悪ガキにパトカーを盗まれて焦りまくる悪徳保安官の物語。『狼の死刑宣告』以来の魅力全開なベーコン映画、最高だ!
個人的評価:★★★★★★★★★☆
CopCar
2016年04月09日公開/88分/アメリカ/映倫:PG12
原題:COP CAR
監督:ジョン・ワッツ
出演:ケヴィン・ベーコン、ジェームズ・フリードソン=ジャクソン、ヘイズ・ウェルフォード、シェー・ウィガム

<あらすじ>
家出中の少年トラヴィス(ジェームズ・フリードソン=ジャクソン)とハリソン(ヘイズ・ウェルフォード)は野原を歩いていたとき、無人のパトカーを見つける。二人は面白半分に乗り回し、車内で見つけた銃や防弾チョッキで遊んでいたところ、車を盗まれたことに気付いた持ち主の保安官ミッチ・クレッツァー(ケヴィン・ベーコン)から無線の警告が入る。その異様な口調に驚いた少年たちは、やがて車のトランクに隠された秘密に気付き……。
(以上シネマトゥデイより)

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いやー、もうメチャクチャ好きですよ、この小規模感!
とくに派手な展開もなく、「盗んだパトカー返せ!」というワンシュチュエーションで最後まで描ききってた印象です。
演出も撮り方も良かったんですけど、個人的には音楽の使い方なんか超好みでした。一見するとほのぼのして見えるシーンなんかもノイズ交じりのBGMが不安な気分にさせてくれるのです。突然何か恐ろしいことが起こりそうな雰囲気が常に漂っており、にも関わらず笑える滑稽さもあって、とにかく最高だ!

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写真左・ハリソン、右・トラヴィス

冒頭のシーンは少年二人が卑猥な言葉遊び(「ちんこ」「おっぱい」「うんこ」など)に興じながらだだっ広い草原を歩いているというもの。
田舎町のどうしようもない退屈さが伝わってきましたよ。
そんなとき、森の中でパトカー(コップ・カー)を発見するのです。
二人は車までほふく前進で近づき、石を投げて攻撃。周囲を警戒しながら少しずつ近づいていきます。中には誰も乗っていない様子。ドアにも鍵はかかっていない。二人はとりあえず車に乗りこみ運転ごっこ。そんなことをして騒いで遊んでいると、偶然にも車のキーを発見してしまう!
ということで実際に運転してみることに…。
「運転のやり方はマリオ・カートで覚えたからバッチリだ!」

ここはテンションの上がり具合が最高でした!
重要なシーンなので15分近くたっぷり使って少年たちがパトカーを盗むシーンを描いています。無邪気でほのぼのした雰囲気なのですが、いつ持ち主が現れるかわからない緊張感がずっとありました。しかも盗むのは警察の車。
ケヴィン・ベーコン登場までの引っ張り方がすごく良かった。

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そして、ベーコン登場。ここだけは時系列が前後しています。
ベーコンは死体を埋めるために森へ来て、作業に励んでいる間に少年たちに車を奪われてしまったのです。そのことに気づいたベーコンのリアクションが情けなくてすごくイイ!
ブチ切れたりはせず、「ク~、困ったなあ…」という感じ。
車のトランクにはまだもうひとり人間が入ったままだったのです。

とりあえず警察の指令室に電話し、パトカーの無線から連絡がないか確認。その後、車を追いかけるためタンクトップで大きなカバンを抱えて全力疾走!
超カッコ悪いんですけど、面白かったですよ。
あたふたしてて可愛いんです!(ヒゲのオッサンですが)
ベーコンが焦れば焦るほど面白くなる映画でしたよ。

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いろいろ好きなシーンあったんですが、一番好きなのはここ。
パトカーを奪われたベーコンが、知らない誰かの車を盗むシーン。

外から車の窓ガラスに両手を突っ張らせてぎゅうぎゅうやってるから何やってんのかと思ったら、窓を下に引き下げてたんですね。そして僅かに開いた隙間から靴紐を垂らしてドアのロックを解除しようとするのです。
クールな犯罪映画だったらこんなシーンもスマートに魅せちゃうと思うんですが、ここはじっくり面白く撮っています。
窓ガラスをあっさり割っちゃわないところがとてもイイ!
なかなか成功しないのでベーコンの鬱憤も溜まっていきます。ブツブツ独り言を言いながら、近所の犬に吠えられて焦りまくるベーコン。
結局三度目の挑戦でやっと開くんですけど、ここのドキドキ&いらいら感は本当にサイコーだし、とにかくもうケヴィン・ベーコンが可愛すぎます。胸がときめきましたよ。ちょっとしつこいところが良かったです。

