彼らが選んだ―20年後の「未来」。
原作未読の感想です。
個人的評価:★★★★★★☆☆☆☆ 60点
T2 TRAINSPOTTING
2017年04月08日公開/117分/イギリス/映倫:R15+
原題:T2 Trainspotting
監督:ダニー・ボイル
出演:ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー、ロバート・カーライル、ケリー・マクドナルド、シャーリー・ヘンダーソン、ジェームズ・コスモ、アンジェラ・ネディヤルコーヴァ、アーヴィン・ウェルシュ、アイリーン・ニコラス、ポーリーン・リンチ

名作『トレインスポッティング』の続編作品。めちゃくちゃ大ファンってわけでもないんですが、中学生くらいの頃にレンタルで洋画を観始めた時期に観た映画なので多少は思い入れもあって公開初日に観てきました。とりあえず客席はすごく混んでましたねー。やっぱり人気あるのかな。

なんか文句ばっかりの感想になっちゃったのでファンの方は読まないで!

T1 TRAINSPOTTING

あらすじ

スコットランド、エディンバラ。大金を持ち逃げし20年ぶりにオランダからこの地に舞い戻ってきたマーク・レントン(ユアン・マクレガー)。表向きはパブを経営しながら、売春、ゆすりを稼業とするシック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー)。家族に愛想を尽かされ、孤独に絶望しているスパッド(ユエン・ブレムナー)。刑務所に服役中のベグビー(ロバート・カーライル)。想像通り?モノ分かりの良い大人になれずに荒んだ人生を疾走する彼らの再会、そして彼らが選ぶ未来とは――。
(以上公式サイトより)

T2 TRAINSPOTTING10

感想

嬉しさと悲しさが半々くらいでかなり微妙な気持ちになりました。序盤は本当に懐かしい友人と再会した感覚で「うおおおおお」って感じで少し泣きそうになったりもしたんですが…当り前だけど演者はみんな20年の歳を取っていて、ヨボヨボまではいかないけど若干枯れていて、しかし中身はあの頃のまんま。最終的にはなんだか絶望的な気持ちになって終わりました…。

前作はウンコ撒き散らしたり赤子の死体が首回したり主人公が便器に潜ったりする素敵な薬中映画でした。なので、T1に比べちゃうとそこまで過激な描写はなかったと思いますT2。個人的にトレスポに求めていたものはほとんどなくてオッサンの同窓会ですね。疾走感もほぼなし。モッサリした演出でした。

底辺を這いつくばってなんとか生きてるだけみたいなクズだった彼らは中年のオッサンになっても「ふつうの生活」を実現できず、選択する自由すらもなくなっていき、さらに悲劇的な雰囲気に…。若さが無いためか惨めさが際立って見えました。負のオーラが滲み出てるというか覇気がないというか、笑えない感じに衰えた印象。それが良くもあり悪くもあり…何とも言えず。

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ダニー・ボイルって何かにつけては登場人物を走らせたがるんだよなー!!と思っていたら、今回も冒頭から全力疾走だったので笑いました。12000ポンドを仲間から奪いオランダ・アムステルダムへ逃亡した主人公・レントン。それから20年が経ち、ヘロインはやめたものの今度はエンドルフィン中毒のためにジムで毎日ランニング漬けの日々。昔は路上を走って車にぶつかっていた彼ですが、今回はジムのルームランナーの上で快適にランニング。

そんなある日、心臓発作のために倒れてしまう…。

ここの対比は上手いと思いました。同じことをしていても過去と現在じゃ事情がまったく違い、長い年月が経たことも感じられたし、見せ方も良かった。

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勤めている会社が合併するため学歴のない自分のリストラを確信し、オランダで結婚したものの妻とは不仲…。そんな時に体がダメになり、もう何もかもが絶不調なレントン。そして20年ぶりに故郷のエディンバラへ帰ってくるのだが母親は亡くなっており、人生のドン底に…!

そんな主人公が昔の仲間と再会し、謝罪したり金を返したり強盗したりランニングしたりしながら当時の友情とか生きる希望を取り戻す(?)までを描いた群像劇だったと思います。レントンが選んだものはアディダスだった。

T1ではレントンの心情しか語られませんでしたが、今回は4人が対等に扱われている感じがしました。なので、それぞれのナレーションも多いです。話の軸となるのはレントンとスパッドの関係性で、最終的には過去に仲間を裏切った報いとして命を狙われるハメになりベグビーとの対決になっていきます。実質の主人公はスパッド(禿げてた!)と言ってもいいのかも。

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密閉嘔吐描写はサイコー!!

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懐古主義的なもんをバンバン感じる映画でした。

T1の回想シーンが多すぎてどうなの?と思いましたよ…。しかもどれも描き方が中途半端な上に要所要所にしつこく入れこんでくる感じ。ファン向けに作るのならそういうの排除しても全然伝わると思うし、あくまでも万人に向けての作品だからこうなってんだろうけど説明セリフの多さには興醒め。そういうのが無くてもいきなり話を始められるのが続編映画の魅力だとも思うんですが、「前回のおさらい」が長い上に細切れで…正直しんどかった。

親切といえば親切なんだけど、過剰な接待は嫌いです。

今を楽しむために映画館まで金払って来てんのに「昔は良かったよね、現在は最悪だけどさー☆」とか言われてもなあ(画的に)。監督自身がトレスポの大ファンってのは理解できるしオマージュの数々は嬉しいんだけど「T1サイコーだったよね~!」みたいな映像はもっと削ってもよかった気がします。

