世界最大級の「人災」と言われるこの事故はなぜ起こったのか?
施設内に残された126人の運命は?
個人的評価:★★★★★★★☆☆☆ 70点
Deepwater Horizon
2017年04月21日公開/107分/アメリカ/映倫:G
原題:DEEPWATER HORIZON
監督:ピーター・バーグ
出演:マーク・ウォールバーグ、カート・ラッセル、ジョン・マルコヴィッチ、ジーナ・ロドリゲス、ディラン・オブライエン、ケイト・ハドソン、ダグラス・M・グリフィン、ジェームズ・デュモン、ジョー・クレスト、ブラッド・リーランド、J・D・エヴァーモア、イーサン・サプリー、トレイス・アドキンス、ジャストン・ストリート

当時ニュースで見た記憶はあるんですが「なんか海面に石油が漂ってたな…」程度なので、まあ、詳細はほとんど何も知らずに観た感じです。

ここが好きとか嫌いとかダラダラ書いてるだけの感想文。ネタバレしてます!

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あらすじ

メキシコ湾沖80キロメートルにある石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」で、海底油田からの逆流によって上昇した天然ガスへの引火が原因で大爆発が発生。現場で働いていた作業員126人が施設内で足止めを食らう。事故により多数の行方不明者と負傷者を出す大惨事となり……。
(以上シネマトゥデイより)

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感想

いやー、めちゃくちゃ面白かったです。好き。2010年にメキシコ湾で起きた原油流出事故を元にした実録モノ。「なぜこんな事態になったのか?」という惨事に至るまでの過程と、そこからの生還を描いた話。

アメリカ史上最悪の人災らしいですね(よく知らないけど)。

実際に起きた事件ですし人も亡くなっているので「面白い」とか「楽しい」とか不謹慎に思われそうだから若干言いいずらい気もするけど(まあそんな映画いっぱいあるし気にしなくてもいいか)、最初っから最後まで退屈せずに楽しめましたよ。上映時間もちょうどよかったと思います。長さは感じなかった。

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最大の見せ場は、事故が起きてバーニングする瞬間。もう観る前から大惨事が起こってしまうのは知っちゃってるんですが「いったいいつ起こるのか!?」って部分でかなりワクワクできた気がします。ここの部分でわりと長めに引っ張っているんで、正直ちょっと前半は間延びしている印象もありました。けど個人的には「いい焦らし」だったなと(笑)。事故が起こりそうで起こらなかったりするんで、そのへんの焦らし加減が好きでした。今か今かと待ち続けて「来るぞ来るぞ………キターーー!!」って感じ。大噴射!大爆発!最高!!こういう部分もパニック映画の醍醐味なんじゃないかなーって思います。

『バトルシップ』みたいな荒唐無稽な展開よりは、事実を忠実に再現することを優先していた印象です。前作『ローン・サバイバー』に続いて硬派な作り。多人数をガシガシ捌いて魅せていく演出は『キングダム/見えざる敵』なんかも思い出しました。本作も脚本は同じマシュー・マイケル・カーナハン。

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上映時間ちょうど半分くらいで作業員たちが事態に気づき、その後30分ほどはよく見る災害現場の地獄絵図。けっこう血まみれだったし、ちゃんとしてた。痛そうな足も見せてくれたし満足です。映倫Gだしグロってほどではない…。起承転結がハッキリしていて前半のマッタリムードから後半への落差が激しいのも効果的で、それが悲惨な状況を際立たせていたと思います。

普通のパニック映画だったらもっと早めに何か起こりそうなもんですが一時間くらいはトラブルが発生しません。みっちり人間関係を描きつつ丁寧に状況を説明してました。ただ、キャラの掘り下げはあまりなく、主人公に焦点を当てすぎずに絶妙な距離感を保ってる感じ(娘とかはどうでもいい存在だった)。

…なのだけどイマイチ仕事内容が理解できない部分もあったりして、専門用語にも引っかかったり…。リアルな描写を求めるとそういうものも必要だったんだろうし、たぶん自分の理解力不足のためだと思いますが…。

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映像は大迫力で最高。爆発も噴射も炎の燃え方も好みでしたー。巨大セットを使って撮影したそうで、事故現場の様子は若干わかりにくい部分もあったけど臨場感は強く感じました。なので、炎が燃えているシーンは興奮しっぱなし。痛そうだし熱そうだし、デカいセット使ってるからか質感の説得力もありました。あと、CGも良かった。

前半の演出はわりと淡々としていて、それに対して後半は対照的な感じ。全部が全部ってことでもないと思うけど大筋は実話だと思うので、ストーリーに対してはとくに何も言うことなし。変にドラマチックになりすぎないし、脚本は良かったんじゃないかと思います。

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序盤の家庭風景も楽しかったです。その後に起こる事故の大まかな状況を子供が説明してくれるのが最高で、しかも子供も理解できる分かりやすさ(振ったコーラ缶に穴を開けて噴射!!)。ここの和やかムードと実際に事故が起きた際の絶望具合にギャップがあったのも良かったと思います。「これから起こることを何も知らずに…」的なアバンタイトルによくあるやつ。

