いけにえ映画狂い

外国映画の感想文。お気に入りシーン備忘録など。ネタバレしてます!

ドラマ

『ハクソー・リッジ』感想。(PG12)

ありがとう、メルギブ。
個人的評価:★★★★★★★★★★ 100点
Hacksaw Ridge 00
2017年06月24日公開/139分/オーストラリア・アメリカ/映倫:PG12
原題:HACKSAW RIDGE
監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド、テリーサ・パーマー、サム・ワーシントン、ヴィンス・ヴォーン、ヒューゴ・ウィーヴィング、ルーク・ブレイシー、レイチェル・グリフィス

10年ぶりのメル・ギブソン監督作。『プライベート・ライアン』が引き合いに出されるのも納得の大傑作でしたー。未見の方はとりあえず劇場へ!

以下、ネタバレしてます。

Hacksaw Ridge 07

あらすじ

第2次世界大戦中、デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、人を殺してはいけないという信念を持ち、軍隊に入ってもその意思を変えようとしなかった。彼は、人の命を奪うことを禁ずる宗教の教えを守ろうとするが、最終的に軍法会議にかけられる。その後、妻(テリーサ・パーマー)と父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の尽力により、デズモンドは武器の携行なしに戦場に向かうことを許可され……。
(以上シネマトゥデイより)

Hacksaw Ridge 01

感想

いやーーもう最ッ高。監督メル・ギブソンなので面白くないはずがない!とは思っていたんですが、今回も凄まじかった…。もう圧倒的!一切容赦なし!

前半は「主人公がなぜ武器を持たないのか!?」ということをみっちり描き、後半は地獄の沖縄戦って感じでした。殺すことが当たり前という特殊な状況下で自分らしく生きた衛生兵の物語。戦争という究極の修羅場においても信念を曲げずに自分を貫き、75人もの命を救った良心的兵役拒否者が主人公。まず、「戦争には参加するが殺人は絶対的に拒否する!」という設定がすごく良い。そんで、これが実話っていうところもまたすごい。

人を殺すという行為がいかに異常なことなのか、また、戦争がいかに無意味なことなのか、そういったことを手加減なしに突き付けてくる内容。間違いなく戦争映画史に残る傑作だと思います。

Hacksaw Ridge 10

とりあえず戦闘シーンが最高すぎ。戦場とは人体が破壊される地獄なのだ…!

予想はしてたけどゴアゴアな人体破壊のオンパレードで、もう凄い…。衝撃的だったし圧倒されました。そこらじゅうで人間がミンチになってて、肉塊の山盛り状態。戦場で兵士は火だるまとなり、敵も味方も関係なく頭や身体をふっ飛ばされてあっけなく死んでいく、バラバラになって転がった屍には蛆がわきデカい鼠が集り、仲間の死体さえも盾に利用される狂った非日常空間。

現場は死屍累々の地獄絵図。そこに丸腰でいることの恐怖感…。観ている自分が戦場に投げ込まれたような臨場感があり、音圧も凄まじかった。死にざまは荒唐無稽な面白さよりもリアリティを重視していたと思います。

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『ランボー 最後の戦場』級の人体破壊描写が連続する地獄絵図…。あれよりもっと生々しいかも。かなりリアルで作り物感ほとんどなし。『パッション』終盤のキリスト様とか『アポカリプト』の取り出された内臓レベルのゴア描写がそこらじゅうにゴロゴロ転がってる修羅場が後半は延々と続きます…。あと『スターシップ・トゥルーパーズ』の影響もありそう。

文句なしの残酷表現だと思いました。『ブレイブ・ハート』でも血塗れの殺し合いを描いていましたが、今回はあれを百倍ハードにした感じ! 過剰っちゃ過剰なんだけど、実際の人死にはこれくらい過剰なものなんじゃないの?とも思うので、うん…これが戦争でしょう。これが戦争だッ!!

Hacksaw Ridge 14

(不謹慎かもだけど)正直むちゃくちゃ面白かったです、皮膚のビロンビロン具合とかたまらん。あと、内臓のミンチ具合も最高だし。反戦映画は残酷描写を徹底的に!ってのが基本だと思うんですが、もうやりすぎなくらい血みどろで…凄い。特殊メイク&特殊効果の方々も良い仕事してました。迫力ありすぎて、笑ってしまうようなゴア感覚。CGを極力使用しないっていう撮影方法はジョージ・ミラーへのリスペクトなのかなーとかも思っちゃいました。

Hacksaw Ridge 17

戦争の超残酷さはもちろんなんですが、それ以上に重要だったのがヒューマンドラマ部分だと思います。テーマとなるのは主人公の「信念」。『顔のない天使』でも『ブレイブハート』でも『パッション』でも『アポカリプト』でも形は違えどそれぞれ一貫して「信念」を描いてきたメル・ギブソン監督。どれも「人を救う」という点では共通しており、今回はどストレートに「人を救う」話。ヒーローを描くのも毎度のことなので『ハクソー・リッジ』はメルギブの集大成といっても過言じゃない映画かもしれません。

演じるアンドリュー・ガーフィールドもハマってましたねー。

Hacksaw Ridge 25

幸せな思い出の現場が小高い岩山の「崖」の上ってのも良かったです、後に妻となる彼女ともそこへ行きます。このへんは決戦の舞台となる崖を意識してるんだと思いますけど、幸福な場所であるはずの崖が地獄になったり、幼少期のトラウマである「レンガ」と「ベルト」で人命を救助したりと小道具の使い方や対比がいちいち巧い。

ハクソー・リッジとは沖縄戦において最も熾烈といわれた激戦地・前田高地のことだそうです。詳しい戦況説明などはほぼありませんでしたが、重要なのはデズモンドの信念を描くことなので問題なかったと思います。二時間を超える上映時間も長さを感じさせずテンポも良いのであっという間。これだけの話を描くには十分必要な時間だったのかなと。

Hacksaw Ridge 03

後半の描写がとにかく強烈な映画でしたが、前半もメチャクチャ面白いです。信仰に目覚めるトラウマ体験、暴力を振るうPTSDの父、軍隊への入隊、仲間からの激しいシゴキ、軍法会議と父の愛などなど戦地に行き着くまでの過程がじっくり描きこまれています。ここが超しっかりしているからこそ後半の地獄絵図が際立ってくるという構造。

