神的続編であるという記事もいくつかありました)。リンクレイターの半自伝的内容というだけあって共通するものも多かったです。ケツを叩かれていたあの青年が成長して大学に入学したのだと思うと嬉しくて泣きそうになっちゃいます…。『ビフォア~』シリーズや『バッド・チューニング』のように今回も人生のある時間を一部分だけ切り取ったような話でした。リンクレイター節全開だと思いましたよ!
野球部の面々は皆個性的で愛くるしいヤツばかり。頭の中は「女の子とヤりたい!」という願望と「他人に負けたくない!」という競争心。ティーンの男子にとってセックスしたいのは普通だし当り前。むしろ健全なことに思えます。そんな性的欲求をストレートに描いている感じがして、まったく厭味がなかったし、全員激しくアホっぽい(笑)。見ている間中そこに映る人間たちが心の底から愛おしくなってしまう…。大袈裟に書いているようですが、本当にそんな感じでした。自らの欲望に純粋だからなのか、愛着しか湧きませんでしたよ!
野球の技術的なものなどはあまり描かれません。野球以外のゲームをやっている時間のほうが長いくらいです。とにかく全員が死ぬほど負けず嫌いな性格で、それは野球に限りません。「くだらないゲームにこそ人間の本性が出るのさ」というセリフはまさにその通りだと思いました。トップまで登り詰めるには卓球やデコピンで負けて本気でブチ切れるくらいのハングリーさが必要なのかもしれませんね。強豪校の精神性には説得力がありました。
「若い時は時間を大切にしろ」なんて説教臭いことは言いません。惹き句にもなっていた「後悔するのは、やったことじゃない。やり残したことさ」というようなセリフも、具体的に何をするかというと下着での取っ組み合いだったりするからもう最高。欲望をぎゅうぎゅうに詰め込んだ上にすべてキッチリやってしまっている、にもかかわらず厭な感じがないという奇跡みたいな多幸感に溢れた傑作だと思います。
パーティーはトッド・フィリップスの『プロジェクトX』みたいな盛り上がりよう。下着の女の子たちがツイスターゲームをやっていたり、外では男女で泥んこレスリングが行われる幸せすぎる空間。「あれもこれも全部やりたい」を全部やれちゃう男たち。羨ましいけど憎めない!!!!
80年代(というより70年代!?)の音楽、ファッション、ゲームなども楽しかったです。生きた経験がないのに、なんだか懐かしくなってしまうのが不思議でした。そこまで関係は深くないんだろうけど、この感覚には『ブギーナイツ』を思い出さずにはいられませんでした。
夜が来るまでの退屈な午後も全力で遊ぶチームメイトたち。ゲームはいろいろあって、バスケットボール、ビリヤード、ピンボール、卓球、拳ゲーム(これは超サイコー!)など。何もせず無為に過ごすなんて時間がもったいないだけだ!という感じ。見ていると、まさにその通りとしか思えません。
それから”名古屋撃ち”という翻訳にグッときた。
マリファナを吸っていても対決になっちゃいます。「誰が一息でいっぱい吸えるか~」「大学記録を作ったぜ、エヘヘ」とか、もうなんか可愛らしくて愛おしくなってきます。あと、ここのシーンではリンクレイターらしく(?)宇宙哲学なども語られていて、脱力しながら気持ちよくなっちゃう感じです。
恋愛描写は必要最小限に描いていた印象です。お互いが一瞬で恋に落ちちゃう感じがとてもイイ。よくあるラブコメみたいに無駄なかけひきもないしホントに清々しくて潔い展開でした。ヒロインであるビバリー役のゾーイ・ドゥイッチはリー・トンプソン(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)の娘!!!!(知らなかった~)
電話してる最中にビバリーがずっと落書きしているのとかカワイイですよね。
それからカート・ラッセルとゴールディ・ホーンの息子であるワイアット・ラッセルも出演していました。『22ジャンプストリート』での演技を見ていたので存在は知っていましたが、観終わるまでまったく気づきませんでしたよー。これはけっこう嬉しかったです。30歳のドラッグ野郎の設定でしたが、実年齢も30歳だったみたいですね。ずっと大学生でいたかったという感覚もこの映画を見ればすごく共感できます。こんな楽しい生活を体験してしまったら年齢を偽ってでも学生になりたい!すごくわかるよその気持ち!
