いけにえ映画狂い

外国映画の感想文。お気に入りシーン備忘録など。ネタバレしてます!

2017年

『ハクソー・リッジ』感想。(PG12)

ありがとう、メルギブ。
個人的評価:★★★★★★★★★★ 100点
Hacksaw Ridge 00
2017年06月24日公開/139分/オーストラリア・アメリカ/映倫:PG12
原題:HACKSAW RIDGE
監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド、テリーサ・パーマー、サム・ワーシントン、ヴィンス・ヴォーン、ヒューゴ・ウィーヴィング、ルーク・ブレイシー、レイチェル・グリフィス

10年ぶりのメル・ギブソン監督作。『プライベート・ライアン』が引き合いに出されるのも納得の大傑作でしたー。未見の方はとりあえず劇場へ!

以下、ネタバレしてます。

Hacksaw Ridge 07

あらすじ

第2次世界大戦中、デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、人を殺してはいけないという信念を持ち、軍隊に入ってもその意思を変えようとしなかった。彼は、人の命を奪うことを禁ずる宗教の教えを守ろうとするが、最終的に軍法会議にかけられる。その後、妻(テリーサ・パーマー)と父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の尽力により、デズモンドは武器の携行なしに戦場に向かうことを許可され……。
(以上シネマトゥデイより)

Hacksaw Ridge 01

感想

いやーーもう最ッ高。監督メル・ギブソンなので面白くないはずがない!とは思っていたんですが、今回も凄まじかった…。もう圧倒的!一切容赦なし!

前半は「主人公がなぜ武器を持たないのか!?」ということをみっちり描き、後半は地獄の沖縄戦って感じでした。殺すことが当たり前という特殊な状況下で自分らしく生きた衛生兵の物語。戦争という究極の修羅場においても信念を曲げずに自分を貫き、75人もの命を救った良心的兵役拒否者が主人公。まず、「戦争には参加するが殺人は絶対的に拒否する!」という設定がすごく良い。そんで、これが実話っていうところもまたすごい。

人を殺すという行為がいかに異常なことなのか、また、戦争がいかに無意味なことなのか、そういったことを手加減なしに突き付けてくる内容。間違いなく戦争映画史に残る傑作だと思います。

Hacksaw Ridge 10

とりあえず戦闘シーンが最高すぎ。戦場とは人体が破壊される地獄なのだ…!

予想はしてたけどゴアゴアな人体破壊のオンパレードで、もう凄い…。衝撃的だったし圧倒されました。そこらじゅうで人間がミンチになってて、肉塊の山盛り状態。戦場で兵士は火だるまとなり、敵も味方も関係なく頭や身体をふっ飛ばされてあっけなく死んでいく、バラバラになって転がった屍には蛆がわきデカい鼠が集り、仲間の死体さえも盾に利用される狂った非日常空間。

現場は死屍累々の地獄絵図。そこに丸腰でいることの恐怖感…。観ている自分が戦場に投げ込まれたような臨場感があり、音圧も凄まじかった。死にざまは荒唐無稽な面白さよりもリアリティを重視していたと思います。

Hacksaw Ridge 02

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『ランボー 最後の戦場』級の人体破壊描写が連続する地獄絵図…。あれよりもっと生々しいかも。かなりリアルで作り物感ほとんどなし。『パッション』終盤のキリスト様とか『アポカリプト』の取り出された内臓レベルのゴア描写がそこらじゅうにゴロゴロ転がってる修羅場が後半は延々と続きます…。あと『スターシップ・トゥルーパーズ』の影響もありそう。

文句なしの残酷表現だと思いました。『ブレイブ・ハート』でも血塗れの殺し合いを描いていましたが、今回はあれを百倍ハードにした感じ! 過剰っちゃ過剰なんだけど、実際の人死にはこれくらい過剰なものなんじゃないの?とも思うので、うん…これが戦争でしょう。これが戦争だッ!!

Hacksaw Ridge 14

(不謹慎かもだけど)正直むちゃくちゃ面白かったです、皮膚のビロンビロン具合とかたまらん。あと、内臓のミンチ具合も最高だし。反戦映画は残酷描写を徹底的に!ってのが基本だと思うんですが、もうやりすぎなくらい血みどろで…凄い。特殊メイク&特殊効果の方々も良い仕事してました。迫力ありすぎて、笑ってしまうようなゴア感覚。CGを極力使用しないっていう撮影方法はジョージ・ミラーへのリスペクトなのかなーとかも思っちゃいました。

Hacksaw Ridge 17

戦争の超残酷さはもちろんなんですが、それ以上に重要だったのがヒューマンドラマ部分だと思います。テーマとなるのは主人公の「信念」。『顔のない天使』でも『ブレイブハート』でも『パッション』でも『アポカリプト』でも形は違えどそれぞれ一貫して「信念」を描いてきたメル・ギブソン監督。どれも「人を救う」という点では共通しており、今回はどストレートに「人を救う」話。ヒーローを描くのも毎度のことなので『ハクソー・リッジ』はメルギブの集大成といっても過言じゃない映画かもしれません。

演じるアンドリュー・ガーフィールドもハマってましたねー。

Hacksaw Ridge 25

幸せな思い出の現場が小高い岩山の「崖」の上ってのも良かったです、後に妻となる彼女ともそこへ行きます。このへんは決戦の舞台となる崖を意識してるんだと思いますけど、幸福な場所であるはずの崖が地獄になったり、幼少期のトラウマである「レンガ」と「ベルト」で人命を救助したりと小道具の使い方や対比がいちいち巧い。

ハクソー・リッジとは沖縄戦において最も熾烈といわれた激戦地・前田高地のことだそうです。詳しい戦況説明などはほぼありませんでしたが、重要なのはデズモンドの信念を描くことなので問題なかったと思います。二時間を超える上映時間も長さを感じさせずテンポも良いのであっという間。これだけの話を描くには十分必要な時間だったのかなと。

Hacksaw Ridge 03

後半の描写がとにかく強烈な映画でしたが、前半もメチャクチャ面白いです。信仰に目覚めるトラウマ体験、暴力を振るうPTSDの父、軍隊への入隊、仲間からの激しいシゴキ、軍法会議と父の愛などなど戦地に行き着くまでの過程がじっくり描きこまれています。ここが超しっかりしているからこそ後半の地獄絵図が際立ってくるという構造。