個人的に共感したのはデズモンドが兵士に志願する理由で、「みんな戦ってるから」と単純なところがすごく良かったです。前半から「普通じゃない部分」をガンガン現してくる主人公ですが、同時にしっかり共感させるてくれる言動なども存在します。そのために狂気を狂気と思えなくなってくる瞬間があり、傍から見れば「超やばい奴」には違いないんですがそういう人間になる過程を知ってしまっているため擁護したくなる、そんな感じ(うまく言えない)。

Hacksaw Ridge 21

日本兵に関してはけっこうステレオタイプな描き方でした。けど、あくまでもアメリカ人目線の物語なのでまあ予想の範囲内だったかなーと思います。

切腹は岡本喜八の『沖縄決戦』でも描かれていましたが、直後の首チョンパはさすがメルギブ!!という感じ。同時に日本兵が白旗振って降参…からの姑息なダマシ討ち!ってのも描いているため、ここは観た人の賛否が大きそう…。ただ、異教徒の描き方としては簡潔的でわかりやすいし、個人的にはメッチャ面白かったですよ。刀を振り下ろす瞬間はほとんどご褒美みたいな(笑)。

Hacksaw Ridge 05

テリーサ・パーマーは登場するごとに衣裳チェンジしてるので、コスプレ感が最高でした~。金髪・青い瞳・白衣の天使というファーストショットも完璧。主人公が彼女に惹かれたのは「人を救う側の人間」ってのも理由としてあったと思います。画的に魅せる演出もすごく良かった。

Hacksaw Ridge 26

伏線なども含めてかなり練られた脚本だと思いました。「銃に触れない主人公」なんですが、実際は終盤で銃を手にする瞬間があり、人を殺す道具で人を救うという展開が気持ち良かった。銃との距離感・使い方・触れさせ方も無駄がなく上手い。

それと、鬼教官(ってほどでもないか)がヴィンス・ヴォーンというのも嬉しかったですねー。役者はみんな大好きでしたよ。もちろんヒューゴ・ウィーヴィングも素晴らしかったし!

Hacksaw Ridge 22

ということで平凡な感想しか出てきませんが、信念を貫くことの素晴らしさをおしえてくれる良い戦争映画だったと思います。それと、単純にむちゃくちゃ面白かった。

結局何が一番良かったのか考えると「みんなにバカにされ臆病者扱いされてたアイツが戦地で英雄に!」というよくある超絶胸アツ展開かも、個人的には。細かい部分もいろいろ好きだったんだけど、一番心に響いたのはそこかなと。

デズモンドの信念が最も表れていたと思うのは、洞窟で瀕死の日本兵と遭遇するシーンでした。敵も味方も関係なく「命を救いたい」という気持ちが見ていてすごく伝わってくる、聖人扱いされるのも納得です。自分はこんな人間には決してなれないけど素直にすごいなあと思うし、拍手喝采したい気分でした。それと、やっぱり「武器を持たずに沖縄戦に巻きこまれていく男の実話」ってのが強烈で、とにかくもう感動した。文句なし。なので100点。

今後も「俺はこう思うんだよ!」って感じのメルギブ映画を撮り続けてほしいなーと思います。ありがとうございました!

Hacksaw Ridge 23

ラストは実際のデズモンド・ドスが登場。実話ベースの映画にありがちな映像ですが、やっぱりご本人が登場すると胸が熱くなる…。2004年に制作されたドキュメンタリー『The Conscientious Objector』もその後で見たのですが、こっちもヤバかったッ!

mel

尊い。


↑予告


『バーニング・オーシャン』感想。

世界最大級の「人災」と言われるこの事故はなぜ起こったのか?
施設内に残された126人の運命は?
個人的評価:★★★★★★★☆☆☆ 70点
Deepwater Horizon
2017年04月21日公開/107分/アメリカ/映倫:G
原題:DEEPWATER HORIZON
監督:ピーター・バーグ
出演:マーク・ウォールバーグ、カート・ラッセル、ジョン・マルコヴィッチ、ジーナ・ロドリゲス、ディラン・オブライエン、ケイト・ハドソン、ダグラス・M・グリフィン、ジェームズ・デュモン、ジョー・クレスト、ブラッド・リーランド、J・D・エヴァーモア、イーサン・サプリー、トレイス・アドキンス、ジャストン・ストリート

当時ニュースで見た記憶はあるんですが「なんか海面に石油が漂ってたな…」程度なので、まあ、詳細はほとんど何も知らずに観た感じです。

ここが好きとか嫌いとかダラダラ書いてるだけの感想文。ネタバレしてます!

Deepwater Horizon01

あらすじ

メキシコ湾沖80キロメートルにある石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」で、海底油田からの逆流によって上昇した天然ガスへの引火が原因で大爆発が発生。現場で働いていた作業員126人が施設内で足止めを食らう。事故により多数の行方不明者と負傷者を出す大惨事となり……。
(以上シネマトゥデイより)

Deepwater Horizon08

感想

いやー、めちゃくちゃ面白かったです。好き。2010年にメキシコ湾で起きた原油流出事故を元にした実録モノ。「なぜこんな事態になったのか?」という惨事に至るまでの過程と、そこからの生還を描いた話。

アメリカ史上最悪の人災らしいですね(よく知らないけど)。

実際に起きた事件ですし人も亡くなっているので「面白い」とか「楽しい」とか不謹慎に思われそうだから若干言いいずらい気もするけど(まあそんな映画いっぱいあるし気にしなくてもいいか)、最初っから最後まで退屈せずに楽しめましたよ。上映時間もちょうどよかったと思います。長さは感じなかった。

Deepwater Horizon14

最大の見せ場は、事故が起きてバーニングする瞬間。もう観る前から大惨事が起こってしまうのは知っちゃってるんですが「いったいいつ起こるのか!?」って部分でかなりワクワクできた気がします。ここの部分でわりと長めに引っ張っているんで、正直ちょっと前半は間延びしている印象もありました。けど個人的には「いい焦らし」だったなと(笑)。事故が起こりそうで起こらなかったりするんで、そのへんの焦らし加減が好きでした。今か今かと待ち続けて「来るぞ来るぞ………キターーー!!」って感じ。大噴射!大爆発!最高!!こういう部分もパニック映画の醍醐味なんじゃないかなーって思います。