予告では野球のシーンがけっこう強調されていたのですが、ほとんど野球してません(笑)。最後まで野球しないのか…と思っていたら一応は練習シーンもありました。野球の技術を魅せつけるような感じではなく、ここも描かれるのは負けず嫌いなキャラクターたちの人間性。それと新入生歓迎の儀式も残酷で面白かったです(あれ目に当たったら失明しそうで怖いよね…)。
登場人物は皆、半端じゃなく負けず嫌いで、どうしようもないことで喧嘩してしまうのですが、わりとアッサリと仲直りしてしまう。男っていいな~と思えました。グチグチ引きずらずに素直に「ごめんね」って言える関係性がすごく素敵でした。それに対して「気にすんなよ」と普通に返してくれるのもグッときます。初日にちょっとした諍いでギクシャクした関係となっていた新入生も、部室でのイタズラ遊び(ケツを顔につける)を経て、気がついたら仲間の輪に戻っていたりする。変にドラマチックにせずに坦々と流れていく空気感は「これぞ日常!」という感じで、なんかよかったですね。実際はきっとこんなもんですよ。
自分は野球未経験なので「俳優たちの野球経験の有無」はわからないしどうでもよかったです。リンクレーター自身が野球経験者ですし、『がんばれベアーズ』の経験もあるため見せ方は巧かったんじゃないかと思ってます。ちゃんと強豪野球部に見えました。
ジェイクの高校時代のチームメイトも好きでした。彼は野球をやめてしまった人間で、再会するとパンクロッカーになっています。「野球やめちゃったけど俺はサイコーに幸せだぜ!ひゃっほー!」って感じなんですよね。スポーツエリートから脱落してしまった存在もしっかり描いていて、しかしまったく悲観的ではなく「こっちはこっちでサイコーだぜ!」って感じなのが嬉しかったです。ジョックス軍団だけが幸せな世界なのではなく、ナードもスラッカーも皆入学初日までは平等に心をときめかせているのです。
ディスコ、カントリー、パンクと音楽のジャンルにこだわらずどんなノリでも楽しめるというところも素敵でした。何に対しても固執せず自由に楽しんでいるのがすごくよかったです。差別がなく分け隔てなく付き合える人種としてのジョックスは新鮮でした。ディスコもカントリーもパンクだって演劇だって面白そうなものはなんでもやる、こういう柔軟性と適応能力(とくにフィル)には憧れちゃいます。
「バカやってるだけで楽しかったあの頃はもう戻ってこないんだな…」とかそういうこと考えてしまうと少し寂しくなっちゃうかもしれません…。野球しか取り柄のない、まだ何者でもない存在であることに薄々気づいてしまっている不安感。もし将来プロ野球選手になれなかったら、今後どうなっていくんだろう…。そんな葛藤も描かれていましたが、この映画は「そんなこと考えてる暇があったら今を楽しめ!」ってことを言ってるんだと思うんですよねー。悲観的な描写は微塵もないし、もうずーーっと見ていたいような映画でした。描かれるのは8月の終わりの金曜日から月曜日の朝までの3日間。おそらくこんな宴が毎週末、あと4年間も繰り返されていくのでしょう。
何気なく過ごす日常の一瞬一瞬が輝いて見えてしまうのは、見ている誰もがいつかは終わることを知ってしまっているからなんでしょうね…。だからこそダラダラ過ごした無駄な時間が貴重なものに思えてくる。しかし大学生活はこれから始まるのです。これを”まだ4年間もある”か、”たった4年間しかない”と感じるかで微妙に観た人の感想が分かれそうな気もしました。序盤の「時間ならタップリあるさ」というセリフ(最初のナンパの直後)とは対照的に「永くは続かない」というセリフもあって、メッセージを押しつけず、どう思うかを観客の側に委ねていた印象です。
リチャード・リンクレイター監督の映画はけっこう好きでほぼ観てるんですが(2作だけ未見)、これが最高傑作だと思いました。個人的には一番好きです。仲間と過ごした意味のない日常が後々振り返ってみると実はとても貴重な時間だったりするんですよね。何も起こらないし、ただ下ネタを言い合って女の話ばかりしていただけなのに、なぜあんなにも楽しかったのか…。この主人公たちと自分との共通点なんてほとんどありません。むしろ正反対の所謂”リア充”。それなのに見ていて嫉妬心が湧かないのは、やっぱりみんなアホっぽかったからだと思います。変にかっこつけずありのままを曝け出しており、そこが本当に素晴らしい。もしかしたらジョン・ヒューズへのリスペクトもあったのかなー。
SNSもスマホもない時代。テクノロジーの進化によって失われてしまった”人との関わり”を描いていたようです。TVさえも排しているのが象徴的でした。
"開拓すべき場所は自分でみつけるもの "
ラストで目を閉じる主人公はすでにこれを理解していたんじゃないかな。
しかし、そんな良いオチを破壊する超絶アゲアゲなエンドロール!!