個人的に共感したのはデズモンドが兵士に志願する理由で、「みんな戦ってるから」と単純なところがすごく良かったです。前半から「普通じゃない部分」をガンガン現してくる主人公ですが、同時にしっかり共感させるてくれる言動なども存在します。そのために狂気を狂気と思えなくなってくる瞬間があり、傍から見れば「超やばい奴」には違いないんですがそういう人間になる過程を知ってしまっているため擁護したくなる、そんな感じ(うまく言えない)。

Hacksaw Ridge 21

日本兵に関してはけっこうステレオタイプな描き方でした。けど、あくまでもアメリカ人目線の物語なのでまあ予想の範囲内だったかなーと思います。

切腹は岡本喜八の『沖縄決戦』でも描かれていましたが、直後の首チョンパはさすがメルギブ!!という感じ。同時に日本兵が白旗振って降参…からの姑息なダマシ討ち!ってのも描いているため、ここは観た人の賛否が大きそう…。ただ、異教徒の描き方としては簡潔的でわかりやすいし、個人的にはメッチャ面白かったですよ。刀を振り下ろす瞬間はほとんどご褒美みたいな(笑)。

Hacksaw Ridge 05

テリーサ・パーマーは登場するごとに衣裳チェンジしてるので、コスプレ感が最高でした~。金髪・青い瞳・白衣の天使というファーストショットも完璧。主人公が彼女に惹かれたのは「人を救う側の人間」ってのも理由としてあったと思います。画的に魅せる演出もすごく良かった。

Hacksaw Ridge 26

伏線なども含めてかなり練られた脚本だと思いました。「銃に触れない主人公」なんですが、実際は終盤で銃を手にする瞬間があり、人を殺す道具で人を救うという展開が気持ち良かった。銃との距離感・使い方・触れさせ方も無駄がなく上手い。

それと、鬼教官(ってほどでもないか)がヴィンス・ヴォーンというのも嬉しかったですねー。役者はみんな大好きでしたよ。もちろんヒューゴ・ウィーヴィングも素晴らしかったし!

Hacksaw Ridge 22

ということで平凡な感想しか出てきませんが、信念を貫くことの素晴らしさをおしえてくれる良い戦争映画だったと思います。それと、単純にむちゃくちゃ面白かった。

結局何が一番良かったのか考えると「みんなにバカにされ臆病者扱いされてたアイツが戦地で英雄に!」というよくある超絶胸アツ展開かも、個人的には。細かい部分もいろいろ好きだったんだけど、一番心に響いたのはそこかなと。

デズモンドの信念が最も表れていたと思うのは、洞窟で瀕死の日本兵と遭遇するシーンでした。敵も味方も関係なく「命を救いたい」という気持ちが見ていてすごく伝わってくる、聖人扱いされるのも納得です。自分はこんな人間には決してなれないけど素直にすごいなあと思うし、拍手喝采したい気分でした。それと、やっぱり「武器を持たずに沖縄戦に巻きこまれていく男の実話」ってのが強烈で、とにかくもう感動した。文句なし。なので100点。

今後も「俺はこう思うんだよ!」って感じのメルギブ映画を撮り続けてほしいなーと思います。ありがとうございました!

Hacksaw Ridge 23

ラストは実際のデズモンド・ドスが登場。実話ベースの映画にありがちな映像ですが、やっぱりご本人が登場すると胸が熱くなる…。2004年に制作されたドキュメンタリー『The Conscientious Objector』もその後で見たのですが、こっちもヤバかったッ!

mel

尊い。


↑予告


『ジェーン・ドウの解剖』感想。(R15+)

理不尽で最高。今年の暫定ベストおっぱい映画。
個人的評価:★★★★★★★★☆☆ 80点
2016
2017年05月20日公開/86分/アメリカ/映倫:R15+
原題:THE AUTOPSY OF JANE DOE
監督:アンドレ・ウーヴレダル
出演:エミール・ハーシュ、ブライアン・コックス、オフィリア・ラヴィボンド、マイケル・マケルハットン、オルウェン・ケリー

監督は『トロール・ハンター』の人。ネタバレしてます。

The Autopsy Of Jane Doe 02

あらすじ

バージニア州の田舎町に住む経験豊富な検死官・トミーは、息子のオースティンと共に遺体安置所と火葬場を経営している。ある夜、地元の保安官から緊急の検死依頼が入る。それは、3人が惨殺された家屋の地下から裸で見つかった身元不明の美女“ジェーン・ドウ”の検死であった。いつも通りの検死だと思われたが、解剖を進めていくと、その遺体に隠された"戦慄の事実′′が判明し、怪奇現象が次々に発生!外では嵐が吹き荒れる中、遺体安置所という閉ざされた空間で、逃げ場のない恐怖がはじまろうとしていた......。

The Autopsy Of Jane Doe 01

感想

いやー、こういうの大好き!面白かった!良作ホラー!!

解剖医の親子が検死することになった身元不明の美女【ジェーン・ドウ】は「激ヤバ案件」だった!っていう話です。警察から遺体を引き渡されて夜明けまでに検死解剖するよう頼まれる主人公たち。しかし解剖を進めていくものの死因が見つからず、しだいに遺体安置所で不可解な怪奇現象が発生していくというストーリー(上に書いてあるけど)。

前半は謎を解いていくミステリー仕立てな展開で、後半戦はガンガンにホラー映画という印象でした。オチャラケ要素は一切なし。全体的に作りは真面目。「ジェーン・ドウ(ドゥ?)」というのは身元不明の人物に付けられる名称だそうです。男性の場合は「ジョン・ドゥ」(こっちは有名かも)。

The Autopsy Of Jane Doe 03

もうねー、こういうの好きすぎます!グロテスクな人体解体ショーでしたよ!断面もしっかり見せてくれるし脳ミソも内臓も皮剥ぎも拝めて大満足!

