カンヌ国際映画祭で賛否両論の大論争を巻き起こした問題作。
ギャロ「人を楽しませようという気はない、俺自身が楽しむためだよ」

個人的評価:★★★★★☆☆☆☆☆
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2003年11月22日公開/93分/アメリカ・フランス・日本/映倫:R15
原題:THE BROWN BUNNY
監督・脚本・製作・撮影・編集・衣装・メイク・主演:ヴィンセント・ギャロ
出演:ヴィンセント・ギャロ/クロエ・セヴィニー

<あらすじ>
かつての恋人デイジー(クロエ・セヴィニー)に思いを馳せながら、次のレース地を目指してアメリカを横断するバイクレーサー、バド(ヴィンセント・ギャロ)。やがて、彼は目的地カリフォルニアでデイジーと再会するが……。
(以上シネマトゥデイより)

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カンヌで未完成版を上映し大ブーイングで迎えられたという本作。
DVD鑑賞ですが、本編よりもコメンタリーのほうが断然面白かったです。
なので、本編+コメンタリーの感想になります。

コメンタリーは初っ端からギャロがネガティブ全開で最高でした。
「俺の顔って醜いだろ」「ネットで叩かれまくって凹んだ」等々。収録時はちょうど二日前に親友のジョニー・ラモーンズが死亡して落ちこんでいたそうです。

それから、要所要所に入るカンヌへの恨み辛み。
未完成版を上映したのには理由があり、日本の出資者が出品してくれと頼むので(本作は100パーの日本出資)、しょうがなくそれを許諾したと。
その結果、ブーイングの嵐となり、開始10分で観客の大半が退出。
途中からは映画評論家のロジャー・エイバートが劇場で歌いだす事態に発展。

ギャロ「でも、服をたくさん貰えたからカンヌへ行って良かったよ」

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この印象的な塩平原での撮影中、迷子になってビビったギャロ。

前作『バッファロー'66』はメチャクチャ好きだったのですが(拉致した女・クリスティーナ・リッチが主人公を愛してくれる夢のような話)、本作は退屈でした。
道中はひたすら気怠く、伏線も何もないし、オチは予想できるもの。
風景も、感動するほど美しいものではありません。
一応ロードムービーではありますが、ドラマが無いのが致命的。
主人公は『バッファロー'66』と同じように人を愛せない男であり、結局最後までそのまま終わってしまいます。しかも死んだ昔の女を性欲処理の道具のように扱い、口内射精して女を消してしまうという最悪の展開。終盤の描写は過激でしたが、そこへ至るまでのドラマがないので(ショッキングではありましたけど)感動はありません。

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主人公はレーサー!

出来はともかくとしてほとんどの作業をヴィンセント・ギャロ一人で行い、あとは少人数のスタッフのみで撮影を敢行など、超低予算でこんな作品を撮ってしまった意気込みだけは感じます。そこの部分を「独りよがりなワガママ」と感じる人もいるのか知りませんけど、個人的には好意的。
けれど、そんなのは作品の面白さとは別問題なので、本作は、まあ、ツマラナイんですけど、嫌いにはなれないのです…。すごい微妙な気持ちになりましたー。
主演するのなら、せめて撮影くらいは誰かに任せればいいのに、「誰も信用できない」と常にモニターを見ながら自撮り撮影とか…。
なんかちょっと泣けるんですよねー、しかも一生懸命撮った作品が大駄作!
コメンタリー聞いてると、なんとなくドキュメンタリーに見えてくるから不思議。

ここからは旅で出会った女たちを適当に紹介しながら感想書いていきます。

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<ヴァイオレット>
旅の初めに出会う女。
出会う女性の名は、みんな花の名前。
妻が花の名前だったから、それを思い出して惹かれていくのでしょうか。

ヴァイオレットの役は当初キルスティン・ダンストだったそうです。
しかし、それがその後ウィノナ・ライダーという話になり…。
結局はガソリンスタンド近くの町に落ちてた素人をキャスティング!
エージェントとの交渉が面倒で大女優たちを断念したギャロ。
「スパイダーガールや万引き少女を起用しなくてよかった」
…ってことですが、起用した少女への愚痴もしっかり吐いてましたよ。