キャラクターが入れ代わりながら順番に自己紹介ラップをしていくというもの。ここが一番テンション上がるシーンといってもいいです。もうねー、完全にアホでしょ(笑)。マジで最高。鑑賞後に残ったのは「超絶楽しい」という感情でした。ありがとう、リンクレイターと愉快な仲間たち…。
ホントどうでもいいですが「ヤルかヤラナイの人生なら、俺はヤル人生を選ぶ」っていう『テレクラキャノンボール2013』のキャッチコピーを思い出しました。言ってることは同じだったと思いますよー。ウンコ食わない人生よりウンコ食った人生のほうが素晴らしいに決まってる!年齢は関係ない!!
個人的評価:★★★★★★★★★☆ 90点
2016年11月05日公開/117分/アメリカ/映倫:PG12
原題:EVERYBODY WANTS SOME!!
監督:リチャード・リンクレイター
出演:ブレイク・ジェナー、ゾーイ・ドゥイッチ、グレン・パウエル、タイラー・ホークリン、ライアン・グスマン、ウィル・ブリテン、J・クィントン・ジョンソン、ワイアット・ラッセル、オースティン・アメリオ、テンプル・ベイカー、ターナー・カリーナ、ジャストン・ストリート、フォレスト・ヴィッカリー
原題:EVERYBODY WANTS SOME!!
監督:リチャード・リンクレイター
出演:ブレイク・ジェナー、ゾーイ・ドゥイッチ、グレン・パウエル、タイラー・ホークリン、ライアン・グスマン、ウィル・ブリテン、J・クィントン・ジョンソン、ワイアット・ラッセル、オースティン・アメリオ、テンプル・ベイカー、ターナー・カリーナ、ジャストン・ストリート、フォレスト・ヴィッカリー
いやーもう最高。最初っから最後までもう本当に最高すぎて、自然と顔がニコニコしちゃうような映画でしたー。エンドクレジットが終わる最後の一瞬まで本当に幸せ。「こんなに幸せな映画があんのかよ!」って言いたくなっちゃうくらいに本気で楽しい青春映画。大好きです。面白すぎたので珍しく映画館で二回観ちゃいました。「最高」以外の感想が出そうにないです…。
今回は「ここが好き!ここが最高!」とかそういうことしか書いてません!(毎回そんな感じですが…)
<あらすじ>
1980年夏、ジェイク(ブレイク・ジェナー)は、野球の推薦入学生として大学に通うことになる。本格的に授業がスタートする前の数日間、彼は新しく知り合ったチームメイトたちと共にどんちゃん騒ぎを始める。話題は野球や女子たちのこと、好みの曲や下品なジョークまでといろいろで……。
(以上シネマトゥデイより)
オープニング曲はザ・ナックの『マイ・シャローナ』
主人公の新入生・ジェイクが野球部の寮に転居してくるところから映画は始まります。入部する野球部は全米屈指の強豪チーム。舞台はテキサス。
個性的なチームメイトと共に毎晩ディスコで踊って酒を飲み、カワイイ女の子を口説いて回る。寮に戻るとマリファナ吸ったりゲームをしたりビールを飲んだり…。描かれるのは野球エリートたちのユルい日常。ジェイクが彼らと過ごす新学期の授業が始まるまでの3日間(+15時間)の物語。事件らしい事件はほとんど何も起こりませんし、青春映画特有の「ボクって何?」みたいな葛藤なんかもほぼ描かれません。そんなことよりも、とりあえず遊べ!酒を飲め!ナンパ!セックス!ちんこトーク!みたいな…最高におバカな内容。
「女の子とヤりたい!」
そんなリアルな若者の願望を濃縮したような「これぞ青春」な青春映画。人生で最も輝いていたあの頃…。永くは続かないからこそ、今という一瞬を全力で楽しめ!ってことなんだと思います。
所謂リア充が主役ということで、「羨ましいよ!ふざけんな!」と言いたくなるような内容なんですが(ボクにはこんな青春はなかった…)、それでもキャラクターたちにムカつかず、むしろ愛おしくなっちゃうのは、やっぱり皆揃って強烈にアホっぽいからです(笑)。
アメリカのコメディ映画によくあるような底抜けにバカバカしいものではなくて、あくまでも「こんなやついるよな~」とギリギリ思える程度のアホっぽさ。映画で度々描かれてきた鬱屈した青春の悩みなんかよりも「いや、学生時代ってもっとみんなバカやってるでしょ?」という説教臭さゼロの清々しさが素直に楽しかったです。こんなに爽快な青春映画も珍しいんじゃなんでしょうか。青春とはウジウジ悩んで屈折することだ、そう思っている人間にとっては眩しすぎる映画だと思います。