とりあえず何がイイって、【ジェーン・ドウ】を演じるオルウェン・ケリーが美しすぎるっていうところ。鼻血垂らして体内からハエ飛ばしてても全然問題なし。この全裸死体が画面に映ってるだけで画がもつし、これを解剖していく話なんだからもう最高。完全に好みの映画です。

そんで、この遺体が何もしないのがすごく良い。執拗といってもいいくらいに顔面のショットが多い映画なんですが、ジェーンは終始仰向けになって寝てるだけ。当然ですが、死体なので微動だにせず動きません(この演技も凄い)。襲いかかってくるモンスターには「逃亡する」とか「攻撃する」とか物理的に多少は抵抗できそうなもんですがジェーンはただそこにいるだけ(しかし怪奇現象を発動)。これが恐ろしい部分でもありました。

The Autopsy Of Jane Doe 04

検死解剖は全部で4段階。まず始めに外部の観察、それから心臓や肺等の体内の剖検。そして消化器官に至り、最後に脳を解剖すると。

父親役のブライアン・コックスがむっちゃ良かった。リアクションにいちいち説得力があるので状況の奇怪さがガンガン伝わってきて序盤からグイグイ引き込まれました。ルーティーンだから当り前だろうけどグロにまったく躊躇せずテキパキ解体してくれるのも気持ちいい!

巧い役者さんだなーと思いましたよ。

The Autopsy Of Jane Doe 08

ジェーンの身体は外傷やタトゥーのないキレイなもの。しかし、調べてみると舌は切り取られており、手首と足首は複雑骨折。さらに膣の内部や臓器は傷だらけ、肺は真っ黒く焼けており、胃からは毒草、腸の中からは謎の布と彼女の歯がそれぞれ出てきます。

The Autopsy Of Jane Doe 10

解剖を見ているだけで楽しいんですけど、個人的に絶頂だったのは皮膚をベローンと開く瞬間。画的にも面白いし、同時に「この遺体は本格的にヤバい!」と親子が気づく瞬間でもあり、皮膚を剥ぐシーンがこの映画で一番の盛り上がりどころかなーと思いました。皮膚の裏側に紋章が…!

The Autopsy Of Jane Doe 05

で、ホラー全開モードに突入。手始めに電燈が割れて暗闇に!

そして安置していた死体たち(全3体)が動き出し親子を襲い始めます。本編のほとんどが遺体安置室なので密室劇といってもいいかもしれません。

「鏡にヤバいもんが写る」「電話が通じない」「外に出れない」などのホラー映画のお約束要素も多くて楽しかったですよ。ただ、ここはオーソドックスな展開が連続するので「よくあるホラー」って感じもしましたね。音でビビらせてきたり、ドアの隙間から縫われた口を覗いたり…。再び解剖を再開するまでの間は、退屈でもないんだけど、うーん…けっこう普通だったかも。

The Autopsy Of Jane Doe 12

怪奇現象を終わらせるため、遺体にオイルをぶっかけて火をつけるものの火が天井に燃え移ってしまい消化器で消すなど、親子は無力…。ジェーン・ドウは燃えていたはずなのに無傷のまま。「もうここから脱出するしかない!」ってことでエレベーターに乗ると敵の死霊に追いつめられてしまい、父親が手斧で反撃したところ誤って(?)主人公のガールフレンドを殺ってしまう!

The Autopsy Of Jane Doe 06

で、終盤で明らかになるのは「ジェーン・ドウが実は生きていた!」っていうことでした。脳ミソの組織を顕微鏡で覗いた時にそのことに気づく主人公…。序盤から多用される顔のアップショットは、これを示唆する意味合いもあったと思います。この辺りは中盤で察しがつくので驚きはなし。

彼女は生前魔女狩りの被害にあっており、人体につけられた傷は生贄の儀式の際に負ったもの。手足を縛られ舌を切られ毒を飲まされ麻痺したところで布を飲まされ体内に傷をつけられ最後は燃やされて死んだジェーン・ドウ。復讐を果たすべく成仏できずにこの世に留まっていたのだ!という残酷黒歴史をサクッと解明してくれる終盤。こういうの大好き。

The Autopsy Of Jane Doe 09

しかし、いったいなぜこの親子を??というのが恐ろしいところで、けっこう理不尽な話でしたよ。関わった時点でもうダメだったのかも…。結局は冒頭の惨殺家族もすべてジェーン・ドウの仕業だったんだと思います。そして彼女が行く先々で死体の山を量産することを暗示するようなバッドエンド。

最後まで親子に非があったとは思えず、ただただ不運だったとしか…。普通の映画だったら息子だけでも生き残りそうなもんだけど(2人とも死亡)救いを与えずにドン底まで突き落としてくれたのは個人的には嬉しかったですねッ、厭な映画って感じで。不幸の連鎖にはちょっとJホラーっぽさも感じました。あと、全体的にジョン・カーペンター。

主演がオッサン二人だからかビビらせて絶叫させるみたいな恐怖演出はなかったんですが、スッキリと謎を解明しきってくれないところがまた後に残る感じで、個人的にはけっこう怖かったです…(笑)。観終わってからジワジワくるタイプの恐怖かもしれません。それと、最高なのが上映時間の短さ(86分)。

ということで、良いホラー映画だったと思います!好きだー!

The Autopsy Of Jane Doe 11

昔は死人と昏睡状態の人間は見分けがつきにくかったため遺体の足首にベルを付けていたそうです。安置所でベルの音が鳴ったら、それは遺体が動いているというサインだったんだとか…。この辺りの伏線もちゃんと回収していたし、最後まで効果的でしたよ。

The Autopsy Of Jane Doe 07

内臓が映ってるだけで楽しいしグロ描写にも大満足。


↑予告

トロール・ハンター [Blu-ray]

こっちも最高。好き。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』感想。

銀河の運命は、彼らのノリに託された!
個人的評価:★★★★★★★☆☆☆ 70点
Guardians of the Galaxy
2017年05月12日公開/136分/アメリカ/映倫:G
原題:GUARDIANS OF THE GALAXY VOL.2
監督:ジェームズ・ガン
出演:クリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、ヴィン・ディーゼル、ブラッドリー・クーパー、デイヴ・バウティスタ、マイケル・ルーカー、カレン・ギラン、ポム・クレメンティエフ、エリザベス・デビッキ、クリス・サリヴァン、ショーン・ガン、シルヴェスター・スタローン、カート・ラッセル

観てきましたー。

熱心なアメコミ映画ファンってわけでもないし原作は読んだことないので全然詳しくないです。ジェームズ・ガンは大好き。前作は文句なしの大傑作でしたが、Vol.2は…期待しすぎたかなぁ。