『バトルシップ』みたいな荒唐無稽な展開よりは、事実を忠実に再現することを優先していた印象です。前作『ローン・サバイバー』に続いて硬派な作り。多人数をガシガシ捌いて魅せていく演出は『キングダム/見えざる敵』なんかも思い出しました。本作も脚本は同じマシュー・マイケル・カーナハン。

Deepwater Horizon11

上映時間ちょうど半分くらいで作業員たちが事態に気づき、その後30分ほどはよく見る災害現場の地獄絵図。けっこう血まみれだったし、ちゃんとしてた。痛そうな足も見せてくれたし満足です。映倫Gだしグロってほどではない…。起承転結がハッキリしていて前半のマッタリムードから後半への落差が激しいのも効果的で、それが悲惨な状況を際立たせていたと思います。

普通のパニック映画だったらもっと早めに何か起こりそうなもんですが一時間くらいはトラブルが発生しません。みっちり人間関係を描きつつ丁寧に状況を説明してました。ただ、キャラの掘り下げはあまりなく、主人公に焦点を当てすぎずに絶妙な距離感を保ってる感じ(娘とかはどうでもいい存在だった)。

…なのだけどイマイチ仕事内容が理解できない部分もあったりして、専門用語にも引っかかったり…。リアルな描写を求めるとそういうものも必要だったんだろうし、たぶん自分の理解力不足のためだと思いますが…。

Deepwater Horizon09

映像は大迫力で最高。爆発も噴射も炎の燃え方も好みでしたー。巨大セットを使って撮影したそうで、事故現場の様子は若干わかりにくい部分もあったけど臨場感は強く感じました。なので、炎が燃えているシーンは興奮しっぱなし。痛そうだし熱そうだし、デカいセット使ってるからか質感の説得力もありました。あと、CGも良かった。

前半の演出はわりと淡々としていて、それに対して後半は対照的な感じ。全部が全部ってことでもないと思うけど大筋は実話だと思うので、ストーリーに対してはとくに何も言うことなし。変にドラマチックになりすぎないし、脚本は良かったんじゃないかと思います。

Deepwater Horizon03

序盤の家庭風景も楽しかったです。その後に起こる事故の大まかな状況を子供が説明してくれるのが最高で、しかも子供も理解できる分かりやすさ(振ったコーラ缶に穴を開けて噴射!!)。ここの和やかムードと実際に事故が起きた際の絶望具合にギャップがあったのも良かったと思います。「これから起こることを何も知らずに…」的なアバンタイトルによくあるやつ。

暗喩的なんだけど、直球すぎてギャグにも思えるシーンでした。不要といえば不要だし削っても成立しそうな部分なんですが、個人的には好き。なんとなくサービス精神のようなものを感じたので。

Deepwater Horizon02

人災の原因となる男はBP社の管理職員ヴィドリン。安全管理を怠るクソ野郎。演じているのはジョン・マルコヴィッチでした。こういう悪い役やるとホントに悪い顔にしか見えないし、超ハマり役。すごくイイ。

過剰な描き方とは思わなかったです。けっこう自然。

掘削作業が終わる前に必要なテストの担当者を独断で帰してしまい、登場から印象はあんまり良くない…。工期の遅れを取り戻そうと確認作業を疎かにしてしまうダメ責任者。さらに、セメントの強度確認テストでは異常値が出てんのに「大丈夫だろ、たぶん」って感じで作業を進めてしまい、その結果、仕事場が全部ブッ飛ぶ大惨事に…。

ヤバい事態になってからは、ほとんど喋らず押し黙ってるのがなんかリアルで良かったです。利益のために部下の命を危険に曝しといて、いざ危険な状況に追い込まれると自分の命が一番大切!って…もう最悪。救命ボートに乗り込んでいく姿には腹立ちましたよー。

事件の後、彼は殺人罪で起訴されたそうです。スッキリしたー。

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で、カート・ラッセルは今回もかっこよかった。

風呂場で全裸のままブッ飛ばされて気を失うんだけど、目覚めたら視覚がダメになってて全身傷だらけ。足にはガラス片がブッ刺さってるし。それでもノソノソ服を着て立ち上がり、危機を食い止めようと奔走する超カッコイイ上司。「やることやるぞ」って感じの姿にヤラれましたー。弱音も一切吐かないし。全裸で血まみれになる状況も個人的には好きです、無防備で。

そしてマルコヴィッチと向かい合って対峙する場面がもう最高。言葉は要らないし表情だけで言わんとすることがガンガン伝わってくる感じ。二人とも名優だなーと改めて思いました。すごい。カートは7年連続で安全賞を受賞しているスゴイ男という設定なんですが、電話対応で判断ミスをしちゃったのは気が緩んでたからなのかな…。タイミングも悪かったのかも。

Deepwater Horizon12

個人的に贔屓のデブ(イーサン・サプリー)が出演してんのも嬉しかった!!マルコヴィッチにせっつかれてしょうがなく連絡を取り不安を抱えたまま作業を行い、最終的に亡くなってしまう悲しい人…。終盤までは誰が生きてて誰が死んだのかあまり分からず、最後のほうで死んでたことに気づき…少し虚しい気持ちになりました…。死にざまが見たかった!

上司に反抗できない感じとか、生命の危険が迫っている緊急事態でも「権限が無いからできない!」とか、なんだか厭な上下関係なんだけど職場で日常的に目にする光景って感じでしたねー。イヤな上司ってホントにイヤだなー。

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個人的に胸アツだったのは、ヒロインっぽくない女(ジーナ・ロドリゲス)が終盤になって突然ヒロイン的な立場にポジションを変える展開とか。「跳ぶか死ぬか、どちらか選べ!」みたいな究極の選択も面白かったし急にヒーロー感がグングン増していく主人公も良かった。テンション上がりましたよ。

ここは「さすがバトルシップの監督だッ!」という感じで好き。

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「予想できない驚きの展開」とかはこれといってないんで大筋はけっこう普通なんだけど、実話ベースの内容だしそのへんは気にもなりませんでしたねー。ラストで裁判を受ける流れになるのですが、そこは案外アッサリ描き、最後は「現在の彼らはどうなったのか?」というもの。オーソドックスで手堅い作りだったなーと思いました。泣き叫ぶ遺族に胸ぐら掴まれる主人公とか…。

ネクタイの色が施設で最悪の事態が起こったときに点灯するマゼンタの警告灯と同じ縁起の悪い色…とか暗喩的なこともいろいろやってたようです。観てる間はちっとも気づかなかったけど。

ということで良かったです。こういう人災をしっかり娯楽にしちゃうアメリカって国はやっぱりすごいなーとも思いました。邦題は、実際に観てみたら本当にオーシャンでバーニングしてるような内容だったので、良いんじゃないの!って感じ。

Deepwater Horizon07

オチは実話ベース映画のお約束、ご本人さんの写真が登場パターン。

結果的には、現場にいた126人のうち11人の方々が亡くなったそうです。爆発とか噴射の規模を考えると奇跡的なのかもしれません…。正直もっといっぱい死んでんのかと思ってたんで驚きました。

明確に死にざまを描く描写はなかったと思います。まあ、けど、状況的に人が死んでてもおかしくないのは一目瞭然だし、実際に起こった人災を描いてるんでそのあたりの配慮は必要だったのかなと…。物足りないといえば物足りない気もするけどー。うーん。

ともかく、次のピーター・バーグは『パトリオット・デイ』!楽しみ!