ちゃんとオッパイも映る!(この内容で隠してたらブチ切れてる)
もう序盤から超楽しいんですよねー。車内で繰り広げられる会話の応酬が超おバカ。「ちんこ」という言葉がここまで連呼される映画も珍しいと思います。さらに、そんなしょうもな~い下ネタを真面目に論じていたりするから余計にアホっぽくて最高。初対面の先輩たちに連れ回されるこの感じはどこか懐かしく、何かが起こりそうなワクワク感もビンビン感じました。『ラッパーズ・ディライト』→ナンパ→ちんこトークの流れを見て、「あっ、オレ絶対この映画大好きだ!」と思った人は少なくないハズ!
「マイ・シャローナ」でこの映画のイメージが決定づけられた感じもありました。最初から最後までずーーーっと、女の子大好きッ!なボンクラ感。しかも主役がスクールカーストの頂点に君臨しているジョックス軍団。モテない底辺のオタク野郎なんかは出てきません。あえて排除して描かなかったのだと思います。なぜなら、スポーツという武器を取ってしまえばジョックス軍団も同じ人間で、考えていることは文科系とたいして変わらないのです。型にハマったような典型的な描かれ方はしていませんでした。
野球部の寮での酒とセックスは禁止(しかしアッサリとルールを破る)。
『6才のボクが、大人になるまで。』のボクのその後を描いた続編みたいな予告ですが、どっちかというと空気感は『バッド・チューニング』に近い気がしました。本作の時代設定は『バッド・チューニング』の4年後ですし(これの精神的続編であるという記事もいくつかありました)。リンクレイターの半自伝的内容というだけあって共通するものも多かったです。ケツを叩かれていたあの青年が成長して大学に入学したのだと思うと嬉しくて泣きそうになっちゃいます…。『ビフォア~』シリーズや『バッド・チューニング』のように今回も人生のある時間を一部分だけ切り取ったような話でした。リンクレイター節全開だと思いましたよ!
野球部の面々は皆個性的で愛くるしいヤツばかり。頭の中は「女の子とヤりたい!」という願望と「他人に負けたくない!」という競争心。ティーンの男子にとってセックスしたいのは普通だし当り前。むしろ健全なことに思えます。そんな性的欲求をストレートに描いている感じがして、まったく厭味がなかったし、全員激しくアホっぽい(笑)。見ている間中そこに映る人間たちが心の底から愛おしくなってしまう…。大袈裟に書いているようですが、本当にそんな感じでした。自らの欲望に純粋だからなのか、愛着しか湧きませんでしたよ!
野球の技術的なものなどはあまり描かれません。野球以外のゲームをやっている時間のほうが長いくらいです。とにかく全員が死ぬほど負けず嫌いな性格で、それは野球に限りません。「くだらないゲームにこそ人間の本性が出るのさ」というセリフはまさにその通りだと思いました。トップまで登り詰めるには卓球やデコピンで負けて本気でブチ切れるくらいのハングリーさが必要なのかもしれませんね。強豪校の精神性には説得力がありました。
みんな最高だし大好きなんだけど一番好きなキャラクターはフィンでした。
チンコで心の扉を開いてご満悦なナンパの天才・フィン。憧れるわー。
「若い時は時間を大切にしろ」なんて説教臭いことは言いません。惹き句にもなっていた「後悔するのは、やったことじゃない。やり残したことさ」というようなセリフも、具体的に何をするかというと下着での取っ組み合いだったりするからもう最高。欲望をぎゅうぎゅうに詰め込んだ上にすべてキッチリやってしまっている、にもかかわらず厭な感じがないという奇跡みたいな多幸感に溢れた傑作だと思います。
パーティーはトッド・フィリップスの『プロジェクトX』みたいな盛り上がりよう。下着の女の子たちがツイスターゲームをやっていたり、外では男女で泥んこレスリングが行われる幸せすぎる空間。「あれもこれも全部やりたい」を全部やれちゃう男たち。羨ましいけど憎めない!!!!
