ありがとう、メルギブ。
10年ぶりのメル・ギブソン監督作。『プライベート・ライアン』が引き合いに出されるのも納得の大傑作でしたー。未見の方はとりあえず劇場へ!
以下、ネタバレしてます。
(以上シネマトゥデイより)
前半は「主人公がなぜ武器を持たないのか!?」ということをみっちり描き、後半は地獄の沖縄戦って感じでした。殺すことが当たり前という特殊な状況下で自分らしく生きた衛生兵の物語。戦争という究極の修羅場においても信念を曲げずに自分を貫き、75人もの命を救った良心的兵役拒否者が主人公。まず、「戦争には参加するが殺人は絶対的に拒否する!」という設定がすごく良い。そんで、これが実話っていうところもまたすごい。
人を殺すという行為がいかに異常なことなのか、また、戦争がいかに無意味なことなのか、そういったことを手加減なしに突き付けてくる内容。間違いなく戦争映画史に残る傑作だと思います。
とりあえず戦闘シーンが最高すぎ。戦場とは人体が破壊される地獄なのだ…!
予想はしてたけどゴアゴアな人体破壊のオンパレードで、もう凄い…。衝撃的だったし圧倒されました。そこらじゅうで人間がミンチになってて、肉塊の山盛り状態。戦場で兵士は火だるまとなり、敵も味方も関係なく頭や身体をふっ飛ばされてあっけなく死んでいく、バラバラになって転がった屍には蛆がわきデカい鼠が集り、仲間の死体さえも盾に利用される狂った非日常空間。
現場は死屍累々の地獄絵図。そこに丸腰でいることの恐怖感…。観ている自分が戦場に投げ込まれたような臨場感があり、音圧も凄まじかった。死にざまは荒唐無稽な面白さよりもリアリティを重視していたと思います。
『ランボー 最後の戦場』級の人体破壊描写が連続する地獄絵図…。あれよりもっと生々しいかも。かなりリアルで作り物感ほとんどなし。『パッション』終盤のキリスト様とか『アポカリプト』の取り出された内臓レベルのゴア描写がそこらじゅうにゴロゴロ転がってる修羅場が後半は延々と続きます…。あと『スターシップ・トゥルーパーズ』の影響もありそう。
文句なしの残酷表現だと思いました。『ブレイブ・ハート』でも血塗れの殺し合いを描いていましたが、今回はあれを百倍ハードにした感じ! 過剰っちゃ過剰なんだけど、実際の人死にはこれくらい過剰なものなんじゃないの?とも思うので、うん…これが戦争でしょう。これが戦争だッ!!
(不謹慎かもだけど)正直むちゃくちゃ面白かったです、皮膚のビロンビロン具合とかたまらん。あと、内臓のミンチ具合も最高だし。反戦映画は残酷描写を徹底的に!ってのが基本だと思うんですが、もうやりすぎなくらい血みどろで…凄い。特殊メイク&特殊効果の方々も良い仕事してました。迫力ありすぎて、笑ってしまうようなゴア感覚。CGを極力使用しないっていう撮影方法はジョージ・ミラーへのリスペクトなのかなーとかも思っちゃいました。
戦争の超残酷さはもちろんなんですが、それ以上に重要だったのがヒューマンドラマ部分だと思います。テーマとなるのは主人公の「信念」。『顔のない天使』でも『ブレイブハート』でも『パッション』でも『アポカリプト』でも形は違えどそれぞれ一貫して「信念」を描いてきたメル・ギブソン監督。どれも「人を救う」という点では共通しており、今回はどストレートに「人を救う」話。ヒーローを描くのも毎度のことなので『ハクソー・リッジ』はメルギブの集大成といっても過言じゃない映画かもしれません。
演じるアンドリュー・ガーフィールドもハマってましたねー。
幸せな思い出の現場が小高い岩山の「崖」の上ってのも良かったです、後に妻となる彼女ともそこへ行きます。このへんは決戦の舞台となる崖を意識してるんだと思いますけど、幸福な場所であるはずの崖が地獄になったり、幼少期のトラウマである「レンガ」と「ベルト」で人命を救助したりと小道具の使い方や対比がいちいち巧い。
ハクソー・リッジとは沖縄戦において最も熾烈といわれた激戦地・前田高地のことだそうです。詳しい戦況説明などはほぼありませんでしたが、重要なのはデズモンドの信念を描くことなので問題なかったと思います。二時間を超える上映時間も長さを感じさせずテンポも良いのであっという間。これだけの話を描くには十分必要な時間だったのかなと。