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「昔は良かったなぁ…」ってよりは「昔はクソだった、でも今のほうがもっとクソだ!」って感じの内容かもしれない。どっちもあんまり変わんないけど。

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テーマは前作と変わらず「人生を選べ」。けど、結局はクズが何を選んだって行き着くところは同じなんですよねー。なんかもう死にたくなる…。

セリフでベラベラ「みんな何かの中毒だ」的なこと言うわりにはしっかり依存を見せてくれる場面が少ないのも気になりました。ドラッグとかセックスとか酒とか暴力とか何でもいいんだけど、要素としては提示するのに描き足りなかったと思います。ヘロインも1シーンだけ(だったと思うけど自信ない…)。なので、鑑賞後に食い足りなさが残りました。唯一ガッツリと描いてるのは「懐古への依存」なんだけど…。

つまり一番描きたいのはそこで、ドラッグは添え物なのかも。

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SNSに批判的な意見を投げつけといて若者文化でちゃっかり楽しんじゃってんのもどうかと思いました…。過去を美化しつつ今も楽しむって、どっちつかずで中途半端だし言動と行動が微妙にブレてる部分もなくはなかったような…。

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クズだらけの主演陣とは違って唯一まともな大人に成長していたケリー・マクドナルドの登場は嬉しかったです。”世界一汚いトイレ”が一瞬映って喜ぶのと同じ感覚の単なるファンサービスにも思えましたが、素直に嬉しかったなー。結局テンション上がったシーンのほとんどが前作T1の引用というかオマージュ的なやつだった気もしてきました…。T2のオリジナル部分にはそこまで魅力を感じなかったというか、むしろ悲しい気持ちになることが多かった…。脚本があんまり良くないのかも。ジョン・ホッジは苦手。

ゴミの山はしつこいし、これ見よがしな象徴はあんまり好きじゃない。

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ぶっちゃけベグビーに対しては不満タラタラです。ぼくの好きなベグビーではなかったです。T1の時のような手のつけようのないイカれた奴みたいな印象はあまり感じませんでした。激しく老いたし、丸くなった気がします。脱獄方法なんかは普通に気が狂ってて面白かったんだけど。出所後はキチガイっぽさが抑えられてて、老いを感じさせるような仕草もありました。

インポテンツでバイアグラに頼るようなベグビーは見たくなかった。オカマが相手でもギンギンにそそり立つのがベグビーなのに!

突然ブチ切れる変な奴だった頃のピリピリした空気感が好きだっただけに辛い過去を明かされるのはそんなに嬉しいことでもありませんでした…。その瞬間から人間味が増してしまい、トランクに閉じこめられたままフェイドアウトってのも哀れに見えました。仲間への報復は果たせないし、スパッドには甘々だし、息子への感動するような接し方も生ぬるく思えました…。レントンからのベグビーへの想いも響かなかったし泣きたくなった。「いや原作がこうだからしょうがない!」とか言われたら何も言い返せないけど。

ただ、ロバート・カーライルを久々に映画館で見れたのは嬉しかったです。

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55歳だからしょうがないと思うけど、だいぶ太りましたよねー。

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終盤はもう気持ち離れすぎてて全くノレず…。いかにもな感動エンディングでWolf Aliceの『Silk』なんかが流れてるのもホントにもう最悪で…最後の最後にレントンが自室でレコードをかけて『ラスト・フォー・ライフ』バーン!!って、ズルすぎ。途中イントロだけ寸止めで聴かせたりしていたので、「いつ流れるんだろうな~」と思っていたらラストでした。

しかもT1で禁断症状が出た時の演出がロングバージョンで延々と…。レントンはドラッグやらずにトリップ状態(?)に突入して、そこに過去の映像なんかカブせてくるから、もう卑怯。ダニー・ボイルは卑怯なやつ。イギー・ポップが流れれば問答無用にテンション上がるしさあ…。やっぱりズルい!

個人的には、踊り狂うにしてもせめて静脈にキツいヘロインを一発ブチ込んでほしかった…。このラストが「俺にとっては郷愁こそが麻薬だッ!」とかいう意味だったらマジで最低(イギー・ポップ=快楽=麻薬なら納得するかも)。

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T3はさすがにないと思うけど4人とも長生きしてください。

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「トレインスポッティング(1996)って面白かったんだな!」ということを再認識させられたので、前作を引き立てる作品としては良い映画なのかもしれません。T2のおかげでT1が以前よりさらに楽しめるような作りにもなってると思います、たぶん。

いろいろ不満もあるけど、みんな元気に生きてたし「まあいいか」という気分にもなりましたね。ぶっちゃけ予告の時点で感動して感涙してしまったので、その分本編に期待しすぎたんです…。全体的に展開は面白かったしスパッドの隠れた才能にはビックリしましたよ。演出と劇伴はダサいと思う部分もあったけど、むしろそこが魅力でもあったりするので、うーん…すごくどっちつかずな感想になりました、すいません。当時とセンスは変わってないと思う。

ということで、「人生を選べ」とかホントどうでもいいし深く思い悩んだって結果は同じ。あと、青春時代なんかクソでいい。ありがたがって懐古するのはクズのやることだッ!…と、アーヴィン・ウェルシュが言っているかどうかは分かりませんが、個人的な解釈はそんな感じ。

Dazed and Confused (1)
Dazed and Confused (2)

『バッド・チューニング』は人生。

porno

原作の『ポルノ』はポルノ映画製作でひとヤマあてようと企む話らしいです。どの程度の脚色してんのかも気になりました。国内版は絶版っぽいですが…。読みたいなー。気になる。


↑予告