Guardians of the Galaxy05

あらすじ

“スター・ロード”ことピーター・クイルをリーダーに、凶暴なアライグマのロケット、マッチョな破壊王ドラックス、ツンデレ暗殺者ガモーラなど、たまたま出会ったノリで結成された宇宙の“はみ出し者”チーム、<ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー>。小遣い稼ぎに請けた仕事をきっかけに、強大な力を持つ“黄金の惑星”の指導者アイーシャ率いる無敵艦隊から総攻撃を受け、彼らの宇宙船ミラノ号は壊滅寸前に…。間一髪、ガーディアンズを救ったのは“ピーターの父親”と名乗る謎の男エゴと、触れただけで相手の感情が分かる能力を持つマンティスだった。仲間からの忠告にも関わらずエゴに魅了されていくピーターの姿を見て、次第にチームの絆に亀裂が…。そこへ“ピーター育ての親”ヨンドゥが率いる宇宙海賊の襲撃や、さらに銀河全体を脅かす恐るべき陰謀が交錯していく。はたして、ピーターの出生に隠された衝撃の真実とは? そして、彼らは絆を取り戻し、銀河を救うことが出来るのか? その運命の鍵を握るのは、チーム一小さくてキュートなガーディアンズの最終兵“木”グルートだった…。

Guardians of the Galaxy07

感想

文句なし!傑作!ではないけど、普通に面白かったです。

ギャグ、アクション、お涙頂戴をこれでもかとガンガン詰め込んだ過剰とも思えるファンサービスてんこ盛り映画。もうおなかいっぱい、胃もたれしそう。前作はセンスの塊で文句のつけようもない大傑作でしたが今回はサービス精神の塊みたいな内容でした。普通のことやったんじゃ1作目は越えられないし「やりすぎ」くらいじゃないとダメってことでしょうね、おそらく。

Guardians of the Galaxy09

で、感想なんですが、途中までは超ノリノリで楽しかったです。だけど後半の展開は湿っぽくて苦手…という感じかなー。GotGに求めていたものは第一に「楽しさ」だったので、苦悩みたいなシリアスなもんは必要最小限でいいし、これ見よがしな涙は似合わない気がします。ロケットには堪えてほしかった。

「家族とは?」というテーマに対しての決着のつけ方も若干陳腐だし、前作に比べると熱いもの(チーム感等々)もそれほど感じられず、サントラも今回はビミョー。単に好みじゃなかっただけだと思いますが、あまり興奮できず…。シーンに合わせた歌詞にも冷めるばかりで全体的にはもっさりした印象です。ハマってんだか外してんだか分からない曲も多かった(ピンポイントで流れる『恋のバンシャガラン』とか)。ガッカリってほどではないけれど。

期待したほどではなかった、というだけです。期待値はメチャクチャ高かったので。前作クソ面白かったし、予告で今回も面白そうだったから。で、実際に観てみたら面白かったけどバランスは良くないっつうか…とにかく過剰。

Guardians of the Galaxy01

とりあえず良かったところは、タイトルバック!超サイコー!

もう正直ここが一番テンション上がりましたよ。続編映画の醍醐味中の醍醐味「アイツらが帰ってきた!」を感じられるシーン。キャラ造形は前作で完全に出来上がっちゃってるんで、いきなりのクライマックス!!っていうパターンっすねー、もう最高。ありがとうジェームズ・ガン、観てよかった…。ELOが流れている間は至福でした。大ボス級のでっかいタコが降ってくるというトンデモ展開も「こういうのが見たかったッ!!」って感じだし。タコの首元から腹までかっさばいてドロドロした液体と共に流れ出るドラックスも最高すぎ。『スリザー』感ありましたねー。

昔はひとりで孤独に踊っていたピーターですが、今回はグルートがコミカルに踊り狂います。仲間たち(という疑似家族的な存在)が巨大触手生物と死闘を繰り広げている真っ最中にひとりで音に合わせてダンシング!(基本的に空気読めないやつが空気読めない行動してる場面はすべてが笑いどころ)

夢中になってたらママ(にしか見えないガモーラ)に注意されたり、虫っぽい生物を食べようとしてロケットに叱られたりと、もう完全にガキんちょ扱い。ぶっ飛んできたドラックスによってステレオを壊されて怒る様子なんかも幼児そのもの。ベビーグルート可愛いわー!ホント反則!ぶん殴りたい!

ということで、個人的には冒頭がピークでした。

gog

どうしようもないはぐれものたちがひとつの目標に向かって超がんばる!ってところが好きだったんですが、今回は団結感をあまり感じられませんでした。みんなバラバラ。その代わりキャラクターそれぞれの内面性を深く掘り下げるような内容なんですが…1作目で完成されたキャラクターを使って(良い意味で)悪ノリして遊んでいるようなシーンが多かったです。

物語の主軸となるのは、生みの親と育ての親との間で揺れ動く息子の葛藤なので、そこ以外はもっとアッサリした描き方でもよかったような気もしました。

ガモーラとネビュラの姉妹対決は面白かったし、キャラの魅力も増したけど、本作においてはそこまで重要なものとは思えませんでした。アクションはもうちょっと削っても問題なかったと思う。あと、マンティスは生理的にムリ…。可愛い子ぶったケバいババアみたいで好きじゃなかったです…顔もキャラも。ソブリン人の艦隊をやっつけてから一人だけぶっ飛ばされるのも冷めたし。

Guardians of the Galaxy08

ドラックスは「こんなにもバカだったんだ?」ってくらいにバカ一直線だし、トロマ仕込みの悪趣味ギャグ(義眼、指、人骨、700回ジャンプでの顔面崩壊など)なんかも嬉しいは嬉しいんですが途中でダレましたよー、どうでもいいような笑いを引っぱり過ぎでクドい。さらに見せ方もベタでオーソドックスになっていて、そこも微妙。サラッと流すような笑いのままでよかったのに!