後半の描写がとにかく強烈な映画でしたが、前半もメチャクチャ面白いです。信仰に目覚めるトラウマ体験、暴力を振るうPTSDの父、軍隊への入隊、仲間からの激しいシゴキ、軍法会議と父の愛などなど戦地に行き着くまでの過程がじっくり描きこまれています。ここが超しっかりしているからこそ後半の地獄絵図が際立ってくるという構造。
個人的に共感したのはデズモンドが兵士に志願する理由で、「みんな戦ってるから」と単純なところがすごく良かったです。前半から「普通じゃない部分」をガンガン現してくる主人公ですが、同時にしっかり共感させるてくれる言動なども存在します。そのために狂気を狂気と思えなくなってくる瞬間があり、傍から見れば「超やばい奴」には違いないんですがそういう人間になる過程を知ってしまっているため擁護したくなる、そんな感じ(うまく言えない)。
日本兵に関してはけっこうステレオタイプな描き方でした。けど、あくまでもアメリカ人目線の物語なのでまあ予想の範囲内だったかなーと思います。
切腹は岡本喜八の『沖縄決戦』でも描かれていましたが、直後の首チョンパはさすがメルギブ!!という感じ。同時に日本兵が白旗振って降参…からの姑息なダマシ討ち!ってのも描いているため、ここは観た人の賛否が大きそう…。ただ、異教徒の描き方としては簡潔的でわかりやすいし、個人的にはメッチャ面白かったですよ。刀を振り下ろす瞬間はほとんどご褒美みたいな(笑)。
テリーサ・パーマーは登場するごとに衣裳チェンジしてるので、コスプレ感が最高でした~。金髪・青い瞳・白衣の天使というファーストショットも完璧。主人公が彼女に惹かれたのは「人を救う側の人間」ってのも理由としてあったと思います。画的に魅せる演出もすごく良かった。
伏線なども含めてかなり練られた脚本だと思いました。「銃に触れない主人公」なんですが、実際は終盤で銃を手にする瞬間があり、人を殺す道具で人を救うという展開が気持ち良かった。銃との距離感・使い方・触れさせ方も無駄がなく上手い。
それと、鬼教官(ってほどでもないか)がヴィンス・ヴォーンというのも嬉しかったですねー。役者はみんな大好きでしたよ。もちろんヒューゴ・ウィーヴィングも素晴らしかったし!
ということで平凡な感想しか出てきませんが、信念を貫くことの素晴らしさをおしえてくれる良い戦争映画だったと思います。それと、単純にむちゃくちゃ面白かった。
結局何が一番良かったのか考えると「みんなにバカにされ臆病者扱いされてたアイツが戦地で英雄に!」というよくある超絶胸アツ展開かも、個人的には。細かい部分もいろいろ好きだったんだけど、一番心に響いたのはそこかなと。
デズモンドの信念が最も表れていたと思うのは、洞窟で瀕死の日本兵と遭遇するシーンでした。敵も味方も関係なく「命を救いたい」という気持ちが見ていてすごく伝わってくる、聖人扱いされるのも納得です。自分はこんな人間には決してなれないけど素直にすごいなあと思うし、拍手喝采したい気分でした。それと、やっぱり「武器を持たずに沖縄戦に巻きこまれていく男の実話」ってのが強烈で、とにかくもう感動した。文句なし。なので100点。
今後も「俺はこう思うんだよ!」って感じのメルギブ映画を撮り続けてほしいなーと思います。ありがとうございました!
ラストは実際のデズモンド・ドスが登場。実話ベースの映画にありがちな映像ですが、やっぱりご本人が登場すると胸が熱くなる…。2004年に制作されたドキュメンタリー『The Conscientious Objector』もその後で見たのですが、こっちもヤバかったッ!
個人的評価:★★★★★★★★★★ 100点
2017年06月24日公開/139分/オーストラリア・アメリカ/映倫:PG12
原題:HACKSAW RIDGE
監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド、テリーサ・パーマー、サム・ワーシントン、ヴィンス・ヴォーン、ヒューゴ・ウィーヴィング、ルーク・ブレイシー、レイチェル・グリフィス
原題:HACKSAW RIDGE
監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド、テリーサ・パーマー、サム・ワーシントン、ヴィンス・ヴォーン、ヒューゴ・ウィーヴィング、ルーク・ブレイシー、レイチェル・グリフィス
10年ぶりのメル・ギブソン監督作。『プライベート・ライアン』が引き合いに出されるのも納得の大傑作でしたー。未見の方はとりあえず劇場へ!