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そうして他人の車を盗んで一旦家に戻るベーコン。帰宅すると入手したヤクを始末したりヤクでラリったりと大忙し。パトカーに無線で呼びかけるが応答はない…。

一方その頃、少年たちはパトカーを放置して、銃で遊ぶのに夢中。しかし、しばらくしてトランクの中の物音に気づき、ついには開けてしまいます。中には血まみれで縛られたオッサン(シェー・ウィガム)が入ってました。二人で会議した結果、「良い人そう」ということで彼を救ってあげるのですが…。

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もちろん男は極悪人。
自由にした途端に銃を奪われ少年たちは人質にされてしまいます。パトカーの後部座席に監禁され、男の復讐にうまく利用されてしまうのです。

まずは無線でベーコンをおびき寄せることに…。
少年からの応答にベーコンは大喜び。ここも超かわいい。
萌えなんて言葉は大嫌いですが、完全にベーコン萌え映画。

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本作で最も意外性のある人物はこのオバサンでした。
少年たちは陽気に車をブッ飛ばして、彼女とすれ違います。
幼い子供が危険運転をしていたということ、そして自分を危険に晒した…ということに想像以上にブチ切れており、警察に通報しただけじゃ彼女はイライラが治まりません。
しかも警察には頭がオカシイ人扱いされてしまい…結局は子供たちに説教しに現場へ向かったために頭をふっ飛ばされて死んじゃうんですね!
彼女自身から巻き込まれていって死んだ感じなので、不謹慎ですが面白かったです。

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その後、衝撃的な銃撃戦の末に大人たちは三人とも倒れてしまいます。

後部座席に監禁された少年二人は脱出するために銃で窓を割ろうとするのですが、銃の撃ち方がわからない。何度も試すが銃を撃てず、しょうがなく銃身を叩きつけて窓を割ることに…。そうしている間に銃の安全装置が外れます。
このやりとりを見てて思ったのは「この狭い空間で銃撃ったら跳弾が恐いな…」ってことだったんですが、見事にそういう展開に!
放った銃弾で窓は割れたものの、跳ね返ってきた銃弾でトラヴィスが腹に重傷を負ってしまいます。窓が開いた瞬間にハリソンは外へ駆けだすが、トラヴィスの呼び止める声がして…。

ここのシーンすごく良かったですよ!!
撮り方も良いし、ハリソンの表情も良い。「防弾チョッキを着てれば良かったのに」というセリフもすごく良い。っていうかただ好きなだけなんですが、心にきました。序盤の無邪気な銃遊びがここに影響してきたりします。

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ラストはハリソンが親友・トラヴィスを助けるためにコップ・カーで激走!
銃で撃たれたけどやっぱり死んでなかったベーコンもむっくり起き上がり、シェー・ウィガムの車に乗って追いかけてきます。さすがベーコン。
それから繰り広げられるのは、暗くて地味なカーチェイス。
ベーコンの最後のセリフは、「おれのコップ・カーだぞ!」。
車返せよ!ってところは最初から一貫しており、追いかけまくる展開は『激突!』っぽくもありました。

ハリソンは中盤に「お前遅いよ」とトラヴィスにバカにされたりしていたのですが、最後には目標速度に到達し、少年から男になるのです。それにこれが自分を罵った親友のためなので本当に泣けてくる。タイトルクレジットのカラーリングがパトカーランプの色だったことには、ラストになって気がついた感じです。ここでの余韻も良かった!

そしてベーコンは無惨にも事故ってしまい、少年たちは逃げ切るのでしたー。

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監督は『クラウン』を撮ったジョン・ワッツ。なので今回もホラー演出が強烈なのかと思ったんですが、恐怖よりも笑いのほうを強く感じました。
決してコメディではないのですが、主役の保安官は笑わずにはいられない滑稽さ。やはりこれは演じているのがベーコンだからでしょうか。狂気で突っ走っても良さそうな内容なのに、鬱陶しい状況に対面するたびに「もう勘弁してくれよー」な表情に見えてくる主人公。なんとなく「コップ・カー 第一話」って感じで物語の序章のみを88分に収めたような感じもしました。
足りないと言えば足りないのですが…でも、そこがイイ!

結局ベーコンはラストでデカい牛に衝突して足止めを食いますが、あれで死んだとも思えない。何か今後も話が続きそうなワクワク感も残しつつ、少年の小さな成長を描いて終わっていった印象です。

もし主演がケヴィン・ベーコンじゃなかったらB級映画というジャンルに括られちゃう作品かも知れません。少年たちの家庭状況や警察の指令室の描写なんかも盛り込んで120分程度の尺にすれば、所謂「人間ドラマ」の重みも増したんでしょうけど…そんなの要らないよ!ってことで個人的には最高の映画!

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将来有望そうな若手俳優たちでしたよ。