「ここ笑うとこですよ!」「ここは泣くとこ!」って副音声で言われてる気分になってしまって、こんなに懇切丁寧にやらなくてもいいのになぁ…と思いました。グルートと同年齢程度の幼児が観ても楽しめる作りなのかも…。正直、寒いギャグもいくつかあった。

本来ならカットして特典映像で見せるべきシーンもガンガン入れ込んできてる印象でした。相変わらず万人向け仕様で「誰が観ても楽しめる映画」には変わりないんだけど、過剰なサービス精神だと思いました。結末がメソメソしてるからバランスを保つためにギャグを大量にぶち込んだって感じでなんしょうが不要に思えるものが多かったです…。バカっぽい笑いは大好物なんだけど。

あと、この内容でこの上映時間はやっぱり長いと思う。

Guardians of the Galaxy06

ベビーグルートは子供らしい子供って感じで可愛さのゴリ押し状態。上目使いで目ん玉ウルウルさせちゃったりして「どうだ!可愛いだろ!」みたいな…。たしかに超絶カワイイことには間違いないんだけどさ、ちょっとこれ見よがしすぎないですか?とも少し思う。すんません…。表情変えずに静かにゲロ吐くところは素直に最高だけど!

非人であっても相手が子供なら人体破壊には配慮もあるのかなー。

Guardians_of_the_Galaxy

個人的に面白かったのは、ソブリン人が室内にこもってゲーム感覚でピコピコ戦闘してるシーン。いかにもオタクっぽくてゲーセンみたいな空間だし、やられて「チックショー!」とか騒いでる金ピカ宇宙人たちの軽めのノリもすごく良かった。あと、テープの件も好き。このへんはただの好みです。

それと、「テイザーフェイス」に笑いを堪えきれないアイーシャとか雪の中で青い絨毯の上を歩くアイーシャなどはベターな感じなんだけど…エリザベス・デビッキが超絶美しいのでスベってても無問題。踏まれたい。

ego

意思を持つ有機体”惑星”であるエゴは神に最も近い存在である天界人。息子を探すために自身の分身を作り出し銀河を旅していた人物です。そんな彼がピーターの前に現れて…という話。まあ、ピーターの父親は惑星エゴだった!ってことですよね。『惑星ソラリス』が真っ先に思い浮かぶような設定でした。

自分が天界人であることを確信したピーターはパパとの対面を素直に受け入れ『フィールド・オブ・ドリームス』のようにキャッチボールなんかをしていたわけですが、エゴが母親を殺害していたことが発覚し…。そして、銀河を巻き込む親子喧嘩へと発展していくと。

たとえ父親が相手でもキレた瞬間即殺害!みたいなピーターの戦闘スタイルはとてもカッコイイし好感しかありません。親殺しはスペオペの伝統なのか…。当り前かもですがスターウォーズとかスタートレックなんかはバンバン意識している作りだと思います、全体的に。

kurt russel

今回もカート・ラッセルは超かっこいいオジサンでした(凶悪な)。

最初は善人として登場させておいて「実は悪役でしたー!」ってことなんだと思うんだけど、そもそもイイ人には見えませんでしたよ。だって演じてるのがカート・ラッセルだし。人殺しの顔でしょ。なので登場の時点でヴィラン感はムンムン!

そして、親と子のド派手な殺し合いが始まります…。

終盤のバトルは王道中の王道(なのかな?)。大バジェットのアクション映画でよく見るやつ、というよりは少年漫画っぽかったです。けっこうバカっぽい空中戦で空気感のギャップも含めて楽しめました。結局はサイコパスな役回りなのでキャスティングは正解だと思います、エゴ。

カート・ラッセルの最後は崩れ落ちるような死にざまが素敵でした。愛した女にわざわざ脳腫瘍を埋め込んで殺すっていうエピソードも好き。あと、(我が子たちの?)人骨の山もテンション上がりましたねー。残酷なショック映像は少なかったけど悪趣味なセンスは前作よりも炸裂してるのかも。出生の秘密を解説する件は少し退屈だったかなーという気がしないでもないです。

Guardians of the Galaxy03

1作目をはるかに上回るカラフルな世界観で、爆発なんかも超ド派手。CGは文句なしによくできていると思います。けど、画面内でものすごいことが起こっていてもそうは感じられないのは何なんでしょう。既視感のある映像だからなのか、特別な新鮮味はあまり感じられず…。たしかに凄い映像なんだけど、慣れちゃったのかなー。ミラノ号の戦闘シーン以降がとくに。

nightrider

デヴィッド・ハッセルホフの登場シーンはどれも笑えた。出オチ。

showngun

一番好きだったキャラクターは、マイケル・ルーカー演じるヨンドゥでした(みんなそうだと思うけど!)。本作の主役…は言い過ぎだけど、ヨンドゥの映画だと言っても過言じゃないくらいの扱いでした。ぶっちゃけ死んでほしくなかったなー。けど、まあ、妥当な結末なのかなと。

ロケットの「失う仲間はひとりで充分だ」みたいなセリフもヨンドゥを仲間だと認めた上での言葉であり、ピーターを必ず救うという信頼感があったからこそ出たもので、前作では「仲間と痛みを分かち合う」というクライマックスで笑い泣き状態になったんですが、今回彼らが共有する痛みは「ヨンドゥの死」だったんだと思います。さすがにノリだけじゃ銀河は救えないっすよねー。

ヨンドゥに「俺はメリー・ポピンズだ!」と言わせちゃうのもすごく上手いと思いました。もちろん地球の映画なんて知らないはずの人物なので、ここでの対応は清々しかったです。ピーターも内心では真の父親はヨンドゥだと認めていたってことですよね、たぶん。ヨンドゥとの永遠の別れを暗喩するという意味での『メリー・ポピンズ』でもあったと思います。個人的にはここがVol.2一番の名シーンかな。

Guardians of the Galaxy04

死体の雨を降らせる大量殺戮シーンも最高に気持ち良かった。

Guardians of the Galaxy10

ということで文句多めになっちゃったけど、けっこう楽しかった。

前作ほどはワクワクする気持ちになれなかったのと、ラストはめそめそ(ってほどでもないけど)泣いてんじゃねーよ!ってことで、非哀感が漂うシーンがアレだったので個人的には70点。ただ、自分が観たMCU作品の中ではかなり上位にランクインする面白さでした(何の説得力も無さそうだけど)。

ヨンドゥの死とピーターの走馬燈(しかも無音)のコンボだけでファンは泣き叫ぶに決まってますよねー。なので、まあ、良かった…。3作目もガンちゃんが監督・脚本なので次回も懲りずに期待したいです。

それとこれは好みの問題かもしれませんが「家族とは?」や「親の死」よりも「家族が形成されるまでの物語」のほうが何倍も魅力的なわけで…うん。

stanlee

最後は明るく笑いとばしてくれたけど大オチはハッキリ言って切れ味悪すぎ。エンドロールの入り方もエンドロール中の演出もダラダラしすぎだし、惰性のように、しかも断片的に続く見せ方はあまり好きではないです。おそらく観客を最後まで椅子に座らせ続けるためのやり方なんでしょうが、こういうの見ると毎回「予告は他でやってください」と思ってしまうし、次作の伏線を今やるのもどうなの?という感じ。パッと終わって余韻…じゃダメなんでしょうか。良くも悪くも「まだ終わってない感覚」になりました…。このあたりは今作に限らずコレ系の映画で頻繁に感じるやつですが。

どうでもいいけどスタン・リー長いな。すごいな。

guns

ガン監督の両親も出演してたようですね(言われないと気づかない)。

chonpa

スペースオペラのお約束【腕チョンパ】は今回なし、残念!