Deepwater Horizon05

機械の説明書は何が一番重要かって、わかりやすいこと!


↑予告


『T2 トレインスポッティング』感想。(R15+)

彼らが選んだ―20年後の「未来」。
原作未読の感想です。
個人的評価:★★★★★★☆☆☆☆ 60点
T2 TRAINSPOTTING
2017年04月08日公開/117分/イギリス/映倫:R15+
原題:T2 Trainspotting
監督:ダニー・ボイル
出演:ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー、ロバート・カーライル、ケリー・マクドナルド、シャーリー・ヘンダーソン、ジェームズ・コスモ、アンジェラ・ネディヤルコーヴァ、アーヴィン・ウェルシュ、アイリーン・ニコラス、ポーリーン・リンチ

名作『トレインスポッティング』の続編作品。めちゃくちゃ大ファンってわけでもないんですが、中学生くらいの頃にレンタルで洋画を観始めた時期に観た映画なので多少は思い入れもあって公開初日に観てきました。とりあえず客席はすごく混んでましたねー。やっぱり人気あるのかな。

なんか文句ばっかりの感想になっちゃったのでファンの方は読まないで!

T1 TRAINSPOTTING

あらすじ

スコットランド、エディンバラ。大金を持ち逃げし20年ぶりにオランダからこの地に舞い戻ってきたマーク・レントン(ユアン・マクレガー)。表向きはパブを経営しながら、売春、ゆすりを稼業とするシック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー)。家族に愛想を尽かされ、孤独に絶望しているスパッド(ユエン・ブレムナー)。刑務所に服役中のベグビー(ロバート・カーライル)。想像通り?モノ分かりの良い大人になれずに荒んだ人生を疾走する彼らの再会、そして彼らが選ぶ未来とは――。
(以上公式サイトより)

T2 TRAINSPOTTING10

感想

嬉しさと悲しさが半々くらいでかなり微妙な気持ちになりました。序盤は本当に懐かしい友人と再会した感覚で「うおおおおお」って感じで少し泣きそうになったりもしたんですが…当り前だけど演者はみんな20年の歳を取っていて、ヨボヨボまではいかないけど若干枯れていて、しかし中身はあの頃のまんま。最終的にはなんだか絶望的な気持ちになって終わりました…。

前作はウンコ撒き散らしたり赤子の死体が首回したり主人公が便器に潜ったりする素敵な薬中映画でした。なので、T1に比べちゃうとそこまで過激な描写はなかったと思いますT2。個人的にトレスポに求めていたものはほとんどなくてオッサンの同窓会ですね。疾走感もほぼなし。モッサリした演出でした。

底辺を這いつくばってなんとか生きてるだけみたいなクズだった彼らは中年のオッサンになっても「ふつうの生活」を実現できず、選択する自由すらもなくなっていき、さらに悲劇的な雰囲気に…。若さが無いためか惨めさが際立って見えました。負のオーラが滲み出てるというか覇気がないというか、笑えない感じに衰えた印象。それが良くもあり悪くもあり…何とも言えず。

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ダニー・ボイルって何かにつけては登場人物を走らせたがるんだよなー!!と思っていたら、今回も冒頭から全力疾走だったので笑いました。12000ポンドを仲間から奪いオランダ・アムステルダムへ逃亡した主人公・レントン。それから20年が経ち、ヘロインはやめたものの今度はエンドルフィン中毒のためにジムで毎日ランニング漬けの日々。昔は路上を走って車にぶつかっていた彼ですが、今回はジムのルームランナーの上で快適にランニング。

そんなある日、心臓発作のために倒れてしまう…。

ここの対比は上手いと思いました。同じことをしていても過去と現在じゃ事情がまったく違い、長い年月が経たことも感じられたし、見せ方も良かった。

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勤めている会社が合併するため学歴のない自分のリストラを確信し、オランダで結婚したものの妻とは不仲…。そんな時に体がダメになり、もう何もかもが絶不調なレントン。そして20年ぶりに故郷のエディンバラへ帰ってくるのだが母親は亡くなっており、人生のドン底に…!

そんな主人公が昔の仲間と再会し、謝罪したり金を返したり強盗したりランニングしたりしながら当時の友情とか生きる希望を取り戻す(?)までを描いた群像劇だったと思います。レントンが選んだものはアディダスだった。

T1ではレントンの心情しか語られませんでしたが、今回は4人が対等に扱われている感じがしました。なので、それぞれのナレーションも多いです。話の軸となるのはレントンとスパッドの関係性で、最終的には過去に仲間を裏切った報いとして命を狙われるハメになりベグビーとの対決になっていきます。実質の主人公はスパッド(禿げてた!)と言ってもいいのかも。

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密閉嘔吐描写はサイコー!!