あー、羨ましい………羨ましい羨ましい羨ましい!!
80年代(というより70年代!?)の音楽、ファッション、ゲームなども楽しかったです。生きた経験がないのに、なんだか懐かしくなってしまうのが不思議でした。そこまで関係は深くないんだろうけど、この感覚には『ブギーナイツ』を思い出さずにはいられませんでした。
夜が来るまでの退屈な午後も全力で遊ぶチームメイトたち。ゲームはいろいろあって、バスケットボール、ビリヤード、ピンボール、卓球、拳ゲーム(これは超サイコー!)など。何もせず無為に過ごすなんて時間がもったいないだけだ!という感じ。見ていると、まさにその通りとしか思えません。
それから”名古屋撃ち”という翻訳にグッときた。
マリファナを吸っていても対決になっちゃいます。「誰が一息でいっぱい吸えるか~」「大学記録を作ったぜ、エヘヘ」とか、もうなんか可愛らしくて愛おしくなってきます。あと、ここのシーンではリンクレイターらしく(?)宇宙哲学なども語られていて、脱力しながら気持ちよくなっちゃう感じです。
恋愛描写は必要最小限に描いていた印象です。お互いが一瞬で恋に落ちちゃう感じがとてもイイ。よくあるラブコメみたいに無駄なかけひきもないしホントに清々しくて潔い展開でした。ヒロインであるビバリー役のゾーイ・ドゥイッチはリー・トンプソン(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)の娘!!!!(知らなかった~)
電話してる最中にビバリーがずっと落書きしているのとかカワイイですよね。
『恋人たちの予感』を思い出しました(よくある二分割だけど…)。
それからカート・ラッセルとゴールディ・ホーンの息子であるワイアット・ラッセルも出演していました。『22ジャンプストリート』での演技を見ていたので存在は知っていましたが、観終わるまでまったく気づきませんでしたよー。これはけっこう嬉しかったです。30歳のドラッグ野郎の設定でしたが、実年齢も30歳だったみたいですね。ずっと大学生でいたかったという感覚もこの映画を見ればすごく共感できます。こんな楽しい生活を体験してしまったら年齢を偽ってでも学生になりたい!すごくわかるよその気持ち!
予告では野球のシーンがけっこう強調されていたのですが、ほとんど野球してません(笑)。最後まで野球しないのか…と思っていたら一応は練習シーンもありました。野球の技術を魅せつけるような感じではなく、ここも描かれるのは負けず嫌いなキャラクターたちの人間性。それと新入生歓迎の儀式も残酷で面白かったです(あれ目に当たったら失明しそうで怖いよね…)。
登場人物は皆、半端じゃなく負けず嫌いで、どうしようもないことで喧嘩してしまうのですが、わりとアッサリと仲直りしてしまう。男っていいな~と思えました。グチグチ引きずらずに素直に「ごめんね」って言える関係性がすごく素敵でした。それに対して「気にすんなよ」と普通に返してくれるのもグッときます。初日にちょっとした諍いでギクシャクした関係となっていた新入生も、部室でのイタズラ遊び(ケツを顔につける)を経て、気がついたら仲間の輪に戻っていたりする。変にドラマチックにせずに坦々と流れていく空気感は「これぞ日常!」という感じで、なんかよかったですね。実際はきっとこんなもんですよ。
自分は野球未経験なので「俳優たちの野球経験の有無」はわからないしどうでもよかったです。リンクレーター自身が野球経験者ですし、『がんばれベアーズ』の経験もあるため見せ方は巧かったんじゃないかと思ってます。ちゃんと強豪野球部に見えました。
ジェイクの高校時代のチームメイトも好きでした。彼は野球をやめてしまった人間で、再会するとパンクロッカーになっています。「野球やめちゃったけど俺はサイコーに幸せだぜ!ひゃっほー!」って感じなんですよね。スポーツエリートから脱落してしまった存在もしっかり描いていて、しかしまったく悲観的ではなく「こっちはこっちでサイコーだぜ!」って感じなのが嬉しかったです。ジョックス軍団だけが幸せな世界なのではなく、ナードもスラッカーも皆入学初日までは平等に心をときめかせているのです。