↑予告

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『人類遺産』感想。

近代文明の消滅を描く、厳しくも美しい映像集。
この風景を旅することは、人類必須のテーマである。
個人的評価:★★★★★★★★☆☆ 80点
Homo Sapiens
2017年03月04日公開/94分/オーストリア・ドイツ・スイス
原題:HOMO SAPIENS
監督:ニコラウス・ゲイハルター

「こんなこと思ったよ!」ってことを書いているだけの感想。ちょっと特殊な映画だと思いました。観る前に知っていたのは、監督が『いのちの食べかた』を撮った人で今回は廃墟のドキュメンタリーであるということだけ。廃墟は元々けっこう好きです、写真集を眺める程度ですが。

Homo Sapiens00

あらすじ

『いのちの食べかた』などのニコラウス・ゲイハルター監督が、およそ4年の歳月を費やして世界各地に存在する70か所を超える廃虚の撮影を敢行。人々の姿は消え失せ、緑に覆われ、鳥が飛び、風が吹きすさび、朽ち果てるのを待つだけとなった廃虚の数々。団地群、テーマパーク、劇場など、かつて活気づいていた場所は……。
(以上シネマトゥデイより)

Homo Sapiens16

感想

登場するのは世界70箇所の廃墟のみ。人物はひとりも登場せず、ナレーションも字幕も劇伴も一切ありません。カメラは固定。一定時間(30秒ほど)で次のカットに切り替わり、ひたすら廃墟を映し続けるだけの一時間半。

良い映画だと思いました。すごく好き!

Homo Sapiens18

個人的にはこんな作品は初めて観ました。廃墟映画の傑作だと思います。こんなの映画じゃない!という人がいるのかいないのか知りませんが、こういうのも映画だと思います。けど、所謂「映画的な映画」ではないかもしれない。

本当にただ映しているだけなのでカメラが動いたりはしません。なので、写真のようでもありスライドショーに近い気もするんだけど、映像なので当然時間は流れます。それから、よく見ると実はいろいろ動いています。目立った動きはありません。埃が舞ったり、木々が揺れたり、雨が降ったり、それくらい。音はいろいろこだわっていたようでその場にいるような臨場感がありました(人間が動く音などは編集の際にすべて除去したらしい)。

Homo Sapiens20

見始めて20分くらいは正直「ナニコレ…これがずっと続くの!?」って感じだったんですが、それが意外と新鮮でした。娯楽感はまったくないといってもいいかもしれません。面白くしようとする素振りが見られないというか、なぜにこんなものを撮ったの?という疑問さえ浮かびます。それだけに、監督の意図などをいろいろと考えざるを得ないというか、画がほとんど動かないからこそ想像力をかきたてられるという感じかも…。

画面に映る映像は固定カメラで正面の風景をただ撮っているだけです。演出が何もないというのか、「何もしないことが演出」だったのかも知れません…。誰でもできるけど誰もやらない演出がすごいのかどうかはわかりません。が、個人的にはこういうのがあってもいいんじゃないかなーと思いました。大胆で面白かったし、潔さも感じました(序盤で頭の中に”手抜き”の文字が浮かんだけどすぐ消えた…)。それから、誰かがこの映像を撮っているという作為的なものをほとんど感じないのも良いと思いました。そのためかは分かりませんが映像世界への没入感は強かったです。

Homo Sapiens01

よくSF映画で「人類が滅亡した世界」(のようなもの)が描かれます。しかしだいたいは生き残った人間がいて、ストーリーがあって、ドラマがあったりします。本当に「人類が滅亡した世界」を描こうとすると、もしかしたらこうなるのかな…と本作を観て感じました。ということなので、個人的にはこれ以上ないくらいのディストピア感覚に浸れた作品。なので好き。良い。

何が良いって、人間がいないのが良い!そこが最高!

廃墟の空気に人間の気配が混じってないのが良い!

Homo Sapiens14

僕はこの映画を観て、世界各国を旅している感覚になりました。旅の目的は自分以外に生き残った人間を探すことであり、そのために世界を回っている、という感覚。何らかの事態(核戦争とか)が起こり世界は滅び、人間は死に絶えてしまった。残ったのは自分だけ。何ひとつ言葉で語られることがないため、これはただの個人的な妄想です。

絶望的な孤独から誰か他の生存者を探す旅に出ます。そして、世界を歩き回ることに…。しかしどこへ行っても誰もいない。映し出される映像は廃墟ばかりです。ただ荒れた土地というよりは「以前は人がいたらしい形跡の残る現在は誰もいない空間・場所」といったほうがいいかもしれません。場所が変わる毎になんだか絶望的な気持ちになっていきました。「ああ…やっぱもう誰もいないんだ…みんな死んだんだな…」みたいな。人類がいなくなった世界でひとり孤独に突っ立って廃墟を眺めている感覚です。廃墟っていうか人間の痕跡。

Homo Sapiens03

ですが、鳥はいるんですよねー。登場人物はいませんと書きましたけど、登場する動物はいます。「あ、鳥はいるのか!」と気づいた途端になんか救われた気分になるというか、この世界が心地よく思えてきて、いやーなんかうまく説明できないしコレ狙ってやってんのかどうかも分かんないんですけど、とにかくちょっと楽になりました(笑)。伝わんないと思うけど。