以下、ネタバレしてます。
あらすじ
第2次世界大戦中、デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、人を殺してはいけないという信念を持ち、軍隊に入ってもその意思を変えようとしなかった。彼は、人の命を奪うことを禁ずる宗教の教えを守ろうとするが、最終的に軍法会議にかけられる。その後、妻(テリーサ・パーマー)と父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の尽力により、デズモンドは武器の携行なしに戦場に向かうことを許可され……。(以上シネマトゥデイより)
感想
いやーーもう最ッ高。監督メル・ギブソンなので面白くないはずがない!とは思っていたんですが、今回も凄まじかった…。もう圧倒的!一切容赦なし!前半は「主人公がなぜ武器を持たないのか!?」ということをみっちり描き、後半は地獄の沖縄戦って感じでした。殺すことが当たり前という特殊な状況下で自分らしく生きた衛生兵の物語。戦争という究極の修羅場においても信念を曲げずに自分を貫き、75人もの命を救った良心的兵役拒否者が主人公。まず、「戦争には参加するが殺人は絶対的に拒否する!」という設定がすごく良い。そんで、これが実話っていうところもまたすごい。
人を殺すという行為がいかに異常なことなのか、また、戦争がいかに無意味なことなのか、そういったことを手加減なしに突き付けてくる内容。間違いなく戦争映画史に残る傑作だと思います。
とりあえず戦闘シーンが最高すぎ。戦場とは人体が破壊される地獄なのだ…!
予想はしてたけどゴアゴアな人体破壊のオンパレードで、もう凄い…。衝撃的だったし圧倒されました。そこらじゅうで人間がミンチになってて、肉塊の山盛り状態。戦場で兵士は火だるまとなり、敵も味方も関係なく頭や身体をふっ飛ばされてあっけなく死んでいく、バラバラになって転がった屍には蛆がわきデカい鼠が集り、仲間の死体さえも盾に利用される狂った非日常空間。
現場は死屍累々の地獄絵図。そこに丸腰でいることの恐怖感…。観ている自分が戦場に投げ込まれたような臨場感があり、音圧も凄まじかった。死にざまは荒唐無稽な面白さよりもリアリティを重視していたと思います。
『ランボー 最後の戦場』級の人体破壊描写が連続する地獄絵図…。あれよりもっと生々しいかも。かなりリアルで作り物感ほとんどなし。『パッション』終盤のキリスト様とか『アポカリプト』の取り出された内臓レベルのゴア描写がそこらじゅうにゴロゴロ転がってる修羅場が後半は延々と続きます…。あと『スターシップ・トゥルーパーズ』の影響もありそう。
文句なしの残酷表現だと思いました。『ブレイブ・ハート』でも血塗れの殺し合いを描いていましたが、今回はあれを百倍ハードにした感じ! 過剰っちゃ過剰なんだけど、実際の人死にはこれくらい過剰なものなんじゃないの?とも思うので、うん…これが戦争でしょう。これが戦争だッ!!