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懐古主義的なもんをバンバン感じる映画でした。

T1の回想シーンが多すぎてどうなの?と思いましたよ…。しかもどれも描き方が中途半端な上に要所要所にしつこく入れこんでくる感じ。ファン向けに作るのならそういうの排除しても全然伝わると思うし、あくまでも万人に向けての作品だからこうなってんだろうけど説明セリフの多さには興醒め。そういうのが無くてもいきなり話を始められるのが続編映画の魅力だとも思うんですが、「前回のおさらい」が長い上に細切れで…正直しんどかった。

親切といえば親切なんだけど、過剰な接待は嫌いです。

今を楽しむために映画館まで金払って来てんのに「昔は良かったよね、現在は最悪だけどさー☆」とか言われてもなあ(画的に)。監督自身がトレスポの大ファンってのは理解できるしオマージュの数々は嬉しいんだけど「T1サイコーだったよね~!」みたいな映像はもっと削ってもよかった気がします。

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「昔は良かったなぁ…」ってよりは「昔はクソだった、でも今のほうがもっとクソだ!」って感じの内容かもしれない。どっちもあんまり変わんないけど。

T2 TRAINSPOTTING02

テーマは前作と変わらず「人生を選べ」。けど、結局はクズが何を選んだって行き着くところは同じなんですよねー。なんかもう死にたくなる…。

セリフでベラベラ「みんな何かの中毒だ」的なこと言うわりにはしっかり依存を見せてくれる場面が少ないのも気になりました。ドラッグとかセックスとか酒とか暴力とか何でもいいんだけど、要素としては提示するのに描き足りなかったと思います。ヘロインも1シーンだけ(だったと思うけど自信ない…)。なので、鑑賞後に食い足りなさが残りました。唯一ガッツリと描いてるのは「懐古への依存」なんだけど…。

つまり一番描きたいのはそこで、ドラッグは添え物なのかも。

T2 TRAINSPOTTING12

SNSに批判的な意見を投げつけといて若者文化でちゃっかり楽しんじゃってんのもどうかと思いました…。過去を美化しつつ今も楽しむって、どっちつかずで中途半端だし言動と行動が微妙にブレてる部分もなくはなかったような…。

T2 TRAINSPOTTING11

クズだらけの主演陣とは違って唯一まともな大人に成長していたケリー・マクドナルドの登場は嬉しかったです。”世界一汚いトイレ”が一瞬映って喜ぶのと同じ感覚の単なるファンサービスにも思えましたが、素直に嬉しかったなー。結局テンション上がったシーンのほとんどが前作T1の引用というかオマージュ的なやつだった気もしてきました…。T2のオリジナル部分にはそこまで魅力を感じなかったというか、むしろ悲しい気持ちになることが多かった…。脚本があんまり良くないのかも。ジョン・ホッジは苦手。

ゴミの山はしつこいし、これ見よがしな象徴はあんまり好きじゃない。

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ぶっちゃけベグビーに対しては不満タラタラです。ぼくの好きなベグビーではなかったです。T1の時のような手のつけようのないイカれた奴みたいな印象はあまり感じませんでした。激しく老いたし、丸くなった気がします。脱獄方法なんかは普通に気が狂ってて面白かったんだけど。出所後はキチガイっぽさが抑えられてて、老いを感じさせるような仕草もありました。

インポテンツでバイアグラに頼るようなベグビーは見たくなかった。オカマが相手でもギンギンにそそり立つのがベグビーなのに!

突然ブチ切れる変な奴だった頃のピリピリした空気感が好きだっただけに辛い過去を明かされるのはそんなに嬉しいことでもありませんでした…。その瞬間から人間味が増してしまい、トランクに閉じこめられたままフェイドアウトってのも哀れに見えました。仲間への報復は果たせないし、スパッドには甘々だし、息子への感動するような接し方も生ぬるく思えました…。レントンからのベグビーへの想いも響かなかったし泣きたくなった。「いや原作がこうだからしょうがない!」とか言われたら何も言い返せないけど。

ただ、ロバート・カーライルを久々に映画館で見れたのは嬉しかったです。

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55歳だからしょうがないと思うけど、だいぶ太りましたよねー。

T2 TRAINSPOTTING06

終盤はもう気持ち離れすぎてて全くノレず…。いかにもな感動エンディングでWolf Aliceの『Silk』なんかが流れてるのもホントにもう最悪で…最後の最後にレントンが自室でレコードをかけて『ラスト・フォー・ライフ』バーン!!って、ズルすぎ。途中イントロだけ寸止めで聴かせたりしていたので、「いつ流れるんだろうな~」と思っていたらラストでした。

しかもT1で禁断症状が出た時の演出がロングバージョンで延々と…。レントンはドラッグやらずにトリップ状態(?)に突入して、そこに過去の映像なんかカブせてくるから、もう卑怯。ダニー・ボイルは卑怯なやつ。イギー・ポップが流れれば問答無用にテンション上がるしさあ…。やっぱりズルい!

個人的には、踊り狂うにしてもせめて静脈にキツいヘロインを一発ブチ込んでほしかった…。このラストが「俺にとっては郷愁こそが麻薬だッ!」とかいう意味だったらマジで最低(イギー・ポップ=快楽=麻薬なら納得するかも)。

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T3はさすがにないと思うけど4人とも長生きしてください。

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「トレインスポッティング(1996)って面白かったんだな!」ということを再認識させられたので、前作を引き立てる作品としては良い映画なのかもしれません。T2のおかげでT1が以前よりさらに楽しめるような作りにもなってると思います、たぶん。

いろいろ不満もあるけど、みんな元気に生きてたし「まあいいか」という気分にもなりましたね。ぶっちゃけ予告の時点で感動して感涙してしまったので、その分本編に期待しすぎたんです…。全体的に展開は面白かったしスパッドの隠れた才能にはビックリしましたよ。演出と劇伴はダサいと思う部分もあったけど、むしろそこが魅力でもあったりするので、うーん…すごくどっちつかずな感想になりました、すいません。当時とセンスは変わってないと思う。

ということで、「人生を選べ」とかホントどうでもいいし深く思い悩んだって結果は同じ。あと、青春時代なんかクソでいい。ありがたがって懐古するのはクズのやることだッ!…と、アーヴィン・ウェルシュが言っているかどうかは分かりませんが、個人的な解釈はそんな感じ。

Dazed and Confused (1)
Dazed and Confused (2)

『バッド・チューニング』は人生。

porno

原作の『ポルノ』はポルノ映画製作でひとヤマあてようと企む話らしいです。どの程度の脚色してんのかも気になりました。国内版は絶版っぽいですが…。読みたいなー。気になる。


↑予告


『トッド・ソロンズの子犬物語』感想。

人生なんて孤独でみじめで悲しいもの、ダックスフントも人間もそれは同じ。
可愛いワンコ(♀)が飼い主の勝手な都合でヒドい目にあい続ける話…?
個人的評価:★★★★★★★★★☆☆ 80点
Wiener-Dog
2017年01月14日公開/88分/アメリカ/映倫:G
原題:WIENER-DOG
監督:トッド・ソロンズ
出演:エレン・バースティン、キートン・ナイジェル・クック、キーラン・カルキン、ジュリー・デルピー、ダニー・デヴィート、グレタ・ガーウィグ、トレイシー・レッツ、ゾーシャ・マメット