暗喩的なんだけど、直球すぎてギャグにも思えるシーンでした。不要といえば不要だし削っても成立しそうな部分なんですが、個人的には好き。なんとなくサービス精神のようなものを感じたので。

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人災の原因となる男はBP社の管理職員ヴィドリン。安全管理を怠るクソ野郎。演じているのはジョン・マルコヴィッチでした。こういう悪い役やるとホントに悪い顔にしか見えないし、超ハマり役。すごくイイ。

過剰な描き方とは思わなかったです。けっこう自然。

掘削作業が終わる前に必要なテストの担当者を独断で帰してしまい、登場から印象はあんまり良くない…。工期の遅れを取り戻そうと確認作業を疎かにしてしまうダメ責任者。さらに、セメントの強度確認テストでは異常値が出てんのに「大丈夫だろ、たぶん」って感じで作業を進めてしまい、その結果、仕事場が全部ブッ飛ぶ大惨事に…。

ヤバい事態になってからは、ほとんど喋らず押し黙ってるのがなんかリアルで良かったです。利益のために部下の命を危険に曝しといて、いざ危険な状況に追い込まれると自分の命が一番大切!って…もう最悪。救命ボートに乗り込んでいく姿には腹立ちましたよー。

事件の後、彼は殺人罪で起訴されたそうです。スッキリしたー。

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で、カート・ラッセルは今回もかっこよかった。

風呂場で全裸のままブッ飛ばされて気を失うんだけど、目覚めたら視覚がダメになってて全身傷だらけ。足にはガラス片がブッ刺さってるし。それでもノソノソ服を着て立ち上がり、危機を食い止めようと奔走する超カッコイイ上司。「やることやるぞ」って感じの姿にヤラれましたー。弱音も一切吐かないし。全裸で血まみれになる状況も個人的には好きです、無防備で。

そしてマルコヴィッチと向かい合って対峙する場面がもう最高。言葉は要らないし表情だけで言わんとすることがガンガン伝わってくる感じ。二人とも名優だなーと改めて思いました。すごい。カートは7年連続で安全賞を受賞しているスゴイ男という設定なんですが、電話対応で判断ミスをしちゃったのは気が緩んでたからなのかな…。タイミングも悪かったのかも。

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個人的に贔屓のデブ(イーサン・サプリー)が出演してんのも嬉しかった!!マルコヴィッチにせっつかれてしょうがなく連絡を取り不安を抱えたまま作業を行い、最終的に亡くなってしまう悲しい人…。終盤までは誰が生きてて誰が死んだのかあまり分からず、最後のほうで死んでたことに気づき…少し虚しい気持ちになりました…。死にざまが見たかった!

上司に反抗できない感じとか、生命の危険が迫っている緊急事態でも「権限が無いからできない!」とか、なんだか厭な上下関係なんだけど職場で日常的に目にする光景って感じでしたねー。イヤな上司ってホントにイヤだなー。

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個人的に胸アツだったのは、ヒロインっぽくない女(ジーナ・ロドリゲス)が終盤になって突然ヒロイン的な立場にポジションを変える展開とか。「跳ぶか死ぬか、どちらか選べ!」みたいな究極の選択も面白かったし急にヒーロー感がグングン増していく主人公も良かった。テンション上がりましたよ。

ここは「さすがバトルシップの監督だッ!」という感じで好き。

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「予想できない驚きの展開」とかはこれといってないんで大筋はけっこう普通なんだけど、実話ベースの内容だしそのへんは気にもなりませんでしたねー。ラストで裁判を受ける流れになるのですが、そこは案外アッサリ描き、最後は「現在の彼らはどうなったのか?」というもの。オーソドックスで手堅い作りだったなーと思いました。泣き叫ぶ遺族に胸ぐら掴まれる主人公とか…。

ネクタイの色が施設で最悪の事態が起こったときに点灯するマゼンタの警告灯と同じ縁起の悪い色…とか暗喩的なこともいろいろやってたようです。観てる間はちっとも気づかなかったけど。

ということで良かったです。こういう人災をしっかり娯楽にしちゃうアメリカって国はやっぱりすごいなーとも思いました。邦題は、実際に観てみたら本当にオーシャンでバーニングしてるような内容だったので、良いんじゃないの!って感じ。

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オチは実話ベース映画のお約束、ご本人さんの写真が登場パターン。

結果的には、現場にいた126人のうち11人の方々が亡くなったそうです。爆発とか噴射の規模を考えると奇跡的なのかもしれません…。正直もっといっぱい死んでんのかと思ってたんで驚きました。

明確に死にざまを描く描写はなかったと思います。まあ、けど、状況的に人が死んでてもおかしくないのは一目瞭然だし、実際に起こった人災を描いてるんでそのあたりの配慮は必要だったのかなと…。物足りないといえば物足りない気もするけどー。うーん。

ともかく、次のピーター・バーグは『パトリオット・デイ』!楽しみ!

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機械の説明書は何が一番重要かって、わかりやすいこと!


↑予告