ハトが希望の象徴として登場する映画は多いと思うのですが、今回も本当にそれで、生き物がまったく映らない映画だったらさらに絶望していたように思います。鳥を見てマジで泣きそうになったんですよ。あ、ひとりじゃないんだな俺って…(なんかすごくキモい感想だけど)。

Homo Sapiens09

登場した廃墟は、下のような場所。ほんの一部です。
  • 【メソジスト教会】(アメリカ・インディアナ)
  • 【ヴィラ・エペクエン】(アルゼンチン)
  • 【ローラーコースター】(アメリカ/ニュージャージー州)
  • 【端島・軍艦島】(日本/長崎県)
  • 【ベルギー冷却塔】(ベルギー/モンソー=シュル=サンブル)
  • 【ザッケ・ヒューゴ炭鉱】(ドイツ/ノルトライン=ヴェストファーレン州)
いくつか知ってましたが、ほとんどが知らない廃墟でした…(笑)。全体的にシンメタリーな構図のものが多かった気がします、どれもホントに美しかったし退屈はしませんでしたよ(個人的には!)。

Homo Sapiens06

日本の風景が序盤にあることで世界が近くに感じられた気もします。自転車置き場など特に。で、後半の軍艦島で「帰国したー!」みたいな心境に。最初の廃墟は福島だったようです。現場が現場だけに選ばれたのも納得という感じ…(福島だったってことは観終わってから知りました)。

Homo Sapiens05

おそらく世界で最も有名な廃墟である【ブルガリア共産党ホール】(ブルガリア/バルカン山脈)から映画が始まり、最後はまた同じ場所に戻ってくるという構成になっていたと思います。ただしラストシーンでは全面に雪が降り積もっており、吹雪によって画面が真っ白になったところで映画が暗転し、終了。

人類が滅びた世界で地球最後の人間である主人公(観客)がラストショットで力尽きたようにも思えました。何か、すべてが終わったような…そんな感じ。まあそもそもこの視点が人間のものかどうかも判断できないし、アレですが。とにかく素晴らしかったです。人にはなかなか薦めづらい作品かもですがー。

感想を見ていたら「ひたすら雨乞いしてたと思うと笑える」という意見があって、これには「たしかに!」と思ってしまいました。そういう発想好き。

Homo Sapiens17

それにしても美しかった。たまらん…。


↑予告


『バーニング・オーシャン』感想。

世界最大級の「人災」と言われるこの事故はなぜ起こったのか?
施設内に残された126人の運命は?
個人的評価:★★★★★★★☆☆☆ 70点
Deepwater Horizon
2017年04月21日公開/107分/アメリカ/映倫:G
原題:DEEPWATER HORIZON
監督:ピーター・バーグ
出演:マーク・ウォールバーグ、カート・ラッセル、ジョン・マルコヴィッチ、ジーナ・ロドリゲス、ディラン・オブライエン、ケイト・ハドソン、ダグラス・M・グリフィン、ジェームズ・デュモン、ジョー・クレスト、ブラッド・リーランド、J・D・エヴァーモア、イーサン・サプリー、トレイス・アドキンス、ジャストン・ストリート

当時ニュースで見た記憶はあるんですが「なんか海面に石油が漂ってたな…」程度なので、まあ、詳細はほとんど何も知らずに観た感じです。

ここが好きとか嫌いとかダラダラ書いてるだけの感想文。ネタバレしてます!

Deepwater Horizon01

あらすじ

メキシコ湾沖80キロメートルにある石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」で、海底油田からの逆流によって上昇した天然ガスへの引火が原因で大爆発が発生。現場で働いていた作業員126人が施設内で足止めを食らう。事故により多数の行方不明者と負傷者を出す大惨事となり……。
(以上シネマトゥデイより)

Deepwater Horizon08

感想

いやー、めちゃくちゃ面白かったです。好き。2010年にメキシコ湾で起きた原油流出事故を元にした実録モノ。「なぜこんな事態になったのか?」という惨事に至るまでの過程と、そこからの生還を描いた話。

アメリカ史上最悪の人災らしいですね(よく知らないけど)。

実際に起きた事件ですし人も亡くなっているので「面白い」とか「楽しい」とか不謹慎に思われそうだから若干言いいずらい気もするけど(まあそんな映画いっぱいあるし気にしなくてもいいか)、最初っから最後まで退屈せずに楽しめましたよ。上映時間もちょうどよかったと思います。長さは感じなかった。

Deepwater Horizon14

最大の見せ場は、事故が起きてバーニングする瞬間。もう観る前から大惨事が起こってしまうのは知っちゃってるんですが「いったいいつ起こるのか!?」って部分でかなりワクワクできた気がします。ここの部分でわりと長めに引っ張っているんで、正直ちょっと前半は間延びしている印象もありました。けど個人的には「いい焦らし」だったなと(笑)。事故が起こりそうで起こらなかったりするんで、そのへんの焦らし加減が好きでした。今か今かと待ち続けて「来るぞ来るぞ………キターーー!!」って感じ。大噴射!大爆発!最高!!こういう部分もパニック映画の醍醐味なんじゃないかなーって思います。

『バトルシップ』みたいな荒唐無稽な展開よりは、事実を忠実に再現することを優先していた印象です。前作『ローン・サバイバー』に続いて硬派な作り。多人数をガシガシ捌いて魅せていく演出は『キングダム/見えざる敵』なんかも思い出しました。本作も脚本は同じマシュー・マイケル・カーナハン。

Deepwater Horizon11

上映時間ちょうど半分くらいで作業員たちが事態に気づき、その後30分ほどはよく見る災害現場の地獄絵図。けっこう血まみれだったし、ちゃんとしてた。痛そうな足も見せてくれたし満足です。映倫Gだしグロってほどではない…。起承転結がハッキリしていて前半のマッタリムードから後半への落差が激しいのも効果的で、それが悲惨な状況を際立たせていたと思います。

普通のパニック映画だったらもっと早めに何か起こりそうなもんですが一時間くらいはトラブルが発生しません。みっちり人間関係を描きつつ丁寧に状況を説明してました。ただ、キャラの掘り下げはあまりなく、主人公に焦点を当てすぎずに絶妙な距離感を保ってる感じ(娘とかはどうでもいい存在だった)。

…なのだけどイマイチ仕事内容が理解できない部分もあったりして、専門用語にも引っかかったり…。リアルな描写を求めるとそういうものも必要だったんだろうし、たぶん自分の理解力不足のためだと思いますが…。