五年ぶりになるトッド・ソロンズの新作です。いやーもう大満足。毎度のことですが今回も露悪的な内容。なので賛否はあるでしょうが、個人的には傑作だと思いましたよ。すごく面白かったです。『ダークホース』では「皮肉な笑いが好きなんだ」ってことをネタにしていましたが、ますます開き直っていってるような気がします。犬好きの方が観たら激怒するようなオチでしたー。

Wiener-Dog003

あらすじ

病気がちな子供を持つ母親(ジュリー・デルピー)は、ダックスフントを新しく家族として迎えるものの、あまりにも問題ばかり起こす子犬に音を上げる。結局その子犬は色々な家庭をたらい回しにされることに。子犬は映画学校の講師を兼任するピンチに陥った脚本家(ダニー・デヴィート)や、ひねくれた女性(エレン・バースティン)のところを渡り歩き……。
(以上シネマトゥデイより)

Wiener-Dog012

感想

4つのエピソードを描いたオムニバスに近い作品だと思います。主人公は飼い主から次の飼い主へと渡り歩いてゆくダックスフント。元ネタはブレッソンの『バルタザールどこへ行く』だったようです。そちらの主人公は一頭のロバで飼い主に振り回されながらも苛酷な旅を続けてラストでのたれ死んでしまう…というブラックコメディです。ソロンズの犬は美しく眠るように死んだりはせず、どストレートな死にざまでした!笑っていいのかダメなのか迷うような…そんな映画です。犬が主人公と書きましたけど、おそらく実質の主人公は犬を取り巻く”腐った人間たち”でしょうねー。

Wiener-Dog001

最初の飼い主は小児ガンを患った少年レミ。彼の父が誕生日にダックスフントをプレゼントしてくれるのです。すぐに仲良くなるレミでしたが、犬のエサにグラノーラ・バーを与えたことで大変な事態に……。結果的にはそれが原因となりダックスフントを手放さなければならなくなってしまうのです。

いつものように今回も冴えない人間しか登場しません。人々は各々なにかしら問題を抱えており、いつもなにかに悩み苦しんでいる…。

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少年の母親役のジュリー・デルピーは最高でした。いちいち毒々しいっていうか、犬への愛情がなくて面白かったですね。「去勢」とか「安楽死」の説明も雑だし、言ってることは正しいんだけど伝え方が最低で…。久しぶりに見たら下半身デブのしわくちゃオバサンに変貌していたのも衝撃的でした。役作りのために美貌を崩壊させちゃったんでしょうか…。デルピー完全に太ってた。

父親役には『KILLER JOE』を書いた劇作家トレイシー・レッツ!(好き!)

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ファレリー兄弟でもやらないようなウンコ描写はサイテーすぎて最高。長々と映し続けて『月の光』流すから、ここのシーンはさすがに馬鹿かと思った…。しかし”不快”を表現しているのなら上手くできているのかも!

「お前らドビュッシーかけときゃ美しく見えるんだろ!?」という皮肉かな。

boyhood

どうでもいいけど似てた。『ストーリーテリング』では『アメリカン・ビューティー』のパロディなんかもやってたし、これもそうなのかな…?

内容は真逆といってもいいかも。ってか、単に似ちゃっただけだと思うけど。肝心な部分が描けてないぞリンクレイター!というあてつけならスゴイ。

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その後、レミの両親はダックスフントを安楽死させることを決意して、地元の動物病院に預けることとなるのですが…。そこで働いていた助手のメガネ女子が犬を抱えて脱走してしまう!彼女のアダ名は”ウィーナー・ドッグ”(犬面)

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最初にグッときたのはやっぱり「ドーン・ウィーナーが生きていた!」ってことですねー。ドーンといえばソロンズの劇場デビュー作『ウェルカム・ドールハウス』の主人公だったメガネの女の子です(あの頃はまだ小学生でした)。『おわらない物語 アビバの場合』の冒頭はドーンの葬式でした。なので、彼女は自殺して死んだのだと思っていたのですが、実はまだ生きていたのです!!獣医の助手として元気に働いているなんて!!(役者はヘザー・マタラッツォからグレタ・ガーウィグに変わっていましたが…)

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もうそれを確認できただけでも嬉しかったですよ。その上、当時は彼女をいじめていたブランドンも登場。二人はスーパーでバッタリ再会し、最終的には、なんとなくイイ仲に…。ブランドンにダウン症の兄弟がいたという事実も驚きでしたし、演じていたキーラン・カルキンも合っていたと思います。一見するとボンクラに見えますが、寂しげで目に光がない感じがとても良かった。

第2話は比較的希望に溢れる終わり方。登場人物たちが前に進もうとする意欲も多少感じました。まだまだ続きそうな話だし次作があるのなら次も見たい!

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世の中にはダウン症や障害者だっているわけで、そういった人達を排除せずに登場させるトッド・ソロンズはやっぱり愛に溢れた映画監督だと思いますよ。良くも悪くも無差別なんじゃないのかな。夫婦がダウン症のために避妊治療を受けさせられているというのは強烈な一撃でした。犬にも人にも子供にも老人にも容赦なし。しかし、これが現実だし、”普通”なんでしょう。世界は残酷。

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個人的にはダニー・デヴィートが主役の第3話目が一番面白くて好きでした。脚本を売り込もうと必死になるがプロデューサーに軽くあしらわれてしまい、講師を勤める映画学校の学生たちには小バカにされる。みじめで悲しい老いた脚本家が爆弾犯になるまでのストーリー。泣きたくなるくらい冴えない小男。けど、おかしくて笑ってしまう。よくできた喜劇だと思います。

若い頃に一本だけ映画を当てた老人を嘲笑う学生、彼もまた一本の映画が当たっただけの人間なのです。老人と同じような人生を歩むことになるかもしれないが、将来に不安などは感じていない様子…。全体的にはシニカル全開な内容なんですが、この辺のリアリティが一番あったかなー。「好きな映画は?」と問われて「大量に観すぎて思い浮かばないなあ」と延々と続ける学生なんかは単純に「こういう奴いるよなー!」って感じだし、しつこくて面白い!