しかも、この少女は「一緒に旅に出よう」とギャロがしつこく誘うので嫌々ながら車に乗りこんだのに、途中で何故か置いてけぼりを喰らうカワイソウな役。

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<リリー>
寂しそうに広場のベンチに座っていた女。
頭を撫でて「大丈夫?」と声をかけたら、何故か濃厚なキスシーンに突入。
よくわからないけどギャロを愛してくれるのです。

しかし、キスして抱き合ったらこの女性も放置して車で走り去るギャロ!
本人的には感動のドラマだそうですが、わけがわかりません。
彼女は当時すでに54歳。
コメンタリーでは「年齢のわりにはキレイだろ!」と連発。
このシーンもカンヌでは大ブーイング。
そして、映画を悪く批評した女どもを口汚く罵るギャロ様…面白すぎますよ。

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<ローズ>
ラスベガスの立ちんぼ女。娼婦。(本業はストリッパー)
ペンダントの名前を見て、車に乗せ、昼飯をごちそうするギャロ。
しかし、食べ終わってしばらくすると降車を指示。
花の名前だったら誰でもいいから優しくしたい主人公。

このあたりは本物の売春婦も登場したりしてリアル・ピープルな顔面がちょっと面白かったですよ。撮影は基本的にゲリラで、撮り終わってから事後承諾というスタイル。荒んだ地域だったため、撮影中に何度も逮捕され40回も手錠をかけられたというギャロ。911のせいもあったようです。

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<デイジー>
最も重要な女であり、本作は彼女を求めて旅を続ける男の物語。

こんな映画の出演を承諾してしまうクロエ・セヴィニーの女優魂はホンモノだ!
ということで、この後、事務所を解雇されるなど色々あったようですが、近年ではポルノ映画『ディープ・スロート』を題材にした『ラブレース』にも出演していたりして(非エロの役でしたが)今後も追い続けたい女優さんです。

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そして例の過激描写。
日本ではボカシが入ってますが、海外ではこれを無修正上映。
(ネットで検索したらすぐに見れます)

「日本は変わってる。
淫らなことがはびこっているのに、陰毛は見せてはいけないとは。
訳がわからないし、奇妙だよ。
日本では胸が悪くなるような変態の極みも見た。
陰毛くらい、なんだ!
変だよ。
俺の視点だから変に思えるのだろう。
日本のことをもっと知ればわかるのかもしれない。
でも俺の狭いアメリカ人の視点では、普通じゃないね。
毛が問題なのが普通じゃない。」

以上ヴィンセント・ギャロ談。

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露骨なセックスシーンの目的は親密さが複雑さを増すことを示すためだ。
ポルノには罪悪感、責任感、結果、コンプレックス、怒り、憤り、不安、恐れなどは存在しない。つまり、このシーンの狙いは、インパクトのある描写によって性的快楽とファンタジーを増幅させるためだ。

(うーん…意味わからん)

そして、衝撃のラスト!

クロエ「私はもう死んでるのよ!!!!」

これは本当に驚きません!
予想できる展開でした。
そもそも登場からして不自然。
その後、回想など入れつつ真相を解説。
クロエはドラッグに溺れ酩酊した挙句、男たちにレイプされ、嘔吐したものが喉に詰まり窒息死していたのです。ギャロはそれを見て見ぬふりして、ついには記憶から消し去ってしまっていたんですね。

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つまり彼はホテルに来てからずっと一人だったのです…。
じゃあ、さっきの性行為は何だったのかというと、すべて妄想
要はオナニーしてたんですよ。
クロエの口内に射精してからのギャロは本当に酷い。
ティッシュをゴミ箱に投げ捨てるかのような女性の扱いでしたよ!
死んだ妻の想い出が汚れて終わる最低なラスト。
彼は元々人を愛せない男だったのでしたー。

脚本の段階では主人公がバイクで壁に激突して死ぬ話だったらしいです。
……絶対にそっちのほうがよかった気がする!!

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最後の最後は、ぼやぼやのストップモーションでEND!!