Deepwater Horizon09

映像は大迫力で最高。爆発も噴射も炎の燃え方も好みでしたー。巨大セットを使って撮影したそうで、事故現場の様子は若干わかりにくい部分もあったけど臨場感は強く感じました。なので、炎が燃えているシーンは興奮しっぱなし。痛そうだし熱そうだし、デカいセット使ってるからか質感の説得力もありました。あと、CGも良かった。

前半の演出はわりと淡々としていて、それに対して後半は対照的な感じ。全部が全部ってことでもないと思うけど大筋は実話だと思うので、ストーリーに対してはとくに何も言うことなし。変にドラマチックになりすぎないし、脚本は良かったんじゃないかと思います。

Deepwater Horizon03

序盤の家庭風景も楽しかったです。その後に起こる事故の大まかな状況を子供が説明してくれるのが最高で、しかも子供も理解できる分かりやすさ(振ったコーラ缶に穴を開けて噴射!!)。ここの和やかムードと実際に事故が起きた際の絶望具合にギャップがあったのも良かったと思います。「これから起こることを何も知らずに…」的なアバンタイトルによくあるやつ。

暗喩的なんだけど、直球すぎてギャグにも思えるシーンでした。不要といえば不要だし削っても成立しそうな部分なんですが、個人的には好き。なんとなくサービス精神のようなものを感じたので。

Deepwater Horizon02

人災の原因となる男はBP社の管理職員ヴィドリン。安全管理を怠るクソ野郎。演じているのはジョン・マルコヴィッチでした。こういう悪い役やるとホントに悪い顔にしか見えないし、超ハマり役。すごくイイ。

過剰な描き方とは思わなかったです。けっこう自然。

掘削作業が終わる前に必要なテストの担当者を独断で帰してしまい、登場から印象はあんまり良くない…。工期の遅れを取り戻そうと確認作業を疎かにしてしまうダメ責任者。さらに、セメントの強度確認テストでは異常値が出てんのに「大丈夫だろ、たぶん」って感じで作業を進めてしまい、その結果、仕事場が全部ブッ飛ぶ大惨事に…。

ヤバい事態になってからは、ほとんど喋らず押し黙ってるのがなんかリアルで良かったです。利益のために部下の命を危険に曝しといて、いざ危険な状況に追い込まれると自分の命が一番大切!って…もう最悪。救命ボートに乗り込んでいく姿には腹立ちましたよー。

事件の後、彼は殺人罪で起訴されたそうです。スッキリしたー。

Deepwater Horizon06

で、カート・ラッセルは今回もかっこよかった。

風呂場で全裸のままブッ飛ばされて気を失うんだけど、目覚めたら視覚がダメになってて全身傷だらけ。足にはガラス片がブッ刺さってるし。それでもノソノソ服を着て立ち上がり、危機を食い止めようと奔走する超カッコイイ上司。「やることやるぞ」って感じの姿にヤラれましたー。弱音も一切吐かないし。全裸で血まみれになる状況も個人的には好きです、無防備で。

そしてマルコヴィッチと向かい合って対峙する場面がもう最高。言葉は要らないし表情だけで言わんとすることがガンガン伝わってくる感じ。二人とも名優だなーと改めて思いました。すごい。カートは7年連続で安全賞を受賞しているスゴイ男という設定なんですが、電話対応で判断ミスをしちゃったのは気が緩んでたからなのかな…。タイミングも悪かったのかも。

Deepwater Horizon12

個人的に贔屓のデブ(イーサン・サプリー)が出演してんのも嬉しかった!!マルコヴィッチにせっつかれてしょうがなく連絡を取り不安を抱えたまま作業を行い、最終的に亡くなってしまう悲しい人…。終盤までは誰が生きてて誰が死んだのかあまり分からず、最後のほうで死んでたことに気づき…少し虚しい気持ちになりました…。死にざまが見たかった!

上司に反抗できない感じとか、生命の危険が迫っている緊急事態でも「権限が無いからできない!」とか、なんだか厭な上下関係なんだけど職場で日常的に目にする光景って感じでしたねー。イヤな上司ってホントにイヤだなー。

Deepwater Horizon13

個人的に胸アツだったのは、ヒロインっぽくない女(ジーナ・ロドリゲス)が終盤になって突然ヒロイン的な立場にポジションを変える展開とか。「跳ぶか死ぬか、どちらか選べ!」みたいな究極の選択も面白かったし急にヒーロー感がグングン増していく主人公も良かった。テンション上がりましたよ。

ここは「さすがバトルシップの監督だッ!」という感じで好き。

Deepwater Horizon10

「予想できない驚きの展開」とかはこれといってないんで大筋はけっこう普通なんだけど、実話ベースの内容だしそのへんは気にもなりませんでしたねー。ラストで裁判を受ける流れになるのですが、そこは案外アッサリ描き、最後は「現在の彼らはどうなったのか?」というもの。オーソドックスで手堅い作りだったなーと思いました。泣き叫ぶ遺族に胸ぐら掴まれる主人公とか…。

ネクタイの色が施設で最悪の事態が起こったときに点灯するマゼンタの警告灯と同じ縁起の悪い色…とか暗喩的なこともいろいろやってたようです。観てる間はちっとも気づかなかったけど。

ということで良かったです。こういう人災をしっかり娯楽にしちゃうアメリカって国はやっぱりすごいなーとも思いました。邦題は、実際に観てみたら本当にオーシャンでバーニングしてるような内容だったので、良いんじゃないの!って感じ。

Deepwater Horizon07

オチは実話ベース映画のお約束、ご本人さんの写真が登場パターン。

結果的には、現場にいた126人のうち11人の方々が亡くなったそうです。爆発とか噴射の規模を考えると奇跡的なのかもしれません…。正直もっといっぱい死んでんのかと思ってたんで驚きました。

明確に死にざまを描く描写はなかったと思います。まあ、けど、状況的に人が死んでてもおかしくないのは一目瞭然だし、実際に起こった人災を描いてるんでそのあたりの配慮は必要だったのかなと…。物足りないといえば物足りない気もするけどー。うーん。

ともかく、次のピーター・バーグは『パトリオット・デイ』!楽しみ!

Deepwater Horizon05

機械の説明書は何が一番重要かって、わかりやすいこと!


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