ソロンズは長編デビュー作『Fear, Anxiety and Depression(恐れと不安と憂鬱)』でウッディ・アレンと作風が似てると言われたことを未だに根に持っているんでしょうか…。アレンが”前時代的”とか”化石”だとか台詞でボロクソに言わせちゃうのはそのまま自虐ネタになっているわけで…NY大学で教鞭をとっている監督ですし、脚本家のモデルはソロンズ自身に間違いないでしょうね。「俺の悪口を言う批評家は爆死させるぜ??」っていうことなのかなー(違うと思うけど)。マジで最高。

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最後の飼い主はエレン・バースティン。豪華なキャスティングですよねー。

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人生は枝分かれした選択肢を諦めていく作業なのです…。もし○○していたら現在はどうなっていたのだろう、と過去を悔いるように未来を見つめるエレン婆。もし芸術の勉強を続けていたのなら、孫に金を無心するだけの虚しい今も存在しなかったのかもしれない。ヌードモデルになって股を広げる人生は本当に正しかったのだろうか…?

死が近付いてくるとこんな心境になるのかも、とも思えましたが、なんとなく虚しいエピソードでした。人はいつでも後悔している生き物だし、それは死ぬまで終わらない…。あまりにも哀しくて虚しくてやるせない。

けど、きっとそんなもんなんでしょうね…。人生はなるようにしかならない。どれだけあがいたところで脚本家が考える「もしも・どうする」が通用しないのがノンフィクションの世界。オムニバス方式のように見えて、実はそれぞれ微妙に繋がっているのも面白かったです。第4話で犬は「ガン(cancer)」と名付けられていましたし…。それにしても、過去の自分が死ぬ間際にお迎えに来るって…イヤだなあ、会いたくない。悪夢でしょ!

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ラストでダックスフントはトラックに轢き殺されてペチャンコになりました。その後も後続の車にしつこく何度も踏み潰されて(4回だけだけど)、死骸の皮は再利用されてロボットになりましたとさ………おしまい。

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キレイゴトばっかり見たいわけじゃないですし「あー現実ってこうだよなぁ」と思わせてくれるトッド・ソロンズの視点はやっぱり面白い。ハリウッド映画が描かない(こともないけど)悲惨な現実を過剰に誇張しすぎずストレートに見せてくれている感じがします。犬がトラックに轢き殺されて死ぬなんてことリアルでは日常茶飯事だろうし、まあ、カワイソウではあるんだけど、人生が終わる瞬間だって似たようなものなんでしょう…。

アンモラルな終着点を想像すれば逆に予定調和かもしれません。ですが「人間って素晴らしい」みたいな安易な結末に落ち着かないのは、個人的に好きですね。死んだら全部が終わり。死体が何に利用されようと知ったこっちゃないですよ。それは人間も犬もどんな生き物も同じ…。

大オチは、正直「そこまでやる!?」って気もしましたけどね(笑)。

toddsolondz

登場するのは”普通”(以下?)の人間たちです。人間なんて誰でも不幸を抱えているもので、人には言えないネガティブな部分を包み隠さず切り取って映像化しちゃうのがトッド・ソロンズなりの優しさなのかなと勝手に思ってます。他人の不幸を見て激昂したりウンザリしちゃう人も多いとは思いますが、それを見て救われる人だっているわけで、そういう人に向けて作品を撮り続けているんですよね、たぶん!

ソロンズの映画にいつも感じることは、ネガティブな人間(小児ガンの少年、犬面の処女、シャブ中の元いじめっ子、ダウン症の夫婦、苦悩する脚本家、メクラの老女など)を肯定してくれるような優しい視点と価値観のフラットさ。そこは全作品に共通しているような気がします。誰にでも生や死や幸や不幸は平等に訪れる、さらに言えば「良い」や「悪い」が無価値であるということ。人生にやたらと意味を付けたがる…そんな映画への皮肉にも思えます。

そういう点も今回はキッチリ一貫していたのかなと。安心しました。
・・・ということで、大傑作。

Wiener-Dog007

ちゃんと首チョンパも見せてくれた!(サービス精神としか思えない)

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あと、インターミッションも最高でしたよ。88分しかない短めの映画なんですが、中盤で休憩時間があるのは笑いましたわ…。トッド・ソロンズってこんなベタなギャグもやるのか!ってことで嬉しくもあり、おかしかったですねー。その間ダックスフントはいくつかの修羅場を渡り歩きながら飼い主から飼い主へと荒野を放浪。いやー面白くないんだけど笑っちゃう。


↑予告


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トッド・ソロンズの最高傑作!

『ブラウン・バニー』感想。(R15)

カンヌ国際映画祭で賛否両論の大論争を巻き起こした問題作。
ギャロ「人を楽しませようという気はない、俺自身が楽しむためだよ」

個人的評価:★★★★★☆☆☆☆☆
brownbunny
2003年11月22日公開/93分/アメリカ・フランス・日本/映倫:R15
原題:THE BROWN BUNNY
監督・脚本・製作・撮影・編集・衣装・メイク・主演:ヴィンセント・ギャロ
出演:ヴィンセント・ギャロ/クロエ・セヴィニー

<あらすじ>
かつての恋人デイジー(クロエ・セヴィニー)に思いを馳せながら、次のレース地を目指してアメリカを横断するバイクレーサー、バド(ヴィンセント・ギャロ)。やがて、彼は目的地カリフォルニアでデイジーと再会するが……。
(以上シネマトゥデイより)

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カンヌで未完成版を上映し大ブーイングで迎えられたという本作。
DVD鑑賞ですが、本編よりもコメンタリーのほうが断然面白かったです。
なので、本編+コメンタリーの感想になります。

コメンタリーは初っ端からギャロがネガティブ全開で最高でした。
「俺の顔って醜いだろ」「ネットで叩かれまくって凹んだ」等々。収録時はちょうど二日前に親友のジョニー・ラモーンズが死亡して落ちこんでいたそうです。

それから、要所要所に入るカンヌへの恨み辛み。
未完成版を上映したのには理由があり、日本の出資者が出品してくれと頼むので(本作は100パーの日本出資)、しょうがなくそれを許諾したと。
その結果、ブーイングの嵐となり、開始10分で観客の大半が退出。
途中からは映画評論家のロジャー・エイバートが劇場で歌いだす事態に発展。

ギャロ「でも、服をたくさん貰えたからカンヌへ行って良かったよ」

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この印象的な塩平原での撮影中、迷子になってビビったギャロ。

前作『バッファロー'66』はメチャクチャ好きだったのですが(拉致した女・クリスティーナ・リッチが主人公を愛してくれる夢のような話)、本作は退屈でした。
道中はひたすら気怠く、伏線も何もないし、オチは予想できるもの。
風景も、感動するほど美しいものではありません。
一応ロードムービーではありますが、ドラマが無いのが致命的。
主人公は『バッファロー'66』と同じように人を愛せない男であり、結局最後までそのまま終わってしまいます。しかも死んだ昔の女を性欲処理の道具のように扱い、口内射精して女を消してしまうという最悪の展開。終盤の描写は過激でしたが、そこへ至るまでのドラマがないので(ショッキングではありましたけど)感動はありません。

brownbunny13
主人公はレーサー!