(不謹慎かもだけど)正直むちゃくちゃ面白かったです、皮膚のビロンビロン具合とかたまらん。あと、内臓のミンチ具合も最高だし。反戦映画は残酷描写を徹底的に!ってのが基本だと思うんですが、もうやりすぎなくらい血みどろで…凄い。特殊メイク&特殊効果の方々も良い仕事してました。迫力ありすぎて、笑ってしまうようなゴア感覚。CGを極力使用しないっていう撮影方法はジョージ・ミラーへのリスペクトなのかなーとかも思っちゃいました。
戦争の超残酷さはもちろんなんですが、それ以上に重要だったのがヒューマンドラマ部分だと思います。テーマとなるのは主人公の「信念」。『顔のない天使』でも『ブレイブハート』でも『パッション』でも『アポカリプト』でも形は違えどそれぞれ一貫して「信念」を描いてきたメル・ギブソン監督。どれも「人を救う」という点では共通しており、今回はどストレートに「人を救う」話。ヒーローを描くのも毎度のことなので『ハクソー・リッジ』はメルギブの集大成といっても過言じゃない映画かもしれません。
演じるアンドリュー・ガーフィールドもハマってましたねー。
幸せな思い出の現場が小高い岩山の「崖」の上ってのも良かったです、後に妻となる彼女ともそこへ行きます。このへんは決戦の舞台となる崖を意識してるんだと思いますけど、幸福な場所であるはずの崖が地獄になったり、幼少期のトラウマである「レンガ」と「ベルト」で人命を救助したりと小道具の使い方や対比がいちいち巧い。
ハクソー・リッジとは沖縄戦において最も熾烈といわれた激戦地・前田高地のことだそうです。詳しい戦況説明などはほぼありませんでしたが、重要なのはデズモンドの信念を描くことなので問題なかったと思います。二時間を超える上映時間も長さを感じさせずテンポも良いのであっという間。これだけの話を描くには十分必要な時間だったのかなと。
後半の描写がとにかく強烈な映画でしたが、前半もメチャクチャ面白いです。信仰に目覚めるトラウマ体験、暴力を振るうPTSDの父、軍隊への入隊、仲間からの激しいシゴキ、軍法会議と父の愛などなど戦地に行き着くまでの過程がじっくり描きこまれています。ここが超しっかりしているからこそ後半の地獄絵図が際立ってくるという構造。
個人的に共感したのはデズモンドが兵士に志願する理由で、「みんな戦ってるから」と単純なところがすごく良かったです。前半から「普通じゃない部分」をガンガン現してくる主人公ですが、同時にしっかり共感させるてくれる言動なども存在します。そのために狂気を狂気と思えなくなってくる瞬間があり、傍から見れば「超やばい奴」には違いないんですがそういう人間になる過程を知ってしまっているため擁護したくなる、そんな感じ(うまく言えない)。
日本兵に関してはけっこうステレオタイプな描き方でした。けど、あくまでもアメリカ人目線の物語なのでまあ予想の範囲内だったかなーと思います。
切腹は岡本喜八の『沖縄決戦』でも描かれていましたが、直後の首チョンパはさすがメルギブ!!という感じ。同時に日本兵が白旗振って降参…からの姑息なダマシ討ち!ってのも描いているため、ここは観た人の賛否が大きそう…。ただ、異教徒の描き方としては簡潔的でわかりやすいし、個人的にはメッチャ面白かったですよ。刀を振り下ろす瞬間はほとんどご褒美みたいな(笑)。
テリーサ・パーマーは登場するごとに衣裳チェンジしてるので、コスプレ感が最高でした~。金髪・青い瞳・白衣の天使というファーストショットも完璧。主人公が彼女に惹かれたのは「人を救う側の人間」ってのも理由としてあったと思います。画的に魅せる演出もすごく良かった。
伏線なども含めてかなり練られた脚本だと思いました。「銃に触れない主人公」なんですが、実際は終盤で銃を手にする瞬間があり、人を殺す道具で人を救うという展開が気持ち良かった。銃との距離感・使い方・触れさせ方も無駄がなく上手い。
それと、鬼教官(ってほどでもないか)がヴィンス・ヴォーンというのも嬉しかったですねー。役者はみんな大好きでしたよ。もちろんヒューゴ・ウィーヴィングも素晴らしかったし!
ということで平凡な感想しか出てきませんが、信念を貫くことの素晴らしさをおしえてくれる良い戦争映画だったと思います。それと、単純にむちゃくちゃ面白かった。
結局何が一番良かったのか考えると「みんなにバカにされ臆病者扱いされてたアイツが戦地で英雄に!」というよくある超絶胸アツ展開かも、個人的には。細かい部分もいろいろ好きだったんだけど、一番心に響いたのはそこかなと。
デズモンドの信念が最も表れていたと思うのは、洞窟で瀕死の日本兵と遭遇するシーンでした。敵も味方も関係なく「命を救いたい」という気持ちが見ていてすごく伝わってくる、聖人扱いされるのも納得です。自分はこんな人間には決してなれないけど素直にすごいなあと思うし、拍手喝采したい気分でした。それと、やっぱり「武器を持たずに沖縄戦に巻きこまれていく男の実話」ってのが強烈で、とにかくもう感動した。文句なし。なので100点。
今後も「俺はこう思うんだよ!」って感じのメルギブ映画を撮り続けてほしいなーと思います。ありがとうございました!
ラストは実際のデズモンド・ドスが登場。実話ベースの映画にありがちな映像ですが、やっぱりご本人が登場すると胸が熱くなる…。2004年に制作されたドキュメンタリー『The Conscientious Objector』もその後で見たのですが、こっちもヤバかったッ!
尊い。
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