ディスコ、カントリー、パンクと音楽のジャンルにこだわらずどんなノリでも楽しめるというところも素敵でした。何に対しても固執せず自由に楽しんでいるのがすごくよかったです。差別がなく分け隔てなく付き合える人種としてのジョックスは新鮮でした。ディスコもカントリーもパンクだって演劇だって面白そうなものはなんでもやる、こういう柔軟性と適応能力(とくにフィル)には憧れちゃいます。
パンクのライブでサークルモッシュ!(若者に混じるオジサン感)
「バカやってるだけで楽しかったあの頃はもう戻ってこないんだな…」とかそういうこと考えてしまうと少し寂しくなっちゃうかもしれません…。野球しか取り柄のない、まだ何者でもない存在であることに薄々気づいてしまっている不安感。もし将来プロ野球選手になれなかったら、今後どうなっていくんだろう…。そんな葛藤も描かれていましたが、この映画は「そんなこと考えてる暇があったら今を楽しめ!」ってことを言ってるんだと思うんですよねー。悲観的な描写は微塵もないし、もうずーーっと見ていたいような映画でした。描かれるのは8月の終わりの金曜日から月曜日の朝までの3日間。おそらくこんな宴が毎週末、あと4年間も繰り返されていくのでしょう。
何気なく過ごす日常の一瞬一瞬が輝いて見えてしまうのは、見ている誰もがいつかは終わることを知ってしまっているからなんでしょうね…。だからこそダラダラ過ごした無駄な時間が貴重なものに思えてくる。しかし大学生活はこれから始まるのです。これを”まだ4年間もある”か、”たった4年間しかない”と感じるかで微妙に観た人の感想が分かれそうな気もしました。序盤の「時間ならタップリあるさ」というセリフ(最初のナンパの直後)とは対照的に「永くは続かない」というセリフもあって、メッセージを押しつけず、どう思うかを観客の側に委ねていた印象です。
リチャード・リンクレイター監督の映画はけっこう好きでほぼ観てるんですが(2作だけ未見)、これが最高傑作だと思いました。個人的には一番好きです。仲間と過ごした意味のない日常が後々振り返ってみると実はとても貴重な時間だったりするんですよね。何も起こらないし、ただ下ネタを言い合って女の話ばかりしていただけなのに、なぜあんなにも楽しかったのか…。この主人公たちと自分との共通点なんてほとんどありません。むしろ正反対の所謂”リア充”。それなのに見ていて嫉妬心が湧かないのは、やっぱりみんなアホっぽかったからだと思います。変にかっこつけずありのままを曝け出しており、そこが本当に素晴らしい。もしかしたらジョン・ヒューズへのリスペクトもあったのかなー。
SNSもスマホもない時代。テクノロジーの進化によって失われてしまった”人との関わり”を描いていたようです。TVさえも排しているのが象徴的でした。
"開拓すべき場所は自分でみつけるもの "
ラストで目を閉じる主人公はすでにこれを理解していたんじゃないかな。
しかし、そんな良いオチを破壊する超絶アゲアゲなエンドロール!!
キャラクターが入れ代わりながら順番に自己紹介ラップをしていくというもの。ここが一番テンション上がるシーンといってもいいです。もうねー、完全にアホでしょ(笑)。マジで最高。鑑賞後に残ったのは「超絶楽しい」という感情でした。ありがとう、リンクレイターと愉快な仲間たち…。
おしまい
今を楽しめ!!!!どうせそのうちみんな死ぬ!!!!
↑予告
ホントどうでもいいですが「ヤルかヤラナイの人生なら、俺はヤル人生を選ぶ」っていう『テレクラキャノンボール2013』のキャッチコピーを思い出しました。言ってることは同じだったと思いますよー。ウンコ食わない人生よりウンコ食った人生のほうが素晴らしいに決まってる!年齢は関係ない!!