出来はともかくとしてほとんどの作業をヴィンセント・ギャロ一人で行い、あとは少人数のスタッフのみで撮影を敢行など、超低予算でこんな作品を撮ってしまった意気込みだけは感じます。そこの部分を「独りよがりなワガママ」と感じる人もいるのか知りませんけど、個人的には好意的。
けれど、そんなのは作品の面白さとは別問題なので、本作は、まあ、ツマラナイんですけど、嫌いにはなれないのです…。すごい微妙な気持ちになりましたー。
主演するのなら、せめて撮影くらいは誰かに任せればいいのに、「誰も信用できない」と常にモニターを見ながら自撮り撮影とか…。
なんかちょっと泣けるんですよねー、しかも一生懸命撮った作品が大駄作!
コメンタリー聞いてると、なんとなくドキュメンタリーに見えてくるから不思議。

ここからは旅で出会った女たちを適当に紹介しながら感想書いていきます。

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<ヴァイオレット>
旅の初めに出会う女。
出会う女性の名は、みんな花の名前。
妻が花の名前だったから、それを思い出して惹かれていくのでしょうか。

ヴァイオレットの役は当初キルスティン・ダンストだったそうです。
しかし、それがその後ウィノナ・ライダーという話になり…。
結局はガソリンスタンド近くの町に落ちてた素人をキャスティング!
エージェントとの交渉が面倒で大女優たちを断念したギャロ。
「スパイダーガールや万引き少女を起用しなくてよかった」
…ってことですが、起用した少女への愚痴もしっかり吐いてましたよ。

しかも、この少女は「一緒に旅に出よう」とギャロがしつこく誘うので嫌々ながら車に乗りこんだのに、途中で何故か置いてけぼりを喰らうカワイソウな役。

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<リリー>
寂しそうに広場のベンチに座っていた女。
頭を撫でて「大丈夫?」と声をかけたら、何故か濃厚なキスシーンに突入。
よくわからないけどギャロを愛してくれるのです。

しかし、キスして抱き合ったらこの女性も放置して車で走り去るギャロ!
本人的には感動のドラマだそうですが、わけがわかりません。
彼女は当時すでに54歳。
コメンタリーでは「年齢のわりにはキレイだろ!」と連発。
このシーンもカンヌでは大ブーイング。
そして、映画を悪く批評した女どもを口汚く罵るギャロ様…面白すぎますよ。

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<ローズ>
ラスベガスの立ちんぼ女。娼婦。(本業はストリッパー)
ペンダントの名前を見て、車に乗せ、昼飯をごちそうするギャロ。
しかし、食べ終わってしばらくすると降車を指示。
花の名前だったら誰でもいいから優しくしたい主人公。

このあたりは本物の売春婦も登場したりしてリアル・ピープルな顔面がちょっと面白かったですよ。撮影は基本的にゲリラで、撮り終わってから事後承諾というスタイル。荒んだ地域だったため、撮影中に何度も逮捕され40回も手錠をかけられたというギャロ。911のせいもあったようです。

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<デイジー>
最も重要な女であり、本作は彼女を求めて旅を続ける男の物語。

こんな映画の出演を承諾してしまうクロエ・セヴィニーの女優魂はホンモノだ!
ということで、この後、事務所を解雇されるなど色々あったようですが、近年ではポルノ映画『ディープ・スロート』を題材にした『ラブレース』にも出演していたりして(非エロの役でしたが)今後も追い続けたい女優さんです。

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そして例の過激描写。
日本ではボカシが入ってますが、海外ではこれを無修正上映。
(ネットで検索したらすぐに見れます)

「日本は変わってる。
淫らなことがはびこっているのに、陰毛は見せてはいけないとは。
訳がわからないし、奇妙だよ。
日本では胸が悪くなるような変態の極みも見た。
陰毛くらい、なんだ!
変だよ。
俺の視点だから変に思えるのだろう。
日本のことをもっと知ればわかるのかもしれない。
でも俺の狭いアメリカ人の視点では、普通じゃないね。
毛が問題なのが普通じゃない。」

以上ヴィンセント・ギャロ談。

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露骨なセックスシーンの目的は親密さが複雑さを増すことを示すためだ。
ポルノには罪悪感、責任感、結果、コンプレックス、怒り、憤り、不安、恐れなどは存在しない。つまり、このシーンの狙いは、インパクトのある描写によって性的快楽とファンタジーを増幅させるためだ。

(うーん…意味わからん)

そして、衝撃のラスト!

クロエ「私はもう死んでるのよ!!!!」

これは本当に驚きません!
予想できる展開でした。
そもそも登場からして不自然。
その後、回想など入れつつ真相を解説。
クロエはドラッグに溺れ酩酊した挙句、男たちにレイプされ、嘔吐したものが喉に詰まり窒息死していたのです。ギャロはそれを見て見ぬふりして、ついには記憶から消し去ってしまっていたんですね。

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つまり彼はホテルに来てからずっと一人だったのです…。
じゃあ、さっきの性行為は何だったのかというと、すべて妄想
要はオナニーしてたんですよ。
クロエの口内に射精してからのギャロは本当に酷い。
ティッシュをゴミ箱に投げ捨てるかのような女性の扱いでしたよ!
死んだ妻の想い出が汚れて終わる最低なラスト。
彼は元々人を愛せない男だったのでしたー。

脚本の段階では主人公がバイクで壁に激突して死ぬ話だったらしいです。
……絶対にそっちのほうがよかった気がする!!

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最後の最後は、ぼやぼやのストップモーションでEND!!

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